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第65話 条件交渉

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 ロイドは椅子に深く座り直した。

「ここからは商売の話だ」

 ミリアが息を呑む。

 俺は頷いた。

「ああ」

◇◇◇

「方法は一つだ」

 ロイドは地図を指で叩いた。

「俺が塩漬けにする」

「俺が運ぶ」

「俺が売る」

 俺は黙って聞いた。

「その代わり」

 来た。

「一匹銀貨八枚で全量購入しよう」

「金は今出す」

「金貨七百二十枚。即金だ」

 ミリアが立ち上がった。

「えっ」

「今ですか」

「ああ」

 ロイドは頷いた。

「ただし」

 俺は続きを待った。

「今後、五千匹の鮭を供給し続けろ」

「バルドの鮭は、俺が売る」

 部屋が静まり返った。

◇◇◇

「長期契約か」

「ああ」

 ロイドは頷く。

「塩漬けの設備」

「輸送」

「販売」

「回収不能のリスク」

「全部俺が持つ」

 商人だった。

 情ではない。

 商売だ。

「嫌なら断れ」

 ロイドは言った。

「価格はいくらだ」

 俺は聞いた。

「価格を提示する前に」

 ここに来てロイドが強気に出る。

「もう一つ条件がある」

「俺と決めた価格より安く他に販売してはいけない」

 俺は黙った。

 相場に関係ない価格の取り決め。

 十年前のカルテルとは違う。

 今回は下限を決める話だ。

◇◇◇

 頭の中で数字が回る。

 ダン達のコスト。銀貨四枚。

 これ以上なら損はしない。

 市場の相場。

 九千匹の即金。

 長期供給五千匹。

 ダン達の合意が必要だ。

 しかし、バルドに帰って相談することはできない。

 ミリアが息を詰めて俺を見ている。

 ロイドは何も言わない。

 どれだけ待たせただろう。

「一匹銀貨七枚、三年間だ」

 俺の答えだった。

◇◇◇

 ロイドの口角が上がる。

「いいだろう」

「後悔はさせない」

「たとえ金貨千枚でも」

 俺はロイドを見た。

「来月では、今月の金貨三百六十枚の方が価値が

高い」

 ロイドは少し笑った。

「分かるか」

「ああ」

「それに」

 俺は続けた。

「返済できなければ」

「バルドは終わる」

 ロイドは複雑な顔で頷く。

 そして。

「もう一つ条件がある」

「金の目途は立った」

「そうだろう」

「ああ、それより条件とはなんだ」

「お前はしばらくラングに残れ」

 俺はミリアの顔を見た。

 ミリアも不思議そうな顔をした。

 少しだけ嫌な予感がした。


(第66話 人質の理由)


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