第58話 漁師達の答え
静かな時間が流れる。
窓の外を見ていたミリアが口を開いた。
「来ましたよ」
俺は立ち上がる。
自然と背筋が伸びた。
ダレンもハンスも姿勢を正す。
「小学生が先生を待つみたいだな」
俺が苦笑すると。
ミリアがすぐに返した。
「レオン様も背筋伸びてますよ」
「いつも姿勢悪いのに」
「何!」
その時。
扉が開いた。
ダンと九人の漁師達が静かに部屋へ入ってきた。
今日は一本取られた。
◇◇◇
ダンは仲間達を見回した。
「話は済んだ」
「後は俺達の答えだ」
一人の老人が前へ出る。
「領主」
「前領主には裏切られた」
「だから最初は反対だった」
静かな声だった。
「だが」
「ダンの話を聞いた」
「お前は違うらしい」
別の漁師も頷く。
「俺達も賛成だ」
一人。
また一人。
全員が頷いた。
ダンが俺を見る。
「全員一致だ」
「預り金は使え」
俺は深く頭を下げた。
「ありがとう」
その一言しか出なかった。
その時だった。
「でも……」
ハンスが小さく口を開いた。
全員の視線が集まる。
「これで、百四十枚ですね」
部屋が静まり返る。
「まだ足りないのか」
「ああ」
「あてはあるのか」
「それを何とかするのが、俺の仕事だ」
俺は静かに答えた。
「あといくら必要だ」
ダンはハンスに視線を向ける。
「三百六十枚です」
「……そうか」
しばらく誰も口を開かなかった。
やがて俺は立ち上がる。
「今日はありがとう」
「領主館へ戻る」
ダンは黙って頷いた。
扉へ手を掛ける。
「待て」
低い声だった。
振り返る。
ダンが真っ直ぐ俺を見ていた。
「領主」
「鮭を使え」
部屋の空気が止まった。
「……何だと」
俺は思わず聞き返した。
ダンは静かに頷く。
「その話は」
「今からだ」
(第59話 九千匹の鮭)
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