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第132話 売れない石

 第132話 売れない石

 バルドへの帰り。

 ノースに立ち寄った。

 ヴォルグと食事をした。

  鉱山の様子。

 バルドの水車の話。

 西への航路の話。

「おまえさん」

「本当に領主なのか」

 ヴォルグは楽しそうに話を聞く。

 俺は。

  ニシンの季節が。

  終わった後も。

  西へ。

  運べる荷がほしいと。

  話した。

「西へ?」

 ヴォルグが。

 眉を上げた。

「ああ」

「何かないか」

「鉱石なら沢山あるが」

「王都へ出しておるし」

「できれば年中あるもの」

「量が多いもの」

 ヴォルグが。

 俺を見る。

「ノースにしかないようなもの」

「変なことを」

「聞く男だな」

 しばらく。

 考えて。

  ヴォルグが。

 立ち上がった。

「来い」

 ◇◇◇

 坑道の。

 外れ。

 黒い石が。

 山になっていた。

「これは?」

「黒火石だ」

 手に取る。

 軽くはない。

 黒い。

 ところどころ。

 灰色。

「燃える」

「石が?」

 ミリアが。

 覗き込む。

「ああ」

 ヴォルグが。

 一つ。

 炉へ。

 放り込んだ。

 火が。

 移る。

 ゆっくり。

 赤くなる。

「長く燃える」

「いいじゃないですか」

「良くない」

「なぜ?」

「煙が出る」

 確かに。

 薪より。

 黒い煙。

 灰も。

 多い。

「火も」

「強くない」

 ヴォルグが言う。

「王都へ」

「持っていったことは?」

「ある」

「どうだった?」

「要らんと言われた」

 上等な。

 燃料ではない。

 屋敷。

 料理場。

 鍛冶。

 火の質を。

 求める場所では。

 嫌われる。

「だから」

「捨ててる?」

「見ての通りだ」

「また出る」

 鉱石を。

 掘れば。

 一緒に。

 出てくる。

 金には。

 ならない。

 運ぶだけ。

 損。

 だから。

 山になった。

 ◇◇◇

「いくらなら」

「売る?」

 ヴォルグが。

 笑った。

「欲しいのか?」

「値段による」

「運び出してくれるなら」

「くれてやるよ」

 ミリアが。

 数字を書く。

 採掘するために。

 新しく。

 掘る必要はない。

 すでに。

 出ている。

 選別。

 袋。

 坑道から。

 港まで。

 それだけ。

「安いですね」

「ああ」

 問題は。

 売れるか。

 ◇◇◇

「何に」

「使うんです?」

 ミリアが聞く。

「王都では」

「売れなかったんですよね」

「ああ」

「じゃあ」

「ヴェルナでも」

「分からない」

 王都と。

 ヴェルナは。

 同じではない。

 港には。

 仕事がある。

 湯を。

 沸かす。

 布を。

 煮る。

 塩水を。

 煮詰める。

 長く。

 火を使う。

 煙が。

 多少出ても。

 困らない仕事。

 強い火より。

 安く。

 長く。

 燃える方が。

 いい仕事。

 あるかもしれない。

「試す」

「ああ」

 ヴォルグが。

 黒火石を見る。

「好きに」

「持っていけ」

 ◇◇◇

 次の。

 ニシン便。

 船倉の。

 端へ。

 黒火石を。

 積んだ。

「重いな」

 ダンの息子が。

 袋を。

 足で。

 押す。

「どれだけ載せる?」

「試すだけだ」

「それならいい」

 荷の重さ。

 船のバランス。

 そこは。

 男に任せる。

 ◇◇◇

 第一港。

「何だ?」

 黒い石を。

 船主が見る。

「燃料」

「これが?」

 一つ。

 試した。

「煙いな」

「ああ」

「でも」

「長い」

 男が。

 火を見る。

「値段は?」

 言った。

「薪より」

「安いな」

 五袋。

 置いた。

 第二港。

 染め物を。

 している男。

 三袋。

 第三港。

 塩屋。

 十袋。

「こんな火で」

「使えるのか?」

「煮るだけなら」

「試してやる」

 ヴェルナ。

 残った。

 十二袋。

 それぞれ。

 別の仕事へ。

 渡した。

 ◇◇◇

 六日後。

 返事が。

 来た。

 第一港。

 追加。

 二十袋。

 第二港。

 十五。

 第三港。

 三十。

 ヴェルナ。

 四十。

「百五袋」

 ミリアが。

 紙を見る。

「売れましたね」

「まだだ」

「注文ですよ?」

「続くかは」

「分からない」

 だが。

 一つ。

 分かった。

 王都で。

 価値がなかった。

 黒火石。

 場所を。

 変えれば。

 価値がある。

 良い物を。

 売る。

 それだけが。

 商売ではない。

 困っている場所へ。

 合う物を。

 持っていく。

 それで。

 価値は。

 変わる。

 ◇◇◇

 ヴォルグへ。

 注文を。

 見せた。

「こんなに?」

「ああ」

 男が。

 黒火石の山を見る。

「まだ」

「山ほどあるぞ」

「それは」

「助かる」

「全部」

「持っていけ」

 俺は。

 黒い山を見る。

 全部。

 運べるなら。

 悪くない。

 だが。

 次に。

 見るべきものは。

 山ではない。

 船倉だった。

(第133話 船が足りない)



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