第13話 冬に魚を売れ
翌朝。
俺はグランとミリアを連れてラング港へ向かって
いた。
船はある。
商品も見つかった。
次は数字だ。
「レオン様」
ミリアが歩きながら聞く。
「本当に儲かるんですか?」
「まだ分からん」
「またですか」
「だから調べる」
ミリアがため息をついた。
最近はもう慣れてきたらしい。
ラング港へ着くとダンが待っていた。
「来たか」
「ああ」
「で?」
「ニシンを運びたい」
ダンは頷いた。
予想していたようだ。
「量は?」
「まだ正確には分からん」
「なら話にならんな」
即答だった。
俺は頷く。
正しい。
「だが漁村は見てきた」
「ほう」
「冬になると余るほど獲れるらしい」
ダンが腕を組む。
「らしい、じゃ商売はできんぞ」
「ああ」
「だから数字を集めている」
ダンが笑った。
「少しは商人らしくなったな」
「領主だ」
「違いがあるのか?」
「借金の額が違う」
ミリアが吹き出した。
ダンも笑う。
失礼な話だった。
だが否定はできない。
「運賃を教えてくれ」
俺は聞いた。
「バルドからラングまでなら銀貨二十枚だ」
「高いな」
「船は慈善事業じゃない」
その通りだった。
「ニシンの相場は分かるか」
ダンは首を振った。
「魚の値段は魚屋の仕事だ」
「知らないのか」
「船乗りが魚の値段まで覚えていたら商人が
失業する」
それも正しい。
「誰に聞けばいい」
「魚問屋だな」
ダンが港の倉庫街を指差した。
「この先に一軒ある」
「案内してくれ」
「構わん」
その時だった。
「無理だな」
背後から声がした。
振り返る。
三人の男が立っていた。
身なりの良い商人たちだ。
「誰だ」
ダンが顔をしかめる。
男の一人が鼻で笑った。
「ニシンを運ぶ?」
「面白い話をしているな」
「何がおかしい」
俺は聞いた。
「決まっている」
男は答えた。
「冬のニシンは儲からない」
静かになった。
ダンも黙る。
グランも。
ミリアも。
「なぜだ」
俺は聞く。
男は肩をすくめた。
「そんなことも知らないのか」
そして。
当然のように言った。
「塩漬けにするしかないからだ」
俺は眉をひそめた。
「腐るからか」
「ああ」
男は頷く。
「生なら高く売れる」
「だが運んでいる間に傷む」
「だから皆塩漬けにする」
なるほど。
「そして値段が下がる」
男が続けた。
「利益なんてほとんど残らん」
港の風が吹いた。
俺は黙った。
物流の問題は見つけた。
だが今度は保存か。
商売とは面白い。
一つ問題を解決すると。
次の問題が現れるらしい。
俺は男を見た。
「その話」
「詳しく聞かせてくれ」
男が少し驚いた顔をした。
どうやら。
次の課題が見つかったらしい。
(第14話 腐る魚)
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