第137話 道が開いた
第137話 道が開いた
雪が。
消え始めた。
山の。
白い筋が。
少しずつ。
細くなる。
そして。
知らせが来た。
「街道が」
「開きました」
ミリアが。
嬉しそうに言う。
「ラングから」
「ヴェルナまで?」
「ああ」
冬の間。
閉ざされていた。
道。
荷馬車が。
また。
動き始めた。
「じゃあ」
「船の荷も」
「減りますね」
「たぶんな」
◇◇◇
海も。
変わった。
北風が。
弱くなった。
ノース。
第一港。
難所であることに。
変わりはない。
だが。
冬ほど。
荒れない。
ダンの息子が。
二人の男を。
連れてきた。
「昔」
「一緒に乗ってた」
「船乗りだ」
「手伝えるのか?」
「ああ」
一人が言う。
「春からなら」
「何度かは」
「冬は?」
「断る」
即答だった。
もう一人も。
笑った。
「冬に」
「あそこを越えるなら」
「こいつの船に乗る」
「自分の船じゃ」
「嫌だ」
ダンの息子は。
何も言わなかった。
◇◇◇
小さな船が。
二隻。
加わった。
冬のように。
一隻へ。
全部を。
詰め込む必要はない。
「道も」
「開きました」
「船も」
「増えました」
ミリアが。
帳簿を閉じる。
「これなら」
「新しい船」
「いらないんじゃ?」
「まだ」
「分からない」
冬だから。
海へ。
荷が集まったのか。
それとも。
道が開いても。
海が選ばれるのか。
見る必要があった。
◇◇◇
一便目。
黒火石。
縄。
樽材。
塩。
木の器。
ほぼ。
埋まった。
「冬の注文が」
「残ってるだけかも」
「ああ」
二便目。
また。
埋まった。
第三港から。
ベルンの塩。
試しに。
ラングへ出した分。
追加が入った。
黒火石も。
続いている。
三つの港から。
麻布。
干し魚。
木工品。
小さな荷が。
少しずつ。
増えている。
三便目。
ダンの息子が。
船倉を見た。
「また」
「残るぞ」
「え?」
ミリアが。
覗き込む。
「船」
「増えたのに?」
「ああ」
◇◇◇
帳簿を。
並べた。
冬。
春。
違いを見る。
「街道へ」
「戻った荷もあります」
ミリアが。
指を動かす。
急ぐ物。
軽い物。
値段の高い物。
そういう荷は。
馬車へ戻った。
だが。
黒火石。
塩。
樽材。
大量の保存食。
重い。
かさばる。
急がない。
そういう荷は。
船に残った。
「船の方が」
「安いから?」
「ああ」
荷を。
一つだけ。
運べば。
船も。
高い。
だが。
三つの港で。
荷をまとめる。
行きも。
帰りも。
船倉を埋める。
一袋。
一箱。
その運賃は。
下がる。
道が。
開いた。
それでも。
船を。
選ぶ荷がある。
◇◇◇
「冬だけの」
「航路じゃ」
「なかったんですね」
「ああ」
むしろ。
これから。
増える可能性もある。
「秋には」
「鮭も始まります」
ミリアが言う。
「ああ」
今年。
鮭が来る頃までに。
新しい船は。
造れない。
間に合わない。
今年は。
今ある船。
春から。
手伝ってくれる船。
それで。
何とかするしかない。
だが。
来年も。
鮭は来る。
冬になれば。
ニシンも来る。
黒火石。
塩。
三つの港の荷。
今まで。
なかった商売まで。
増え始めている。
来年の船倉が。
今より。
空いている理由は。
見つからなかった。
◇◇◇
「じゃあ」
ミリアが。
俺を見る。
「やっぱり」
「造ります?」
「まだだ」
「まだ?」
俺は。
一枚の紙を。
出した。
三千金貨。
船大工が。
出した。
概算。
船が。
必要なのは。
もう。
分かった。
問題は。
こっちだ。
「三千金貨なんて」
「ありませんよ」
「ああ」
「どうするんです?」
見積もりを。
開く。
木材。
鉄。
帆。
縄。
工賃。
運搬。
並んだ。
数字。
俺は。
一番大きな項目を。
指した。
「木材?」
「ああ」
「これ」
「全部」
「買う必要があるのか?」
ミリアが。
俺を見る。
バルドには。
森がある。
木なら。
腐るほど。
ある。
三千金貨を。
用意する前に。
やることが。
あった。
三千金貨を。
三千金貨のまま。
払わないことだ。
(第138話 三千金貨を削れ)




