第129話 道を握れ
第129話 道を握れ
第三港。
倉庫の一角に。
机を。
一つ置いた。
帳簿。
荷札。
秤。
「これで」
「事務所ですか?」
「ああ」
ミリアが。
閉まった。
四つの倉庫を見る。
「何を」
「集めるんです?」
「まず」
「何があるかだ」
◇◇◇
最初に。
来たのは。
塩屋だった。
「昨日の塩」
「持ってきたぞ」
「まだ」
「買わない」
「何?」
「加工場が動くのは」
「春だ」
今。
買えば。
保管場所。
管理。
金。
全部。
必要になる。
「じゃあ」
「何のための」
「事務所だ?」
「塩以外に」
「何を作ってる?」
男が。
俺を見る。
「売れる物なら?」
「それを」
「これから調べる」
◇◇◇
翌日。
三人がやって来た。
木の器。
干した魚。
麻布。
量は。
どれも少ない。
「東へ」
「売ったことは?」
「ない」
「ラングの商人は?」
「知らん」
「ノースは?」
「行ったこともない」
第一港。
第二港でも。
聞いた。
同じだった。
物は。
ある。
作る人間も。
いる。
だが。
外の市場と。
つながっていない。
◇◇◇
「自分で」
「売りに行けば?」
ミリアが。
聞いた。
木工職人が。
首を振る。
「誰に売る?」
「店を探して」
「値段を決めて」
「売れなかったら?」
「その間」
「誰が器を作る?」
それだけではない。
一人なら。
五箱。
別の男なら。
八袋。
それだけで。
商人を。
呼ぶには。
小さい。
船を。
動かすには。
もっと小さい。
少量だから。
運ぶと高い。
高いから。
外へ出ない。
外へ出ないから。
売れない。
そして。
作る量も。
減っていく。
閉じた倉庫が。
増えた理由が。
少し。
見えてきた。
◇◇◇
「ミリア」
「はい」
「三つの港で」
「作れる物を」
「まとめろ」
「全部?」
「品物」
「値段」
「作れる量」
「時期」
「保存できる期間」
「それだけでいい」
「売り先は?」
「こちらで探す」
ミリアの。
手が止まる。
「私たちが?」
「ああ」
港の人間は。
作る。
外の市場は。
こちらが見る。
注文を。
まとめる。
荷を。
まとめる。
保管する。
船へ。
載せる。
第一港。
第二港。
第三港。
それぞれに。
窓口を置く。
「商人になるんですか?」
「全部を」
「買うわけじゃない」
重要なのは。
商品を。
持つことではない。
港と。
市場の間を。
つなぐことだ。
◇◇◇
前の世界でも。
似た構造を。
何度も見た。
商品そのものは。
特別ではない。
同じ物を。
他社も作れる。
それでも。
強い会社がある。
客。
仕入先。
倉庫。
物流。
それが。
一つにつながっている。
一つだけ。
真似しても。
追いつけない。
俺は。
航路の紙を見る。
第一港。
第二港。
第三港。
その先。
ヴェルナ。
反対には。
ノース。
ラング。
バルド。
俺達にはニシンがある。
今なら。
一つにできる。
◇◇◇
「でも」
ミリアが言った。
「売れるようになったら」
「直接」
「取引する人も」
「出ますよね」
「ああ」
「それで」
「いいんですか?」
「ああ」
第三港の。
職人が。
ラングの商人と。
直接。
契約する。
それは。
止められない。
止める必要もない。
「じゃあ」
「何が残るんです?」
「物流だ」
「物流?」
一人で。
五箱を。
運ぶ。
高い。
十袋を。
運ぶ。
高い。
だが。
三つの港から。
何十人分もの荷を。
集める。
同じ船に。
載せる。
そうすれば。
一箱あたりの。
輸送費は。
下がる。
「直接」
「売ることはできる」
「でも」
「一人で」
「安く運ぶのは難しい」
ミリアが。
航路を見る。
「だから」
「荷を集める?」
「ああ」
◇◇◇
商品を。
独占する必要はない。
客を。
縛る必要もない。
荷主が。
増える。
荷が。
集まる。
船が。
埋まる。
一つあたりの。
輸送費が。
下がる。
安くなれば。
さらに。
荷が集まる。
その流れを。
先に作る。
後から。
一人で同じことを。
やろうとしても。
同じ値段では。
運べない。
俺は。
閉まった倉庫を見る。
「まず」
「一つ開ける」
「荷を」
「集めるんですね」
「ああ」
この三つの港は。
商品がなくて。
衰えたわけではない。
外と。
つながる機能が。
なくなった。
なら。
そこを。
俺たちが。
作ればいい。
(第130話 船倉を押さえろ)
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