第22話 鮭を数えろ
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俺たちは再び北の川へ向かっていた。
ダレン。
ミリア。
そして村の漁師達。
全部で十人ほどだ。
「本当にやるんですね」
ミリアが言った。
「ああ」
「鮭を数えるためだけに?」
「だからだ」
俺は答える。
「商売は数字だ」
漁師達は苦笑していた。
だが反対はしない。
昨日の話を聞いて興味が湧いたのだろう。
やがて川へ到着する。
網を張る。
待つ。
そして。
「来た!」
若い漁師が叫んだ。
銀色の魚影が川を上る。
一匹。
また一匹。
さらに一匹。
漁師達の目が輝いた。
「鮭だ」
「本当にいたぞ」
「何年ぶりだ……」
興奮が広がる。
だが。
俺は黙って数えた。
朝。
六匹。
昼。
十匹。
夕方。
九匹。
一日かけた結果。
合計二十五匹。
静かになる。
「少ないですね」
ミリアが言った。
「ああ」
商売として考えれば少ない。
だが。
ゼロではない。
そこが重要だった。
「レオン様」
ダレンが帳面を見る。
「どう思われますか」
「分からん」
「え?」
「一日では判断できない」
前世でも同じだ。
一日の売上で事業は判断しない。
数字は積み上げるものだ。
その時だった。
俺は川岸を見た。
「……?」
違和感。
小さな違和感だった。
「どうしました?」
ミリアが聞く。
「これだ」
地面を指差す。
漁師達も集まってきた。
「足跡ですね」
ダレンが言う。
「ああ」
人の足跡だ。
しかも新しい。
「漁師達のでは?」
「違う」
俺は首を振った。
「向きが逆だ」
足跡は上流へ続いていた。
俺たちは下流から来た。
つまり別人だ。
静かになる。
「誰かいるんですか?」
ミリアが声を潜めた。
「分からん」
さらに歩く。
すると。
今度は焚き火の跡を見つけた。
灰は新しい。
数日前だろう。
「人がいますね」
ダレンの声が硬くなる。
「ああ」
だが。
それだけではない。
俺は川を見る。
倒木が片付けられている。
流木も脇へ寄せられている。
自然ではない。
誰かがやった。
「レオン様」
「何だ」
「もしかして」
ダレンが川を見る。
「誰かがここを管理しているのでは」
静かになる。
漁師達が顔を見合わせた。
「馬鹿な」
「こんな場所に?」
「何十年も誰も来てないぞ」
だが。
証拠はある。
焚き火。
足跡。
手入れされた川。
誰かがいる。
そして。
その誰かは鮭を知っている。
「予想外の変数だ」
俺は呟いた。
「またですか」
「ああ、でも悪くない変数だ」
ミリアが頭を抱える。
「普通は怖がるところですよ」
「怖がっても数字は増えない」
俺は上流を見る。
獣道が続いている。
人が通った跡だ。
「行くぞ」
「今からですか?」
「ああ」
「日が暮れますよ?」
「だから急ぐ」
足跡の先。
その先に。
鮭が戻った理由がある気がした。
そして。
この領地が忘れていた何かも。
(第23話 最後の漁師)
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