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第49話 返済期限

ミリアは難しい顔をしていた。

「今日は帳簿を持ってこないんですね」

「今日は持ってこない」

「珍しいですね」

「帳簿にも休日は必要だ」

「領主様が一番必要です」

 まずい、一本取られている。

◇◇◇

 俺は返済予定表を机に広げた。

 金貨五百枚。

 返済期限まで、あと二週間。

 ダレンが静かに言う。

「返済できなければ、バルドの資産が差し押さえ

られます」

「ああ」

「その後は王都の管理下に入ります」

 つまり。

 終わりだ。

 カルテルを暴こうが。

 黒幕を捕まえようが。

 バルドが無くなれば意味がない。

「領主様」

 ミリアが口を開く。

「王都は諦めるんですか」

 部屋が静かになる。

「いや」

 俺は首を振った。

「順番が違う」

「順番?」

「ああ」

「まずは返済だ」

「今、一番の問題は王都じゃない」

 返済予定表を指で叩く。

「この金貨五百枚だ」

 ミリアは黙って聞いている。

「バルドが残ってこそ」

「真実を暴くことができる」

 ダレンがゆっくり頷いた。

「では」

 俺は立ち上がる。

「借金を返す」

「領地を守る」

「真実を暴くのは、その後だ」

 ミリアが小さく笑った。

「やっと領主様らしくなりましたね」

「どういう意味だ」

「最近、探偵みたいでしたから」

 否定できなかった。

 俺は苦笑する。

 鮭の調査は終わっていない。

 だが。

 経営者には優先順位がある。

 まずは。

 このバルドを潰さない。

 そこからだ。

 戦う相手が変わった。

 今度の敵は。

 時間だった。


(第50話 金貨五百枚)



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