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「不正を告発したら辺境に追放された。三年後、王国は私に頭を下げることになる  作者: 幸善さち


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8/18

第8話 最初の資産

翌朝。

 俺は広場に積み上げられたゴブリンの死体を

見ていた。

 昨日の戦果だ。

 ゴブリン。

 そしてゴブリンリーダー。

 広場の端には山のように積まれている。

「レオン様」

 グランが近付いてきた。

「処分はどういたしますか」

「処分?」

「はい」

「なぜ処分する」

 グランが固まった。

 ミリアも固まった。

「え?」

「ゴブリンですよ?」

「だからだ」

 俺は死体の山を見た。

「捨てるな」

 広場が静まり返った。

「捨てるな……ですか?」

 グランが聞き返す。

「ああ」

「ですが魔物の死体ですよ」

「だから何だ」

「腐ります」

「なら腐る前に売る」

 今度は全員が固まった。

 住民たちも顔を見合わせている。

 どうやら誰も考えたことがなかったらしい。


「グラン」

「はい」

「この国に冒険者はいるか」

「おります」

「魔物を討伐したら何を持ち帰る」

「討伐証明として耳を持ち帰ります」

 俺は頷いた。

 予想通りだ。

「耳はいくらになる」

「ゴブリンなら銅貨三枚ほどです」

 ミリアが顔をしかめる。

「それだけですか?」

「ああ」

 俺は頷いた。

「だが重要なのは金額じゃない」

「え?」

「売上を作ることだ」

 俺は答えた。

 誰も言葉を返せなかった。

 彼らにとって魔物は災害だ。

 だが俺には違う。

 数字で見れば商品だ。

「全員集まれ」

 住民たちが広場へ集まる。

 俺はゴブリンの山を指差した。

「金がないと言ったな」

 誰も反論しない。

 事実だからだ。

「だが金は落ちていた」

 全員がゴブリンを見る。

「耳を切れ」

 広場が静まり返った。

「全部だ」

「全部ですか?」

 ミリアが青い顔をした。

「全部だ」

「私もですか」

「もちろんだ」

「嫌です」

「借金十二万枚だぞ」

「ぐっ……」

 反論できなくなった。

 借金は便利な言葉らしい。

「グラン」

「はい」

「この近くで一番大きな市場はどこだ」

「南へ半日ほどの港町ラングです」

「今日中に間に合うか」

「急げば」

「よし」

 俺は頷いた。

「今日売る」

「今日ですか?」

「今日だ」

「ですが馬車もありません」

「借りる」

「金がありません」

「交渉する」

「交渉材料は?」

 俺はゴブリンの山を指差した。

「担保だ」

 ミリアが頭を抱えた。

「また始まった……」

 だが俺は本気だった。

 経営とは資源を金に変える作業だ。

 そして。

 この領地には資源がある。

 誰も資源だと思っていないだけで。

 昼過ぎ。

 住民総出で集めた耳は山になった。

 さらに。

 ゴブリンリーダーの巨大な牙。

 厚い皮。

 鋭い爪。

「レオン様」

 グランが牙を見ながら言う。

「これは高く売れるかもしれません」

「いくらだ?」

「分かりません」

「いい答えだ」

「え?」

「分からないなら市場が決める」

 商売の基本だ。

 値段は原価ではない。

 需要で決まる。

 俺は牙を手に取った。

 ずっしり重い。

 だが妙な確信があった。

 これは売れる。

 そして。

 この牙より価値があるものも見つけた。

 北の海。

 凍らない入り江。

 手つかずの海岸線。

 なぜ誰も使っていないのか。

少し調べる必要がありそうだ。

 俺は遠くの海を見た。

「レオン様?」

 ミリアが首を傾げる。

「どうしました?」

「いや」

俺は口元を緩めた。

「まずは売上だ」

「今ですか!?」

「今だ」

 資産は見つかった。

 それを金に変えるだけだ。

 その先に。

 王都の連中へ請求書を送る日が来る。



(第9話 最初の売上)




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