第128話 売れなかった理由
第128話 売れなかった理由
次の。
ニシンが。
まとまった。
「また」
「船ですね」
「ああ」
「今回は」
「町を見るんですよね」
「ああ」
ミリアが。
ため息をついた。
「分かってました」
「……」
「行きましょう」
◇◇◇
第一港。
ニシンを。
降ろす。
「これ」
「ヴェルナの分か?」
荷役の男が。
樽を見る。
「ああ」
「少し」
「こっちにも売れないか?」
「欲しいのか?」
「この時期に」
「この値段で食える魚ならな」
別の男も。
寄ってきた。
「次は」
「うちにも頼む」
ミリアが。
紙を出した。
「いくつです?」
「二樽」
「俺も」
「一樽」
ヴェルナだけでは。
ない。
途中にも。
客はいる。
それを。
書き終えて。
今度は。
町を見る。
◇◇◇
港の裏。
太い縄を。
編んでいた。
ダンの息子が。
一本。
持つ。
引く。
撚りを見る。
「悪くない」
その一言で。
足を止めた。
「何が違う?」
「濡れても」
「撚りが崩れにくい」
職人が。
笑った。
「この辺じゃ」
「昔からこれだ」
近くで採れる。
麻を使う。
船。
漁。
荷を縛る。
使い道は。
多い。
「東には?」
「売らん」
「なぜ?」
「運んだら」
「縄より」
「運び賃が気になる」
値段を。
聞く。
作れる量も。
聞く。
「少し」
「持って帰る」
「これも」
「試すんですね」
「ああ」
◇◇◇
前の便で。
作った。
荷の窓口。
船が来る前に。
荷を集める。
荷主。
品物。
数量。
届け先。
締切。
荷札。
第二港では。
うまく。
動いている。
だから。
第一港にも。
同じ窓口を。
置いた。
倉庫の一角。
机。
帳簿。
人は。
一人。
それだけだ。
「また」
「仕事が増えました」
ミリアが。
帳簿を見る。
「……」
「私のです」
少し。
間が空いた。
「頼む」
「はい」
◇◇◇
第二港。
樽職人が。
こちらを見る。
「また来たのか」
「ニシン」
「欲しいか?」
「売るのか?」
「ああ」
「なら」
「次から持って来い」
ここでも。
注文が入った。
前に見つけた。
樽材。
細長い板。
底板。
輪。
「月に」
「どれくらい出せる?」
職人が。
指を折る。
「その数なら」
「問題ない」
春。
バルドの。
加工場が動く。
鮭。
五千尾。
さらに。
ニシン。
樽は。
必要になる。
「春から」
「頼む」
「分かった」
ミリアが。
樽材を見る。
「これも」
「東へ運ぶんですね」
「ああ」
第一港の。
縄。
第二港の。
樽材。
帰りに。
載せる物が。
少しずつ。
増えていく。
◇◇◇
第三港。
相変わらず。
静かだった。
桟橋は。
三本。
船があるのは。
一つ。
倉庫は。
五つ。
開いているのは。
一つだけ。
ニシンを。
降ろしていると。
倉庫の男が。
近づいてきた。
「それ」
「ここでも」
「売るのか?」
「ああ」
「なら」
「次は」
「少し残してくれ」
「いくつ?」
男が。
数を言う。
ミリアが。
書く。
ここでも。
売れる。
だが。
前に来た時から。
気になっていた。
閉まった。
四つの倉庫。
この町には。
何があった。
◇◇◇
倉庫の裏。
白い袋が。
積まれていた。
「何だ?」
「塩だ」
「ここの?」
「ああ」
「昔から」
「作ってる」
袋を。
開く。
粗い。
白い粒。
ミリアが。
俺を見る。
「加工場」
「ああ」
鮭。
ニシン。
どちらにも。
塩がいる。
「いくらだ?」
聞いた。
安い。
ラングで。
買っている塩より。
安い。
「これなら」
ミリアが。
紙を見る。
「使えます」
「東には?」
男が。
首を振った。
「出してない」
「なぜ?」
「運んだら」
「高くなる」
◇◇◇
道が。
ないわけではない。
雪がない。
季節なら。
第三港から。
東へ。
荷車を出せる。
ただ。
大きな街道は。
内陸を通る。
第三港から。
街道へ出るには。
山を上がる。
「昔」
「東へ出したことは?」
「ある」
「塩を?」
「ああ」
「でも」
「儲からんかった」
塩は。
重い。
坂では。
馬車に積める量も。
減る。
馬。
御者。
餌。
宿。
街道まで。
運ぶ。
そこから。
さらに東。
「ミリア」
「はい」
「出そう」
紙を。
広げた。
塩。
百袋。
雪のない季節に。
第三港から。
ノースまで。
馬車で。
運んだ場合。
必要な台数。
御者。
馬の餌。
宿。
日数。
男から。
聞く。
全部。
足した。
次。
海。
第三港から。
第二港。
第一港。
ここまでは。
地元の船。
第一港から。
ノース。
難所を。
ダンの息子が。
越える。
積み替え。
荷役。
保管。
船賃。
全部。
足す。
ただし。
塩だけのために。
船を出す。
計算ではない。
西へ。
ニシンを運んだ。
船は。
東へ。
戻る。
赤い実。
塩漬け野菜。
布。
縄。
樽材。
そこへ。
塩も。
載せる。
ミリアが。
二つの数字を。
見比べた。
「……安いです」
「どっちが?」
「船です」
倉庫の男が。
こちらを見る。
「本当か?」
「百袋なら」
ミリアが。
もう一度。
計算する。
「海の方が」
「三割くらい」
「安くなります」
男が。
黙った。
◇◇◇
「昔も」
「船で東へ出そうとした」
男が。
言った。
「でも」
「一隻借りたら」
「船代が合わなかった」
そうか。
塩だけで。
船を。
動かそうとした。
だから。
成立しなかった。
今は。
違う。
行き。
ニシン。
帰り。
赤い実。
塩漬け野菜。
布。
縄。
樽材。
そして。
塩。
一つの商品で。
船を。
支える必要はない。
一つで。
埋める必要もない。
いくつもの荷を。
同じ流れに。
載せればいい。
「売れなかったんじゃない」
ミリアが。
紙を見る。
「運ぶと」
「高かったんですね」
「ああ」
商品が。
悪かった。
わけではない。
東に。
需要がないと。
決まったわけでもない。
市場まで。
持っていく。
途中で。
利益が。
消えていただけだ。
◇◇◇
「東へ」
「本当に」
「持っていけるのか?」
男が。
聞いた。
「まず」
「少量で試す」
「売れたら?」
「増やす」
男が。
閉まった倉庫を見る。
「昔は」
「全部」
「使ってた」
五つ。
今は。
四つが。
閉じている。
「塩だけじゃない」
「まだ」
「ここにはある」
「何が?」
「東へ出せるなら」
「集めてみる」
その言葉で。
俺は。
もう一度。
港を見る。
前に来た時。
バルドを。
思い出した。
だが。
違う。
ここには。
作る物が。
残っている。
作る人間も。
残っている。
足りなかったのは。
市場へ。
運んでも。
利益が残る。
道だった。
ニシンを。
西へ運ぶために。
つないだ航路。
その航路は。
帰りには。
東を向く。
「ミリア」
「はい」
「第三港に」
「事務所を置く」
「荷を」
「集めるんですか?」
「ああ」
塩だけではない。
何が。
どれだけ。
あるのか。
まだ。
分からない。
なら。
まず。
集める。
この港から。
東へ。
運びたい荷を。
(第129話 荷を集めろ)
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