表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「不正を告発したら辺境に追放された。三年後、王国は私に頭を下げることになる  作者: 幸善さち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/18

第12話 商品を探せ

 翌朝。

 俺たちは領地へ戻っていた。

 ダンとの約束はした。

 船はある。

 次は荷だ。

「レオン様」

 ミリアが眠そうな顔で言った。

「本当に見つかるんですか?」

「分からん」

「またですか」

「だから探す」

 ミリアがため息をついた。

 最近よく見る反応だった。

「グラン」

「はい」

「この領地で売っている物を教えてくれ」

 グランは少し考えた。

「魚です」

「他は」

「木材」

「他は」

「鹿」

「他は」

「海藻です」

「なるほど」

 少ない。

 だがゼロではない。

「まず見て回りたい」

 俺は言った。

「案内してくれ」

「承知しました」

 最初に向かったのは漁村だった。

 海沿いの小さな集落。

 漁師たちが網を修理している。

 ボルドもいた。

「また来たのか」

「ああ」

「今日は何だ」

「領内の調査だ」

 ボルドが笑った。

「領主様らしくなってきたな」

 俺は構わず聞く。

「冬は何が獲れる」

「ニシンですな」

 俺は足を止めた。

「どれくらい獲れる」

「大量です」

「数字はあるか」

 ボルドが固まった。

「数字?」

「ああ」

「去年はどれくらい獲れた」

「分かりません」

「一昨年は」

「分かりません」

 周囲の漁師たちも首を振る。

 誰も知らない。

 毎年獲っている。

 だが記録はない。

「レオン様?」

 ミリアが聞く。

「どうしました?」

「問題が見つかった」

「ニシンですか?」

「違う」

 俺は首を振った。

「数字だ」

 二人が固まる。

「数字?」

「ああ」

「どれだけ獲れるか分からない」

「はい」

「どれだけ売れるかも分からない」

「はい」

「利益も分からない」

 俺はため息をついた。

 これでは商売にならない。

 だが。

 もう一つ気になることがあった。

「ボルド」

「はい」

「冬のニシンは全部売れるのか」

 ボルドは首を振った。

「余りますな」

「なぜだ」

「商人が来なくなるからです」

「冬だけか」

「はい」

「北方街道が閉鎖されますので」

 やはりか。

話が繋がった。

「だから余るのか」

「そうです」

「安く買われることもあります」

 静かになった。

 俺は海を見る。

 そして南のラング港を思い浮かべた。

「レオン様?」

 ミリアが首を傾げる。

「何か分かったんですか?」

「ああ」

 俺は頷いた。

「商品はあった」

「え?」

「最初からな」

 二人が固まる。

「ニシンですか?」

「ああ」

「でも余るんですよ?」

「余るんじゃない」

 俺は首を振った。

「市場に届いていないだけだ」

 ボルドが目を見開いた。

「市場に?」

「ああ」

 俺は海を指差した。

「冬になると街道は止まる」

「はい」

「だが海は止まらない」

 ミリアの目が大きくなる。

「あっ」

 ようやく気付いたらしい。

「船ですか?」

「ああ」

「バルドからラングへ運ぶ」

 誰も喋らない。

「ラングには市場がある」

「はい」

「そこから南へ売る」

 グランが息を呑んだ。

「そんなことが……」

「できるかどうかはまだ分からん」

 俺は答えた。

「だから数字が必要だ」

 魚が何トン獲れるのか。

 運賃はいくらか。

 利益はいくら残るのか。

 数字がなければ判断できない。

「グラン」

「はい」

「今日から記録を付けてくれ」

「記録ですか」

「ああ」

「魚の種類」

「はい」

「量」

「はい」

「値段」

「はい」

「全部だ」

 グランが真剣な顔で頷いた。

 感覚ではない。

 数字で戦う。

「レオン様」

 ミリアが聞いた。

「つまり商品はニシンなんですか?」

 俺は口元を緩めた。

「半分正解だ」

「半分?」

「商品はニシンだ」

「はい」

「だが本当に価値があるのは」

 俺は北の海を見た。

「市場への道だ」

 ミリアが固まる。

 グランも固まる。

 そしてボルドだけが小さく呟いた。

「船……」

「ああ」

 どうやら。

 最初の商売が見えてきたらしい。


(第13話 冬に魚を売れ)



次話もお楽しみに!ブックマークしておくと更新通知が届きます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ