表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
34/85

第34話 止まれなかった者達


 翌日。


 ダレンは朝から聞き取りの結果を持ってきた。


「早いな」


「当時を知る者はまだおりますから」


 紙束を机に置く。


 思ったより厚い。


「全部読まれるのですか?」


 ミリアが聞く。


「全部だ」


「うわぁ……」


 露骨に嫌そうな顔をした。


◇◇◇


 最初の証言。


 元農家。


 去年は銀貨十一枚だった。


 だから翌年も上がると思った。


 次。


 元林業。


 今年は安い。


 だが来年は戻ると思った。


 次。


 皆そう言っていた。


「同じですね」


 ミリアが言う。


「ああ」


 俺は頷いた。




 さらに読み進める。


 補助金が出た。


 船を買った。


 網を買った。


 足りない分は借りた。


「借りた?」


 ミリアが首を傾げた。


「補助金だけじゃ足りなかったんでしょうか」


「船は高い」


 ダレンが答える。


「網もです。補助金だけでは足りません」


 次の証言。


 借金は返せると思った。


 鮭が売れれば返せる。


 去年まで十一枚だったのだから。


◇◇◇


 俺は紙を置いた。


 なるほど。


「何か分かったんですか?」


 ミリアが聞く。


「ああ」


 俺は頷く。

「皆、同じことを考えた」

「同じこと?」


「去年の価格だ」


 普通なら価格が下がれば獲らなくなる。


 儲からないからだ。


「でも獲ったんですよね」


「ああ。借金だな」


 船。


 網。


 漁具。


 去年までの高値を前提に買った。


「だから四枚でも獲る」


 俺は続けた。


「五匹で足りないなら十匹。十匹で足りないなら

二十匹」


「うわぁ……」


 ミリアが顔をしかめた。


「そして誰も止まらなかった」


 結果。


 漁獲量は増える。


 さらに増える。


 鮭は減る。


「じゃあ」


 ミリアが言う。


「ダンさん達は正しかったんですね」


「そうだろうな」


 来年の分を残せ。


 獲り過ぎるな。


 結果だけ見れば正しかった。


◇◇◇


 だが。


 俺は価格表を見る。


 十一枚。


 四枚。


 四枚。


 四枚。


「妙だな」


「何がです?」


「四枚だ」


 銀貨十一枚。


 その後、銀貨四枚。


「この差額は大きい」


「確かに」


「しかも」


 俺は帳簿を叩いた。


「価格が下がった後も皆は獲り続けた」


「そうですね」


「つまり」


「安く大量に仕入れられた」


 ミリアが瞬きをした。


「……あ」


「そうだ」


 鮭を売った者は苦しんだ。


 だが。


 買った者はどうだ。


 銀貨十一枚で買うのと。


 銀貨四枚で買うのでは。


 話が違う。


(第35話 得をした者)



コメント、評価、ブックマーク宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ