表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「不正を告発したら辺境に追放された。三年後、王国は私に頭を下げることになる  作者: 幸善さち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/18

第16話 通りすがりの商人

入り江には一隻の帆船が停泊していた。

 大きくはない。

 だがバルドで見る船としては十分大きい。

「本当に止まってますね」

 ミリアが呟く。

「ああ」

 俺は船を見る。

 船員が何人か水樽を運んでいた。

 補給中らしい。

「レオン様」

 グランが小声で言った。

「どう話すのですか」

「普通だ」

「普通ですか?」

「ああ」

 俺は船へ向かった。

 船の横では一人の男が帳簿を見ていた。

 三十代後半。

 日に焼けた顔。

 商人だろう。

「忙しいところすまない」

 男が顔を上げた。

「何だ?」

「少し聞きたいことがある」

 男は俺たちを見た。

 服装。

 護衛。

 立ち振る舞い。

 そして。

「領主様か」

「そんなところだ」

「金はない顔をしてるな」

 即答だった。

 ミリアが吹き出した。

 失礼な男だった。

「否定はしない」

「正直で結構」

 男が笑う。

「で?」

「魚は扱うか」

「扱う」

「どこへ売る」

「ラングだ」

 予想通りだった。

「その先は?」

「南の都市」

 男は続ける。

「内陸にも流れる」

「値段は」

「魚による」

 当然だ。

 俺は頷く。

「一番高い魚は何だ」

 男が少し驚いた顔をした。

「そっちを聞くのか」

「重要だ」

「確かにな」

 男は顎を撫でた。

「マグロなら高い」

 ミリアが首を傾げる。

「マグロ?」

「大きな魚だ」

 男は海を指差した。

「だが滅多に獲れない」

「他は」

「サバ」

「他は」

「ニシン」

「他は」

「タラ」

「なるほど」

 俺は考える。

 重要なのは魚の種類ではない。

 利益率だ。

「一番儲かるのは」

 男は笑った。

「珍しい魚だ」

「珍しい魚?」

「ああ」

「皆が獲れる魚は安い」

 当然だった。

 市場の原理だ。

「逆に」

 男が続ける。

「皆が持ってこない魚は高い」

 その言葉で。

 頭の中の数字が繋がった。

 ラング。

 街道。

 冬。

 魚。

 保存。

 物流。

「そうか」

「何か分かったのか?」

「ああ」

 俺は海を見た。

「冬の魚はどうなる」

 商人が眉を上げた。

「冬?」

「ああ」

「ニシンだな」

「高いのか」

 商人は首を振った。

「安い」

 俺は黙った。

「なぜだ」

「運べないからだ」

 予想通りだった。

 商人は続ける。

「冬になると北方街道は閉鎖される」

「ああ」

「だから魚が余る」

「余れば安くなる」

「その通りだ」

 静かになる。

 魚はある。

 需要もある。

 だが儲からない。

 理由は簡単だった。

 運べないからだ。

「面白いな」

 俺は呟いた。

 商人が呆れた顔をする。

「どこがだ」

「問題が見えた」

「問題?」

「ああ」

 俺は海を見る。

 魚ではない。

 市場でもない。

 問題は物流だ。

「運ぶ方法さえあれば」

 商人は笑った。

「それが一番難しいんだよ」

 だが。

 俺は口元を緩めた。

 本当にそうだろうか。

 バルドには誰も使っていない入り江がある。

 そして。

 誰も試していない海路もある。

 まずは数字だ。

 数字を集めよう。


(第17話 運べない魚)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ