第80話 見知らぬ男
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ロイドの隣に立つ男は、恰幅が良かった。
腹は少し出ている。
立派な口ひげ。
年は五十前後だろうか。
だが。
目だけは商人だった。
値札より先に人を見る。
そんな目だ。
「戻ったぞ」
ロイドが笑う。
ダンと挨拶を終え。
ロイドが男を連れてくる。
「とんぼ返りだな」
俺は歩み寄った。
「ああ、いい知らせがある」
ロイドは隣の男を親指で示した。
「紹介しよう」
「ラングA商会現社長」
「イサクだ」
男は一歩前へ出ると。
いきなり俺の両手を掴んだ。
「ありがとう!」
領主館前が静まり返る。
「……は?」
「助かった!」
「本当に助かった!」
俺はロイドを見る。
ロイドは肩をすくめた。
「落ち着け」
「無理だ!」
イサクは叫ぶ。
「十年だぞ!」
「十年間!」
「あの馬鹿げた長期契約で利益は吸われ!」
「値段は決められ!」
「文句も言えん!」
「毎日薬草だ!」
ミリアが小声で呟く。
「よく喋る人ですね」
「まだ序の口だ」
ロイドがため息をつく。
「聞こえたぞ!」
イサクが振り返る。
「私は昔から元気なんだ!」
「元気というより騒がしいです」
「そうとも言う!」
「認めるんですか!」
住民たちから笑い声が漏れる。
イサクは胸を張った。
「紋章の男が捕まったとロイドから聞いた」
「うちの番頭なんか泣いてたぞ!」
「これで解放される」
「本当は俺も捕まるところ見たかったよ」
「あの威張った顔がどうなっいたか」
ロイドはお手上げだという表情。
本当によく喋る男だ。
「儲ければ取り上げられ!」
「損すれば自己責任!」
「商売じゃない!」
そして。
イサクは急に真顔になった。
「そしてバルドを立ち直らせてくれた」
「ロイドから全て聞いた」
「だから来た」
イサクもカルテルに関わっていた仲間だ。
「俺たちは助けられた」
「今度は」
「俺たちがお前を」
「そしてバルドを助ける番だ」
領主館前が静まり返る。
ロイドが一歩前へ出る。
「今度はいくら足りないんだ」
「レオン」
俺は見透かされているのか。
「顔見りゃわかるよ」
心まで読まれているのか。
「だけど」
「また秘策があるんだろ」
俺は真剣な面持ちでロイドに目を向ける。
「やっぱりな」
「その顔は自信ありか」
俺は住民に感謝をつたえた。
そしてひとまずロイド達と領主館に入った。
部屋ではイサクとロイド。
こちらは、ミリアとダレン。
俺はその秘策を話した。
領主館のリースバックの話。
領有の有料橋のコンセッション方式の話。
「面白そうじゃないか!」
イサクは興奮気味に話す。
ミリアが首をかしげる。
「普通は面白そうで数百金貨は出しませんよ」
「普通の商人じゃないからな!」
「自慢ですか?」
「もちろん!」
「胸張って言うことですか!」
再び笑いが起こる。
ロイドは橋の図面を広げた。
「さて」
「笑い話はここまでだ」
イサクの表情も変わる。
商人の顔だった。
図面を見つめる。
橋。
街道。
通行量。
何も言わず。
一本一本、指でなぞる。
やがて。
口元がゆっくり緩んだ。
「レオン」
「この橋」
「面白い商売になるぞ」
俺も笑った。
「そう思ったか」
「ああ」
イサクは頷く。
「そのコンセッション方式という商売を」
「聞かせてもらおう」
(第81話 橋の値段)
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