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CASE1.「消えた梟の銅像─①」

日常系ミステリーの作品です!



※1コルナ=日本円換算で7円(四捨五入あり)


※ウィービング

 髪の束の一部にカラーを入れること


※パフスリーブ

 肩や袖口を膨らませた服のこと


※キュロットパンツ

 スカートのように裾(すそ)が広がったシルエットのパンツのこと


※パラパラブリーチ

 表面の髪のみをブリーチして明るくし、内側を暗く染めるカラーのこと


※ポーラーハット

頭頂部が丸く、つばの周囲が上に反っているフェルト製の生地の帽子。



キャラクターのイメージイラストです!


[コレレス]

挿絵(By みてみん)


[アジュ]

挿絵(By みてみん)




【10月7日 20:46】



「こ……これさえあれば…!!」



「ああ!

 オレたちは大金を稼げるぞ…ヘヘヘッ!!」



……ブロロロロロ〜〜


 暗闇の中、車に乗った2人組の男達は、勢いよくアクセルを踏み込みながら走らせていった。



➖───────────────────────



【10月7日 10:00

 ──銅像の持ち主 カンタロの屋敷】



 真っ赤な屋根に、白い壁をした二階建ての建物は、横幅が広く片側だけでも4部屋はある屋敷だった。

 その屋敷にやって来ていたのは、玄関前に止まるオレンジ色の車だった。


 梱包された銅像を2人の従業員が荷台に積み込む。



「では!

 責任もって、コチラの銅像を運ばせて頂きます!!」



 運送会社『トランスポルテ』の従業員が答える。



「絶対に!!

 割ったりはしないように

 くれぐれも慎重に運んでくれたまえ!」


銅像の持ち主[カンタロ(57)]

      [性別:男]



 ぽっちゃりとした体型に、パツパツの灰色のスーツを着ている白髪混じりの男性が答える。

 その隣には彼の執事がそばに立っており、2人で車を見送っていた。



「それでは私は

 この後のお昼の準備でも致しましょうか。」


「ああ、頼んだぞ、ヨルドモ。」


「かしこまりました。

 ご主人様。」


 ヨルドモと呼ばれた男性の執事とカンタロは、屋敷の中へと入っていった。



─────────────────────────



【10月7日 10:36

 ───美術館 館内】



「おお〜コレが!!」

「カンタロさんからの銅像か〜〜!!」


美術館 館長[ミージオ(78)]

      [性別:男]



 美術館に運ばれたのは、高さ1メートルほどの梟(フクロウ)の銅像が台座の上に飾られてあった。

 銅色をしたザラザラとした質感をしていたが、その見た目はまるで本物のように精巧な出来栄えだった。



「『枝木に止まる梟《ブーオ》の銅像《エスタトゥア》』」


「……美しい!!

 細部まできめ細やかな羽の造形……

 爪やクチバシの光沢感も素晴らしいじゃないか!」


「今にも動き出しそうな躍動感だな」



「フハハ!

 明日のお披露目が楽しみで仕方ないぞ!!」


 銅像を眺めるミージオは、ご機嫌そうに口角を上げていた。



────────────────────────➖



【10月8日 6:43──

 大都市『ヨージャ』 街中にある街路】



 赤い屋根に、白い壁をした家々が建ち並ぶ街路の一角に、二階建ての探偵事務所があった。

 その白い建物の一階は事務所スペースで、二階が生活スペースとなっていた。


 静かな事務所内に、テレビからニュースキャスターの声が響く。



『──上院議員のポペ・ヒリング氏が

 裏金問題の告発を受けて辞任されたとのことです。』

『それに伴い。

 農業施設への被害はかなりなものと思われるでしょう。

 また、この件については──』



『──続いてのニュースです。

 10月4日───組織『ガサナ』の組員が、───で目撃されたと情報が入りました。

 また、リーダーの名前が判明。』


『──リーダーの名前は

 『サシオン』と名乗っていると思われます───』

 


『コポコポコポ…。』と、ティーカップに紅茶をそそぐ髪の短い女性は、黒い後ろ髪の下側にピンクのインナーカラーが入っており、一部だけ白色のウィービングが入れられてあった。※



「いい香りだな」

「ルイボスティーか?」


 室内にある黒い大きなソファに座る青年が尋ねる。

 少し沈黙したのち、身長180センチはありそうな女性が、2人分の紅茶を入れ終えると答えた。



「………はい。ザダルバーグ産の茶葉を使ってます」


                       ※

 目元が隠れている髪の毛は、黒と白のパラパラブリーチ模様になっており、左目には青みが強い紺色の眼帯をした青年が呟いた。



「どうりで」

「あそこの茶葉はいいからな。」



 白色の長袖シャツを着て、その上に黒い袖なしジャケット、黒の短パンと黒茶のロングブーツを履いている少年は続けて呟く。



「今日は平和(ヒマ)だといいな〜」


    ※

 緑色のパフスリーブに、茶色のベスト。

 内側には白いブラウスを着用し、膝丈までの灰色のキュロットパンツを履いて、先の尖った黒色の揚げ編みブーツを履いている女性が答えた。



「………。」


「そんなこと言って

 どうせ昼寝でもするんでしょう?」



「フンッ。最近立て続けに仕事して疲れてるだけだ」

「たまの休憩くらいいいだろ〜」


「なぁ〜ミーチェ〜」

「よしよ〜し」


『ミャア〜ォ』


 ソファに座りながら、青年は灰色の長い毛並みに、黄色い目をした足の短い猫を撫でていた。



「ミーチェは相変わらず

 キレイな瞳をしてるな〜!」


「コレレス様も同じ黄色の瞳ではありませんか」


 一階のキッチンスペースから、黒い瞳で青年と黒猫を見つめる女性。


『カンッ……カチッ』と、コンロに火をつけた女性はフライパンの表面を温め始めた。



「オレはもっと特別なんだよ」


「知ってんだろ?アジュ」


私立探偵『Loto ~ロト~』 

  探偵[コレレス(18)]

    [性別:男]



「………。ええ」

「ボクを救って下さったのはアナタですから。」


私立探偵『Loto ~ロト~』

  助手[アジュ・フロルダンテ(28)]

    [性別:女]



『ジュウゥゥ〜……』と、事務所内に響き渡る音は、青年の食欲を掻き立てていた。



「んん〜〜いい匂いだなぁ〜!」

「"ヴァイスブルスト"のソーセージか?」


「よく分かりましたね?」


「いつもは、"プルゼニ"や"チョリソー"だからな。」

「スパイシーな香りじゃなくて

 香草の香りがつぇんだよ」



「なるほど……。 ・・・・・・

 いつもそのくらい推理が出来ると

 ボクの手間もかからなくてよろしいのですけどね」



 ソファの背もたれに肘《ひじ》をつけながら、後ろを『ジ──ッ』と眺め反論するコレレス。



「おい、オレがまるで

 役に立ってねぇみたいな言い方やめろよ」


「これでも、一端《いっぱし》の探偵だっつーの」


 香ばしく音を立てるソーセージを、フォークで皿によそおいながらアジュは答えた。



「まあ、あの力はアナタにしかありませんからね」

「ボクは推理しかできません」



「分かってるならいちいち言うな」

「せっかくの朝食《ブレックファースト》も味が落ちちまうだろ?」



(作ってるのはボクだし。

 味自体は落ちませんけどね。)


『……コトッ。』と、ゆっくりとソファの前にあるガラスのテーブルの上に皿を並べるアジュ。

 そして、グラスをキッチンのテーブルに置き、『マルティン・ヴァイチュネル』の『セディー・ピノ』のワインを注ぎ込んだ。



「……どうぞ」


「……セディー・ピノか。

 悪く無いな。」


「オレンジの爽やかな味わいとワインの辛さ。

 やっぱり、ソーセージにはワインがピッタリだな!」



「ボクはビール派です」



『プツッ…』っとソーセージにコレレスの持つフォークが刺さると、中からは『ジュワァッ』と光沢のある脂が溢れ出していた。


「まぁ、ビールも悪くはねぇけどな〜〜ぁあんむっ。」


 そのまま口に手を運び、表面がカリカリになっているソーセージに噛みついた。



『…パリッ!!』と弾ける音と共に、『ジュワッ…ァァ〜〜……』と熱々の肉汁が口内へと広がっていく。



「……!」

「あちちっ……肉汁が凄いな」



「…ポクッ。

 ………美味しい。」


 アジュも座って食べ始めたその時──

 事務所の扉が勢いよく開《ひら》いた。



─────────────────────────



【7:09〜 探偵事務所 営業中】



「ココがウワサの……?」


 低い声が聞こえた方向を、ソーセージを頬張りながら振り向くコレレス。



「……ボェ(ゲェ)。

 ギャク(客)かよ〜」


「…ゴクンッ。

 今日くらいは休ましてくれよな……ハァ。」


 すると、アジュがゆっくりと立ち上がると、扉の近くまで歩き始めた。



「………。」

「そう言わないで下さい。

 こんな贅沢できるのも

 滅多にウチに来ないお客様が

 連日して来られてるからですよ?」


「これは"奇跡"です。

 おとなしく諦めて下さい」


 アジュがコレレスに諭《さと》すように言うと、コレレスはテーブルの上にあるワインとソーセージを見つめた後、観念したように呟いた。



「……ハァ……分かったよ。」



「ご依頼なら、コチラへどうぞ。」


 すかさずアジュが、ご老人を反対のソファまで案内していた。



─────────────────────────

─────────────────────────



【7:42】



「んで、よーは……」

「盗まれた銅像を探し出して欲しいってことだろ?」


 依頼人の話を聞きながらも、コレレスとアジュはのんびりと朝食をとっていた。

 


(このガキンチョ……

 朝っぱらからワイン飲んで…。

 今は営業中じゃないのか?)


(それに、ワシの話もなんだか

 適当に聞いとる感じもするしのぉ……)



「あ……ああ。

 そうじゃ。」


依頼人 銅像の持ち主[カンタロ(57)]

          [性別:男]



「美術館に納品予定じゃった、ワシの銅像。

 『枝木に止まる梟《ブーオ》の銅像《エスタトゥア》』が

 納品後の昨晩の内に

 何者かに盗まれてしまったんじゃ。」


「昨日の夜に警察から連絡がきてのぉ。」

「昨晩は、警察に事情聴取を受けてから

 ここに来たとうわけじゃい。」


「まあ、ワシは銅像の持ち主じゃし。

 その夜は自宅におったから

 その日の事を話してすぐに帰れたけどのぅ。」



「それで、少し前に

 この辺りを通った時にあるウワサを聞いての。」

「ここら辺に探偵事務所があると聞いて

 探しておったのじゃ。」



「ふ──ん。そうなんだ。

 ──で、いくら出せんの?」


 依頼人のカンタロに手のひらを差し出すコレレス。


 アジュは隣でワインを嗜《たしな》んでいた。

 コレレスは無言でカンタロを見つめると、手首を"クイックイ"。とさらに動かしていた。



(こんな奴が探偵とは

 本当に大丈夫なんかのぉ……。)


      ※

「……前金は7,143コルナだ。」

「報酬金は、28,571コルナだ。」



「……気前がいいな。

 いいぜ。乗った!」


「その依頼、受けてやる!」



─────────────────────────



「じゃあもう一度確認するぞ?」


「昨晩、アンタが納品依頼を受けた

 『枝木に止まる梟(ブーオ)の銅像(エスタトゥア)』

 コイツァ、本物なら142,857コルナは

 余裕で超える代物だろう」


「そんで、納品予定の時間は10月7日の10時から11時の間──

 アンタの家から車で運搬されたのが10時だったな?」



「ああ」


「アンタの家から美術館までの距離は?

 あ、大体でいいぞ」



「そうじゃなぁ……混み合い無しで考えると……

 車で30分くらいじゃな」



「信号は多いか?」


「まぁ、そこそこあるほうじゃろう」



「んで、納品が10時30分頃か。

 ……まあ、普通だな。

 信号とかに引っかかったり

 同じ速度で走るわけじゃねぇからな。」


「で、その晩……何者かによって美術館に侵入され

 銅像が奪われた。と」



「そうじゃ。」


「……」


 指を口元に当てて、何かを考えるコレレス。



「今もまだ警察が調べているが

 まだ、犯人の足取りを掴めておらんのじゃ。」



『……ジ──』と、コレレスは依頼人カンタロの胸元を見つめると、影のようなモヤを見つめていた。



「……。」

「美術館の場所は"オミュジオ"か?」


「ああ、そうじゃよ。」



「警察は運送会社も調べてるんだよな?」


「ああ。」



『……チラッ』と、横目で壁にかかっている時計を見るコレレス。

 時計の長針は真上を指していた。



─────────────────────────



【8:00〜 探偵事務所 営業終了】



「アジュ」


 コレレスは時計の針を見た後に、助手のアジュに声をかけた。



「………。」


「お客様。

 本日はもう営業終了となります。」


「後はコチラでやっておきますので

 お帰り下さい。」

 

 アジュは淡々と依頼人であるカンタロに伝える。



「な──!?」

「なんじゃと…?

 まだ話をしただけじゃぞ!!」



「……ジィさん。

 後は任せろって言ったんだよ」

「ウチは一時間しか事務所は開けてねぇ」


「追加で話したいことがあるなら

 明日また来きてくれ」



「……なっ!?」


「依頼はきちんとこなしてやるから

 おとなしく家で待ってろ」


「アジュ」


「はい」

「コチラへどうぞ。」


 アジュはそそくさとカンタロを出口に案内した。



(舐めおって、このクソガキめ。)


「……失敗した時は

 分かってるんだろうな…?」



「……ハッ、それはないな」


 コレレスは後ろを振り返らずに、"シッシ"と手を上下に振り座っていた。

 そして、『ガチャン。』と激しく扉の音が鳴ると、依頼人はその場を後にしたのだった。




【10月8日 8:10──

 私立探偵事務所『Loto ~ロト~』】



『…カチャ』と、フォークをお皿の上に置くコレレスは、残っていたワインを飲もうとグラスを持った。

 静かに口をグラスにつけて飲み始める。



「…ンクッ…ンクッ……」


 そして、『コトッ。』っと、ワイングラスをテーブルに置いていた。



「はぁ〜うまかったな

 ハラも満たされて、金も入った。」


「さてと、仕事しますか」



 コレレスはソファから立ち上がり、事務所の机の横に置いてあるコートハンガーの元へ歩み寄ると、掛けてある茶色のケープを身につけていた。



「アジュ、オミュジオに行くぞ

 支度しろ」



「はい」


            ※

 アジュはレディース用のボーラーハットを身につけると、小さな赤色の肩掛けポーチを背負い、2人は事務所を後にした。



─────────────────────────



【9:24 美術館『オミュジオ』館内】




「アンタ達がカンタロさんが頼んだ探偵か?」


美術館 館長[ミージオ(78)]

      [性別:男]



「ああ」

「コレレスだ」


「………。」


 コレレスとは対象的に、アジュは一言も話さない。そんな姿を慣れたように、呆れながら説明をするコレレス。



「……ハァ…。」

「こっちは助手のアジュだ」



「ワシはミージオじゃ。よろしく頼む」



「ああ」

「さっそくだが、この美術館には監視カメラはあるのか?」



「ああ、あるぞ」

「裏手の警備室から見れる」



「見て良いか?」


「ああ、構わんぞ」



それは、一瞬の間だったが、『……ジ───』とコレレスはミージオの胸元を確認していた。



「………。」

「そうか」


「とりあえず連れてってくれ」



─────────────────────────



[監視カメラ 10月7日 20:34]



「この黒い服を着た作業員の二人が犯人か?」


「そうだ」


「……」

「おかしいな」


「何がじゃ?」


「なんで犯人の顔がどこにも映っていないんだ?」

「これだけカメラがあるんだ。おかしいだろう?」


「──!」

「確かに!

 どうしてじゃ!?」



「カメラの角度は固定か?」


「あ、ああ。カメラの角度はこれだけじゃよ。」



「そうか。」


 口元に指を当てながら悩むコレレスの傍《そば》で、アジュは静かに見つめていた。



「………。」



「事件当日に来た業者は分かるか?」



「ああ、それならコチラを」


 コレレスの質問に、その場にいた警備員が口を挟みながら名簿を手渡す。



「コレは?」



「裏口から出入りする入館証です」

「入館時と退館時に記入して頂いてるんですよ」



 『パシッ』と名簿を手に取り、コレレスとアジュは書かれている記録を閲覧した。



「午前10時35分……運送会社の従業員か?

 時間帯的に依頼人の証言と一致してるな」



「ええ、確かにその時間に

 運送会社『トランスポルテ』の従業員の方達が

 銅像を運びに来られました」


「通路の入り口にもカメラがありますので

 まちがいないかと」



「なるほど〜」



「映像にも残ってあります」


「また、入館証も必要となり

 ID認証によるパス認証が必要なんです」

「あ、そこの通路にある機械ですね。

 そして、入館証の顔も一致しておりました」



「………」

(警備システムとしてはしっかりしてるか)



「彼らはこの後どうしたんだ?」


 コレレスは、警備員の隣にいるミージオに尋ねる。



「指定の台座に銅像を置いた後

 そうそうに帰って行ったわい」


「車が来る少し前には

 搬入口にワシもおったからな」



「そうか」

「侵入経路は正面玄関の扉だったよな?」


 再び警備員へと視線を向けるコレレス。



「ええ、扉の鍵が開けられていたんです」



「鍵は警備室の鍵置き場に置いてあります。

 その鍵置き場にも鍵をかけており

 鍵は私が巡回中に持ち歩いていたので

 盗まれたりもしていません……」


 

「アジュ」



「……。」


 コレレスが助手のアジュの方を見つめると、『コクッ』と頷いた。

 それを見たコレレスは、警備員とミージオに礼を伝えた。



「ありがとう、参考になったよ」

「失礼する」


 コレレスとアジュが美術館を帰ろうとする様子を見ながら、ミージオと警備員はお互い見つめ合っていた。


「も、もういいのか?」

「何か分かったのか〜〜?」


「ど、どうなんでしょう…。」



─────────────────────────



【10:39 運送会社『トランスポルテ』受付】



「あら?どちら様でしょうか?」


 受付に座るショートカットの女性が声をかけてきた。



「……。」

「こういう者です。」


 『スッ。』と名刺を見せるアジュ。



「探偵事務所……

 もしかして、例の件ですか?」



「例の件?」


 コレレスが質問すると、受付の女性が答えた。



「あっ、いえ、先日警察の方が来られまして

 「当社の従業員について事情を聞かせて欲しい。」と、来られましたから。」



「ああ、その件でやって来た

 おたくの従業員に話を聞きたいんだがいいか?」



「少々お待ち下さいね。」


 受付の女性が席を外した後(のち)、しばらくするとオレンジ色の帽子と作業服を着た2人の従業員が現れた。



「あの……俺たちに何か…?」


運送会社『トランスポルテ』従業員[ポルテ(28)]

                [性別:男]



 先に黒髪短髪のガタイが良い青年が喋る。



「け、警察にならもう

 昨日お話しましたけど?」


運送会社『トランスポルテ』従業員[トラン(37)]

                [性別:男]



 後から白髪混じりの目が細い痩せ型の男性が喋る。



「あ、いえ

 私は探偵として、依頼人のカンタロさんに頼まれましてね」


「ぜひ昨日お話しされたことを聞かせていただきたいんです

 お手数をかけますが、よろしいでしょうか?」


 普段の様子からは想像できないような丁寧な対応で、コレレスは頼み込んでいた。



「ま、まあ…、それなら…」


「……ええ。」



「ありがとうございます。

 さっそくですが──」


「昨日《さくじつ》の運送時は

 どこかに停車したりはしませんでしたか?」



「………!」

「もしかして、俺たちを疑ってるんですか!?」


 コレレスの質問に、ポルテが怒鳴り出す。



「あ、いえ。

 形式的なモノなのでお構いなく。」


「情報を得るのが私の仕事ですので

 皆さんにはお聞きしてるんですよ。

 すみませんね。ハハ。」



「………あ、そうですか」

「こちらこそ……取り乱してしまってすみません。」



「いえ、よくあることですので

 それで、昨日は?」



「ええっと……

 どこにも止まったりはしてません。」

「あ、もちろん

 信号とかで止まることはあっても

 どこかに寄り道とかはしてないです」



 『チラッ』っと隣のトランに視線を送るコレレス。



「え、ええ。

 確かにどこにも立ち寄らずに

 真っ直ぐ美術館へと向かいましたよ」


「私達は、カンタロさんの邸宅から銅像を梱包をして

 そのまま美術館へと届けました。」



「その時、邸宅には誰がいたか覚えてますか?」



「確か……カンタロさんに、執事の方

 それから、給仕の方がいらっしゃいましたね。」



「他にはいませんでした?」


「はい、私達が梱包作業してから

 車に積み込むまでは他に見ていません」



「そうですか。」


『ジ──……』とコレレスがトランを見つめると、霧のようなモヤがかかっていた。



「ありがとうございます。」

「みなみになんですけど〜

 運搬が終わった後はそれぞれどうされました?」



「会社に戻った後

 もう一件の運搬へと行って

 その後は会社に戻りました」


「戻ってからは事務作業をしていたので

 他の従業員に聞いてもらえれば

 答えてくれると思いますよ」



 今度は、ポルテを見つめるコレレス。



「俺達は二人で仕事のパートナーとして行動してるんですよ……

 なので、俺も同じです」



『ジ──……』と見つめるポルテにも影が出来ていた。



「分かりました

 夜も出かけたりはしてないですよね?」



「ええ」

「昨日の夜は、会社の飲み会で俺達も参加してます

 刑事さんにもお話して

 お店の監視カメラで確認済みです。」



「そうですか。」


「アジュ」


 コレレスは頷くと、アジュの方を見つめる。

 それに応えるようにアジュは頷いていた。



「分かりました

 聞きたいことはもうありません」

「お時間をいただき、ありがとうございました。」


「では、失礼します」



「………。」


 アジュは深々とお礼をした後、2人は『トランスポルテ』を後にした。



「さて、次は依頼人の家に行こうか」


「はい。」



─────────────────────────



【11:23 依頼人[カンタロ]の屋敷】



『カンカンカンッ』と、屋敷につけられてある金具を鳴らすコレレス。

 しばらくしても反応がなかったが、タイミング良く庭で野菜を取っていた給仕が帰ってきて声をかけられていた。



「えっと〜、どちら様でしょうか?」


屋敷の給仕[ウェルター(42)]

     [性別:女性]



「アジュ」


「はい。

 こちらを。」


 アジュの手から手渡された名刺を見た給仕のウェルターは、すぐに状況を理解していた。



「ああ〜!

 旦那様がご依頼した探偵の方でしたか!」


「どうぞ中へお入り下さい。」


 手袋をしたウェルターは扉を開けると、笑顔で2人を招き入れた。



─────────────────────────



【11:27──

 依頼人[カンタロ]の屋敷 1階 客間】



「なんだ、朝で終了したんじゃなかったのか?」


 コレレスとアジュがテーブルの席に着くと、ムスッとした様子でカンタロが話しかけてきた。



「事務所はな〜、調査は別だ」


「あの後、『オミュジオ』と

 『トランスポルテ』にも寄ったよ」

「それで、後はアンタのとこだけだからな」


 コレレスは、給仕が入れてくれた紅茶が入ったカップへと手を伸ばす。



「……クンクンッ…。

 ヘェ〜…『セーデルブレンド』か。」


「……ズズゥ…。ゴクッ。」



「うん。

 出来る給仕だな。雑味も無い……

 素晴らしい腕前だ。」



「ハンッ!

 ワインだけではなく

 ガキのくせによく知っておる。」



「……紅茶もイケる口でね。」

 (気づいてたのか、流石だな。)



「それで、わざわざウチまで来て

 何を聞きたいんだ?」


「ああ、事件当日に──

 この家にいた人物は誰か知りたい」


「運搬される時間ではなく、その日にいた人物だ。」



 コレレスの問いに、カンタロは思い出すように答える。



「……ワシと…執事のヨルドモ

 それから……給仕のウェルター

 あとは、メイドが数人じゃないか?」


「詳しくは、ヨルドモが知っておる。」



「その執事は、どこに?」



「……手紙を出してもらうように頼んどる。

 もうしばらくしたら帰ってくるじゃろう。」



「そうか。

 いま名が挙がった人達に

 話を聞いて回って大丈夫か?」



「フンッ。構わん。

 そこのウェルターを連れて行け。」


「ヤツもこの家やメイドにも詳しい

 ウェルター!案内は任せる。」



「か、かしこまりました!旦那様。」

「皆様。では、コチラに」


 そうしてコレレスとアジュは、給仕のウェルターについて行った。



─────────────────────────



【AM11:41──

 依頼人[カンタロ]の屋敷 2階ウェルターの部屋】



「コチラがワタクシの部屋になります。」


 部屋の中には、薄茶色の木製の化粧机と高さのある丸い小さなテーブルが置いてあった。

 そして、シンプルなベッドに、薄茶色のクローゼットがあり、大きな物置棚が置かれてあった。



「シンプルだな」


「……。」

「コレレス様。」


「あまり女性のお部屋について

 そのような感想はよくありませんよ。」


 アジュが耳打ちをするようにコレレスへ伝えた。



「──なッ!

 ……すまん。」


「謝るならウェルターさんにお伝え下さい。」



「うふふ。大丈夫ですよ、コレレスさん。」

「自宅の方もこんな感じですので

 慣れております。」


 微笑むウェルターに申し訳なさそうにしていたコレレスは、部屋の中にある化粧机に視線を向ける。

 その上に置いてあるゴーグルのようなメガネを見つけると、コレレスは手に取ったあと少しだけ無言のもま見つめていた。


「………。」

(縁に白い汚れが付いてるな)


「このメガネは?」


 コレレスはウェルターに問いかける。

 一瞬『ピクッ』とウェルターの体が反応すると、彼女は答えた。



「これは、厨房でタマネギなどのネギ類を切るときに使ってます!

 目に染みないように付けてるんですよ!」



「ヘェ〜。」


『……ジ──……』と、ウェルターの胸元を確認するコレレス。

 そのままメガネを元の場所に戻すと、引き続き部屋の周囲を確認していた。



(ボウルと泡立て器……棚にはなんだ?

 白い繊維《せんい》質なような……春雨か?)

(まあ、料理関係の物しかなさそうか)



「次へ行きましょうか。

 案内してもらえますか?」



「……は、はい。

 次はメイドの部屋を案内いたしますね。」



─────────────────────────



【11:56──

 依頼人[カンタロ]の屋敷 2階エンプレアの部屋】



『コンコンッ──。』と、ノックの音が部屋に響き渡る中、ウェルターが声をかけていた。

 


「エンプレア〜ワタシよ。

 入っても良いかしら?」


「探偵の方がお見えになってて

 話を聞きたいそうなの。」



「はーい!

 大丈夫ですよー!」


 幼くて可愛らしい声と共に、部屋の扉が開く。

 


「どうぞどうぞー!

 あ!こんにちはー!

 ワタシはエンプレアって言いま〜す!」


「事件のことですよね?

 警察の人にも聞かれましたけど……

 探偵の人って同じことを聞くもんなんですかー?」


屋敷のメイド[エンプレア(18)]

      [性別:女性]



「こらっ!旦那様のご依頼人の方に対して

 そんなお口を聞いてはいけません!!」



「うひぃ〜ごめんなさ〜い。」


 ウェルターに叱責されたエンプレアは、頭に手を押さえながらしょぼくれていた。


 彼女の部屋は、年相応といった感じで、クマのぬいぐるみが多く、小さい物から大きな物まで置かれてあった。

 そして、ピンク色の雑貨や家具で飾られた派手な部屋に、コレレスは『"ソワソワ"』していた。



(うぅぅ〜〜……ダメだ。

 この空間は気持ちワリィなぁ……)


(どこも派手すぎて、生理的にうけつけねぇ……。

 早めに済まして早く他の部屋に行きたいぜ。)


「……えーと…、事件当日もいらしたんですよね?」

「運搬までの間って何されてました?」



「はい!いましたよー!

 えっと〜……確か〜」


「あぁ〜〜!

 朝はウェルターさんとほかのメイドの子達と一緒に

 朝ごはんの準備をしてました〜!」


「それが終わってからは〜

 一階のお部屋のお掃除をしてましたね!」



「時間は覚えてたりしないか?」


「ん〜とぉ〜……

 確か、7時から8時まで朝食作りのあとだから〜」

「つまり〜……」


「ご主人様のお食事が済んだのが

 8時20分頃でしたね。」


 計算が脳内でできないアンプレアの代わりに、ウェルターが答える。



「そして、10時まではワタシは庭で野菜を収穫し

 倉庫や冷蔵庫に保管などの作業をしておりました。」

「その間、メイド達は三名で

 各フロアの清掃に取り掛かかっております。」


「おそらく。

 終わったのもお昼前くらいだったのではないかと。」



「なるほどねぇ……」


 コレレスは2人の胸元を見つめると、再び考え事をしていた。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


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[今回の一言♩]

書いたことのないジャンルなのでめちゃくちゃ難しいけど、考えるのは楽しいし、書いてて勉強になることばかりですね!


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