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第133話 船が足りない

第133話 船が足りない

 次の便。

 ニシン。

 黒火石。

 並べて。

 ダンの息子が。

 船倉を見る。

「全部は」

「載らん」

「どれくらい?」

「ニシンを」

「八樽減らすか」

「石を」

「二十袋くらい減らす」

 ミリアが。

 帳簿を見る。

「どっちも」

「注文があります」

「ああ」

 ニシン。

 西へ。

 黒火石も。

 西へ。

 帰りには。

 赤い実。

 塩漬け野菜。

 布。

 縄。

 樽材。

 三つの港から。

 集まり始めた荷。

 少し前まで。

 空いた船倉を。

 どう埋めるか。

 考えていた。

 今は。

 載らない。

◇◇◇

「第一港から先なら」

「他の船を使えますよね?」

 ミリアが聞く。

「ああ」

 ダンの息子が。

 答えた。

「問題は」

「ここだ」

 指したのは。

 ノース。

 第一港。

 その間。

「俺の船で」

「越えるしかない」

「もう一度」

「往復すれば?」

「できる日ならな」

 冬の。

 北の海。

 潮。

 風。

 岩礁。

 安全に。

 越えられる日は。

 限られる。

 一便増やしたいからと。

 好きな日に。

 出られる海ではない。

「もっと」

「積めません?」

 ダンの息子が。

 ミリアを見る。

「沈んでもいいならな」

「やめます」

◇◇◇

 帳簿を。

 開いた。

 直近。

 三便。

 満載。

 次へ回した。

 ニシン。

 八樽。

 載せられず。

 待たせた。

 黒火石。

 二十二袋。

 ほかにも。

 少量の荷が。

 残った。

「今回だけじゃ」

「ないですね」

「ああ」

 次の注文も。

 来ている。

 ニシン。

 黒火石。

 どちらも。

 船倉の空きより。

 多い。

「今度こそ」

 ミリアが。

 数字を見る。

「本当に」

「船が足りません」

「ああ」

◇◇◇

 だが。

 船は。

 高い。

 造れば。

 何年も使う。

 船員。

 修繕。

 帆。

 港。

 維持する金も。

 かかる。

 荷が。

 一度増えただけで。

 造る物ではない。

「ニシンが」

「終わったら?」

 ダンの息子に。

 聞いた。

「春だな」

「黒火石は?」

「季節は」

「関係ない」

 ミリアが。

 帳簿をめくる。

「東へ戻る荷も」

「増えてます」

 第一港。

 第二港。

 第三港。

 赤い実。

 野菜。

 布。

 縄。

 樽材。

 まだ。

 小さい。

 だが。

 荷主そのものが。

 増え始めている。

 春になれば。

 陸路も。

 戻る。

 だが。

 第三港で。

 塩の運賃を。

 比べた時。

 荷を。

 まとめて運べば。

 海の方が。

 馬車より。

 安かった。

 冬だけの。

 航路ではない。

 荷があれば。

 春以降も。

 使う価値がある。

◇◇◇

 ラング。

 ロイド。

 イサク。

 ダレン。

 ダンの息子。

 机の上に。

 帳簿を。

 置いた。

「新しい船を」

「考えている」

 ダレンが。

 最初に聞いた。

「いくらです?」

「まだ」

「分からない」

 イサクが。

 帳簿を見る。

「なら」

「造るかどうかも」

「決められんだろ」

「ああ」

 ロイドも。

 頷いた。

「それに」

「春になれば」

「陸路も動くぜ」

「ああ」

「分かってる」

 紙を。

 一枚。

 前へ出す。

 直近三便。

 満載。

 運べなかった。

 ニシン。

 八樽。

 黒火石。

 二十二袋。

 次の便にも。

 すでに。

 注文がある。

「売れるはず」

「じゃない」

「売れている」

「荷が増えるはず」

「でもない」

「もう」

「載らない」

 ダンの息子が。

 腕を組む。

「でも」

「船を造るなら」

「半年以上は」

「かかるぞ」

「ああ」

「今の荷には」

「間に合わん」

「分かってる」

 俺は。

 帳簿を見る。

「今の荷を」

「運ぶためじゃない」

「?」

「来年の荷を」

「運ぶためだ」

 ロイドの。

 表情が。

 少し変わった。

「だから」

「今」

「見積もる」

◇◇◇

「もう一つ」

 俺は。

 ダンの息子を見る。

「船は」

「売れるか?」

「中古で?」

「ああ」

「売れる」

「この辺りじゃ」

「買い手は少ないが」

「ラングから東なら」

「探せる」

「値段は?」

「当然」

「買った時より落ちる」

「それでいい」

 ミリアが。

 俺を見る。

「売るつもりなんですか?」

「違う」

 造った船が。

 思ったほど。

 使われなかった時。

 何が。

 残るか。

 それを。

 知りたかった。

 船は。

 一度使えば。

 消える物ではない。

 最悪。

 売ることも。

 できる。

 もちろん。

 損はする。

 だが。

 全部を。

 失うわけではない。

◇◇◇

 前の世界でも。

 設備投資の。

 会議は。

 何度もあった。

「市場はあります」

「これから伸びます」

「売れるはずです」

 その言葉だけで。

 大きな金を。

 使おうとする。

 俺は。

 嫌いだった。

 今回は。

 違う。

 客がいる。

 注文がある。

 荷がある。

 既存の船倉を。

 使い切った。

 待たせた荷まで。

 数字で残っている。

 季節が変わっても。

 運べる荷がある。

 そして。

 最悪の場合には。

 売れる資産が。

 残る。

 必要性は。

 ある。

 次に。

 見るべきなのは。

 値段だった。

◇◇◇

 翌日。

 ダンの息子が。

 一人の男を。

 連れてきた。

「船大工だ」

 男が。

 航路の紙を見る。

「どんな船が」

「欲しい?」

 俺は。

 荷の帳簿を。

 その横へ。

 置いた。

「まず」

「冬に」

「ノースと第一港を」

「越えられること」

「次に」

 数字を。

 指した。

「今より」

「多くの荷を」

「運べること」

「積む港も」

「降ろす港も」

「一つじゃない」

 船大工が。

 帳簿を見る。

 次に。

 ダンの息子を見る。

「細かい話は」

「これからだな」

「ああ」

「でも」

「大体なら」

「出せる」

「何が?」

「値段だ」

 俺は。

 男を見る。

「いくらかかる?」

(第134話 五百金貨の先)



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