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「不正を告発したら辺境に追放された。三年後、王国は私に頭を下げることになる  作者: 幸善さち


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第10話 儲かっていない港

港を見れば分かる。

 儲かっている場所には活気がある。

 荷が動く。

 人が動く。

 金が動く。

 だがラング港にはそれがなかった。

「ミリア」

「はい」

「あの船は何隻いる」

 ミリアが数える。

「十四隻です」

「少ないな」

「そうなんですか?」

「ああ」

 俺は頷いた。

 天然の良港だ。

 港町の規模も悪くない。

 それなのに船が少ない。

 何か理由がある。

 だが今は後だ。

 まず状況を確認する。

「グラン」

「はい」

「この港の特産品は」

「塩と干し魚です」

「他は?」

「ありません」

 即答だった。

 俺は少し考える。

 輸出する物が少ない。

 だから船も集まらない。

 可能性の一つだ。

「レオン様?」

 ミリアが不思議そうな顔をする。

「何か分かったんですか?」

「ああ」

「何がです?」

「問題の一つが見えた」

 二人が顔を見合わせた。

 だがまだ断定はできない。

 確認が必要だ。

 俺は港を歩く。

 倉庫。

 市場。

 船着場。

 順番に見て回る。

 そして。

 一軒の酒場へ入った。

「なぜ酒場なんですか?」

「情報が集まる」

 ミリアが首を傾げる。

 俺は構わず続けた。

 現場の話は帳簿には載らない。

 酒場で聞く。

 市場で聞く。

 倉庫で聞く。

 数字の前に現場を見る。

 経営の基本だ。

 昼間の酒場は空いていた。

 船乗りが数人。

 商人が数人。

 その中の一人が大声で文句を言っていた。

「だから運べねえんだよ!」

 俺は足を止めた。

「何がです?」

 酒場の主人が肩をすくめる。

「いつもの愚痴ですよ」

「聞かせてくれ」

 銀貨を一枚置く。

 酒場の主人の態度が変わった。

「北方街道です」

「街道?」

「冬になると閉鎖されるんですよ」

 俺は黙った。

「何ヶ月だ」

「四ヶ月ほどですな」

「なるほど」

 グランが首を傾げる。

「何か分かったのですか?」

「ああ」

 俺は笑った。

「売上の匂いがする」

 二人が固まる。

「街道が閉鎖されるんですよ?」

 ミリアが言う。

「ああ」

「大問題じゃないですか」

「大問題だ」

「なら何で笑ってるんですか!」

 俺は港を見る。

 北の海。

 そして自分の領地を思い浮かべた。

 凍らない入り江。

 天然港。

 誰も使っていない海岸線。

「グラン」

「はい」

「冬でも船は動くか?」

「海が荒れなければ」

「そうか」

 俺は頷いた。

 まだ仮説だ。

 だが試す価値はある。

「レオン様」

 ミリアが嫌な予感しかしない顔で聞く。

「まさか……」

「ああ」

 俺は頷いた。

「街道が止まるなら」

 港を指差す。

「船を使えばいい」

「そんな簡単にいきます?」

「分からん」

「分からないんですか!?」

「勘では動かない。数字が揃ってから動く。」

 まずは運賃。

 輸送量。

 利益率。

 数字が必要だ。


 その時だった。

「おい」

 背後から声がした。

 振り返る。

 派手な服を着た男が立っていた。

 商人のようだ。

 だが身なりの割に顔色が悪い。

「お前」

 男が俺を見る。

「さっき買い取り所で値切っていた奴だな」

「ああ」

「面白い話をしていた」

 男は椅子を引いて座った。

「北の海を使う気か?」

 俺は男を見る。

 どうやら。

 向こうも何か困り事を抱えているらしい。


(第11話 船を売りたい男)



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