↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
127/130

第127話 船を止めるな

 第127話 船を止めるな

「嫌です」

「まだ」

「何も言ってない」

「船ですよね」

「ああ」

「嫌です」

 ミリアが。

 即答した。

「途中の港を」

「見るだけだ」

「途中でも」

「海は海です」

「正しい」

「納得しないでください」

 ◇◇◇

 ヴェルナへの。

 二度目の便。

 ニシンを積む。

 帰りには。

 赤い実。

 塩漬け野菜。

 布。

 どれも。

 まだ。

 少しだけだ。

「もっと」

「積まないんですか?」

 ミリアが聞く。

「売れると」

「決まっていない」

「ロイドさんもイサクさんも」

「買うと言いましたよ」

「あの二人はな」

 商人が。

 仕入れると言った。

 それが実際。

  市場で売れるとは。

  限らない。

「じゃあ」

「今回は」

「何をしに?」

「途中の港を」

「見る」

「荷はもう」

「決まってますよね?」

「俺たちの荷はな」

 ◇◇◇

 ダンの息子に。

 航路の紙を見せた。

「この便から」

「他の荷も」

「載せていいか」

「他の?」

「ああ、他の港から」

 顔をしかめた。

「領主さん」

「ああ」

「それ」

「船乗りは嫌がるぞ」

「なぜ?」

「面倒だからだ」

 即答だった。

 ◇◇◇

「荷主が」

「一人なら」

「積んで」

「運べば終わる」

 男が。

 指を折る。

「五人なら」

「五人と話す」

「荷を待つ」

「数える」

「誰の荷か分ける」

「降ろす港も違う」

「十人なら?」

「もっと面倒だ」

 ミリアが。

 紙を見る。

「でも」

「運び賃は」

「もらえますよね?」

「ああ」

「船も埋まる」

「でも」

「港で一日止まったら」

「一日分」

「稼げなくなる」

 荷を増やせば。

 船倉は埋まる。

 だが。

 荷主まで。

 増えれば。

 船が止まる。

 積載を。

 良くして。

 運行を。

 悪くする。

 それでは。

 意味がない。

 だが。

 俺たちの三つだけでは。

 船倉は。

 埋まらない。

 この航路を。

 毎年動かすなら。

 俺たちの荷だけでは。

 足りない。

「試させてくれ」

 男は。

 しばらく。

 黙っていた。

「一度だけだぞ」

 ◇◇◇

 最初の港。

 着いて。

 すぐ。

 それが起きた。

「こっちを」

「先に積んでくれ」

「待て」

「俺の荷は」

「次の港で降ろすんだ」

「じゃあ」

「そっちが上だろ」

「これは?」

「その次だ」

「下に入れろ」

 船乗りが。

 荷を見て。

 顔をしかめる。

 木箱。

 袋。

 革の包み。

 荷主が。

 三人。

 届け先も。

 全部違う。

「これは」

「誰のだ?」

「俺じゃない」

「向こうの奴だ」

「向こうって誰だ」

 その時。

「待ってくれ!」

 別の男が。

 走ってきた。

「まだ」

「荷がある!」

 ダンの息子が。

 空を見る。

「どこだ?」

「倉庫だ」

「今」

「持ってくる!」

「どれくらい?」

「すぐだ!」

 四半刻。

 来ない。

 船乗りたちが。

 空を見る。

 風向きが。

 変わり始めていた。

「あと少し待て!」

「今日中に」

「次の港へ入れなくなる」

 ダンの息子が。

 俺を見る。

「な?」

「ああ」

「荷が増えるってのは」

「こういうことだ」

 ◇◇◇

「出すぞ」

「でも」

「まだ荷が」

 ミリアが。

 倉庫を見る。

「次に回す」

「いいんですか?」

「一つの荷のために」

「船全部を」

「待たせる方が高い」

 船を。

 出した。

 岸で。

 荷主が。

 何か叫んでいる。

 だが。

 待たなかった。

 ◇◇◇

 海の上。

 考える。

 荷主を。

 減らす必要はない。

 船が。

 一人ずつ。

 相手をするから。

 止まる。

 船が来てから。

 荷を集める。

 船が来てから。

 誰の荷か確認する。

 船が来てから。

 積む順番を決める。

 全部。

 遅い。

「ミリア」

「はい」

「前の」

「荷受け表」

「あります」

「出せ」

 ◇◇◇

 ニシンを。

 運んだ時。

 作った表。

 誰が。

 何を。

 いくつ。

 渡した。

 誰が。

 受け取った。

 破損。

 時間。

 全部。

 残した。

「あの時は」

「荷をなくさないために」

「作りましたよね」

「ああ」

「今度は?」

 俺は。

 表を見る。

「船を止めないためだ」

 ◇◇◇

 次の港で。

 倉庫の一角を。

 借りた。

 バルド領の。

 窓口にする。

 この航路へ。

 荷を載せたい者は。

 船が来る前に。

 そこへ持ってくる。

 荷主。

 品物。

 数量。

 届け先。

 全部。

 先に書く。

 荷には。

 札をつける。

 降ろす港ごとに。

 まとめておく。

 締切を。

 過ぎた荷は。

 次の便。

 船は。

 商談しない。

 待たない。

 着いたら。

 数える。

 積む。

 出る。

「遅れたら」

「本当に置いていくのか?」

 倉庫の男が聞く。

「ああ」

「怒る奴もいるぞ」

「次は」

「時間までに持ってくる」

 ダンの息子が。

 横で。

 笑った。

「それなら」

「船乗りもやる」

 ◇◇◇

 港の奥から。

 木を削る音が。

 聞こえた。

 細長い板。

 底板。

 輪。

 積み上がっている。

「これ」

 ミリアが。

 足を止めた。

「樽ですよね」

「ああ」

「春の」

「加工場で」

「要りますよね」

 鮭。

 五千尾。

 ニシンも。

 扱う。

 加工量が。

 増えれば。

 樽も。

 必要になる。

「樽のまま」

「運ぶのか?」

 俺が聞くと。

 職人が。

 首を振った。

「もったいない」

「板で持ってけ」

「板?」

「完成した樽は」

「中が空だろ」

 職人が。

 積んだ板を。

 叩く。

「板と輪なら」

「ずっと積める」

「組める奴が」

「向こうにいればな」

 なるほど。

 作り方を。

 俺が考える必要はない。

 知っている人間に。

 聞けばいい。

「値段と」

「月にどれだけ出せるか」

「聞いてくれ」

「買わないんですか?」

「加工場が動くのは春だ」

「今」

「買っても」

「置く場所が要る」

 ミリアが。

 紙を出した。

「では」

「これも」

「保留ですね」

「ああ」

 ◇◇◇

 三つ目の港。

 船を降りて。

 すぐ。

 違和感があった。

「静かですね」

 ミリアが言った。

 小さな港ではない。

 桟橋が。

 三本。

 ある。

 そのうち。

 二本には。

 船がいない。

 倉庫も。

 五つ。

 並んでいる。

 開いているのは。

 一つだけ。

 閉じた扉。

 剥がれた看板。

 荷揚げ場には。

 古い轍だけが。

 残っている。

「昔は」

「もっと船が来たらしい」

 ダンの息子が。

 港を見る。

「これだけの」

「桟橋があるなら」

「そうだろうな」

「何を」

「運んでた?」

「知らない」

「俺が船に乗り始めた頃には」

「もう」

「こんなだった」

 倉庫の壁には。

 古い荷札の跡が。

 いくつも。

 残っている。

 ここには。

 運ぶ物が。

 あった。

 運ぶ人間も。

 いた。

 だから。

 この港が。

 作られた。

 なのに。

 今は。

 ない。

 バルドを。

 少し。

 思い出した。

「レオン様?」

 ミリアが。

 俺を見る。

「調べます?」

「いや」

「今日は」

「仕組みが先だ」

 ただ。

「港の名前」

「書いておけ」

「はい」

 ミリアが。

 紙に。

 一行。

 加えた。

 ◇◇◇

 次の便。

 試した。

 港ごとに。

 先に。

 荷を集める。

 締切。

 荷札。

 数量。

 届け先。

 荷受け表。

 船が。

 着く。

 数える。

 積む。

 出る。

 一つ目の港。

 前なら。

 何人もの荷主が。

 船へ寄ってきた。

 今日は。

 来ない。

 倉庫の前に。

 荷だけが。

 まとまっている。

「十二」

「合ってます」

「積め」

 二つ目。

「八」

「合ってます」

「出すぞ」

 荷主は。

 増えた。

 だが。

 船は。

 前より。

 止まらなかった。

 ◇◇◇

 帰りの船。

 ダンの息子が。

 俺の横へ来た。

「領主さん」

「何だ」

「うまくいったな」

「ああ」

「だが」

 男が。

 東を見る。

「一つ」

「気になることがある」

「何だ?」

「この航路は」

「ここから西は」

「ずっと船が動いてる」

 第一港。

 第二港。

 第三港。

 その先。

 ヴェルナ。

 どの港にも。

 船がいた。

 荷も。

 動いていた。

「なのに」

「ヴェルナじゃ」

「冬に物が足りなくなる」

「おかしいと思わないか」

  俺は。

  航路の紙を見た。

  第一港。

  ノース。

  今まで。

  別々だった情報が。

  一本に。

  つながった。

 俺は。

 荷ばかり。

 見ていた。

 何を載せるか。

 誰が持ってくるか。

 どうすれば。

 船が止まらないか。

 船そのものを。

 見ていなかった。

「西には」

「船がある」

「ああ」

「なら」

「切れているのは」

「どこだ」

 男が。

 答えた。

「ノースから」

「第一港までだ」

 ◇◇◇

 潮が速い。

 岩礁もある。

 北風を。

 まともに受ける。

 特に。

 冬は。

 荒れる。

「そこが」

「一番きつい」

「その先は?」

「楽じゃない」

「だが」

「地元の船なら」

「回せる」

 だから。

 西の船は。

 ノースまで来ない。

 春から秋なら。

 陸の街道がある。

 わざわざ。

 難所を越える理由がない。

 冬になれば。

 その街道が。

 閉じる。

 東から。

 物が。

 届かなくなる。

 そこまでは。

 聞いていた。

 だが。

 俺は。

 北の海を。

 一つの壁として。

 見ていた。

 違った。

 壁ではない。

 一か所だけ。

 切れている。

 その一か所を。

 この男が。

 越えた。

 だから。

 ニシンが。

 ヴェルナまで。

 届いた。

 ◇◇◇

 もう一度。

 航路の紙を見る。

 これまで。

 何もない海に。

 道を作ったと。

 思っていた。

 違う。

 道は。

 もともとあった。

 切れていたのは。

 端の一か所。

 そこがつながった今。

 この航路は。

 俺が思っているより。

 ずっと。

 長い。

「ミリア」

「はい」

「次は」

「もう一度」

「同じ港を回る」

「今度は何を?」

「今日までは」

「荷を運ぶ仕組みを見た」

「次は」

「その町が」

「何を作っているかを見る」

 三つの商品が。

 売れるかどうかは。

 まだ分からない。

 だが。

 売れた時に。

 積む物が。

 三つしかないのでは。

 この航路は。

 続かない。

(第128話 売れなかった理由)


最後までお読みいただきありがとうございます。

是非是非、感想、評価、ブックマーク登録をお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。