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半対の天使  作者: 薙叢雲剣
第一章 転生
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第六話 幼稚園



 自分の苗字が雨宮と言う真実に呆然自失としてから半年。自分の脳内を改造して無かった事にしつつ、変わらない日常を送った。

 あれから身長も伸びて自分の事は自分で出来る様になった。たったの半年ほど前までは服を自分で着る事も出来なかったが、今では余裕だ。

 身体は順調に、年相応に成長している。でも、超能力は爆発的に成長した。

 たった半年で天使の灰を使い切ってしまった。

 天使の灰は超能力の吸収率が高い。なんといっても99.8%もあるのだからほとんど吸収してしまう。それでも0.2%は吸収できずに超能力の影響を受けてしまう。

 少しの超能力なら何の問題も無いのだが、どんどん規模と威力が増していく超能力に耐え切れなくなり、少しずつ無くなり始めた。日に日に強くなっていく超能力に耐え切れなくなり、ついには天使の灰が無くなってしまうまでになった。

 そんな超能力なのだが、今ではすごい威力になっている。

 母に怒られるので試してはいないが、ユニットバスの水を半分消せるほどになっている。最初のトイレットペーパーの切れ端10個で限界が来ていた時とは比べ物にならない。

 だけども、天使の灰が消えてしまった事で、母に追加を頼まなければいけない。これは一種の試練だ。


「ねえねえママ。あの……天使の灰、かって」

「ん?どうして?」

「あれ、なくなっちゃった」

「なくなっちゃったの?どうして?」


 絶対に聞いてくると思っていた問いにすらすらと返事を返す。


「おそとにもっていったらこぼしちゃった」

「そう。わかったわ。追加で買ってあげる」


 確かにお願いはしたが、お金は本当に大丈夫なのだろうか。

 そんな疑問を抱いていると、次の言葉でその疑問は解消された。


「補助金も新しく申請通ったし」


 ほじょきん。そんなのがあったのか。まあ、あるか。

 考えてみれば当たり前の事だった。そもそもの事を考えれば当たり前にある制度だ。だって、この都市は天使に侵略されている。

 ガラスのこちら側に居るから感じないだけで、確かに戦っているのだ。それはたくさんの死者と、それに比例するように求人をしている。それに、超能力は生まれ持ったものだと言う。

 超能力事態は5歳までに覚醒するのだが、それまでは覚醒しないだけで身体に宿しているのだ。その超能力は突発性のもので、遺伝などは一切関係ない。故に大富豪の子供だろうが、貧困の子供だろうが、優秀な超能力の発言確率は変わらない。もちろん、教育の過程で差異は生まれるのだが、超能力の内容事態が変わる訳じゃない。

 故に、子供を増やすために補助金などを手厚くしているのだろう。なぜ1年半も補助金が無かったのかは分からないが、この半年で羽振りが良くなったのは補助金が降りたからに違いない。

 しかし、補助金があるならばある程度のわがままも聞いてもらえそうだ。子供っぽい物をおねだりする気は無いが、超能力の物に関しては違う。流石に毎度毎度ユニットバスの水を消し飛ばす訳にはいかない。それをするぐらいなら天使の灰を使った方がマシだ。


「そうね。鞠いくらほしい」


 前が一キロだった。なら今回は


「5」

「500gかな?」

「ううん。5キロ」


 僕の言った数字に母はあおけそった。

 天使の灰の値段は1g30円。つまりは1キロ3万円。それを×5すると15万円。母があおけそった理由も分かると言う物だ。

 だけども、一キロなんていうのは今の僕ならば1カ月と持たずに使い切ってしまう。

 この半年で分かったのだが、一部の天使の灰に力を注ぐよりも、多い天使の灰に力を注いだ方が天使の灰の消耗率は低い。つまりは、5キロもあれば1年以上は持つ。それでも、どんどん要求量の上がるのには目をつぶればの話だが。

 本当に自分で稼ぐ必要性が出てきたかもしれない。


「…分かったわ。…5キロね。…15万」


 よし、承諾は取れた。これで一安心だ。

 僕は上機嫌で食卓に着いた。


~~~


「ふふ、かわいいわ」


 今日はやけに母が上機嫌だ。母が上機嫌な理由は明白で今僕がきている服に起因している。


「かわいいわー。幼稚園服も乙なものね」


 ちょっと乙って言葉はやめてほしい。なんか母親でも犯罪臭がする。

 でも、確かにかわいい。ナルシストっぽく聞こえるが、前世の感覚から言ってもかわいい。別に僕がロリコンってわけじゃない。

 母の趣味なのかは知らないが肩ほどで切りそろえられた髪は女の子の様だ。そこに雨宮鞠なんて名前も付けば…考えない様にしよう。

 

「はぁー」

「何?鞠は不安?」


 いやね?お母さま。そういう理由のため息じゃないのよ。母の趣味全開のこの髪型と服装。盗み見た保育園案内書には指定服なしと書いてあったのだけど。それなのにも関わらず、幼稚園の服装を着せるところに母の趣味が全開で入っている。


「はぁー」


 再度ため息をつく。もう一度鏡を見たらため息もつきたくなるってものだ。


「さあ、早くしないと遅れちゃうわ。行きましょか鞠」


 はぁー。


~~~


 幼稚園まではバスで移動する。流石と言っては何だがこの都市の福利厚生はすごい物で、幼稚園までのバス代すら出してくれるのだ。もちろんの事、幼稚園代は無い。と言うか教育費と言う物が無い。

 バスの中には子ずれの客が多く乗っている。僕と同じ幼稚園組の親子なのだろう。


「やっぱり多いわね」


 そうだね。確かに多い。

 人口が減り続けた前世とは違い、都市計画以上の人口になってしまうほどに人があふれかえっている世界だ。その子供の量はバス一台を余裕で満杯にするほどに多い。

 幼稚園のバス停に着くころにはぎゅうぎゅうずめになっている。

 やっとの思いでバスを降りるとさわやかな空気を深く吸う。あんなに人が多いと前世の出勤ラッシュが思い返されるが、あのバスはそれと似た雰囲気を感じる。


「やっと、降りられたわね。流石の多さだったわ」


 母も同じようで美味しそうに深呼吸をしている。そんな不思議な親子を見る周囲の目線は少し冷たい。だが、今世の僕はそんな事を気にすることはない。赤の他人を気にしたって良い事なんて一つもない。


「さて、いきましょうか鞠」

「うん」


 母に手を連れられて幼稚園の敷地に入った。

 幼稚園は計画的に作られただけあってそれなりの敷地がある。東京の様に隙間に建てた感が無いのだ。

 次々と同じ幼稚園児が親と別れて靴を履き替える。それに倣うように僕も母に別れを告げた。


「じゃあ、バイバイママ」

「え?何言ってるの?最初は一緒に中まで行くのよ」


 え?そんなの聞いてないんだけど。こんな母親だ。幼児に襲い掛かる事があるかもしれない。

 でも、断れない事を知っている僕はすぐさま諦めて靴を履き替えた。

 母は保護者用のスリッパに履き替えると、僕を引き連れて職員室に行った。


「あなたが鞠…くんね」


 何その間。今ちゃんって言いそうにならなかった?


「では、おかあさん。最初は見学されて行きますか?」

「はい」


 母はシュっとカメラを懐から取り出した。

 え?あんなのどこに入っていたの?

 そんなツッコミを抱いたのは僕だけの用だ。職員さんはそれを無視して話をつづけた。


「では、こちらの部屋です。鞠…くん。大丈夫そう?」


 また間が開いたな。確かに見た目が悪いのは分かってはいるが傷つく。


「はい」


 僕は傷つきながらも返事を返した。


「ちゃんと返事できて偉いね」


 子供の扱いに慣れているようで、頭をぽんぽんと叩いてくる。その手つきは優しかった。


「では行きましょうか。少しの間、お母さんと待っててくれるかな?ではお母さん合図したら息子さんを部屋の中に入れてください」


 職員さんが部屋に入っていった。

 ドアは開いていて中の様子がしっかりと見える。それは前世の幼稚園そっくりだった。


「はい。みんなー。こっちに注目して。そうそう。しゅんくんこっちにむいてくれるかな?」


 先生特融の優しいしゃべり方で注目を集める。それはプロの物だった。


「今日は新しい子が入ってきます。みんな仲良くするように…ではお母さんお願いします」

 

 職員さんが合図を送った。


「鞠、不安にならなくても大丈夫だよ。みんなは敵じゃないからね」

「うん。大丈夫」


 ぽんと背中を押されて部屋に入る。扉をくぐった瞬間。周囲から一斉にに目を向けられる。それは普通の2歳児なら恐怖を覚えるだろう。でも、これでも前世を生き抜いてきた人間だ。このぐらいなんてことはない。


「この子が新しく入る子です。自分で自己紹介できるかな?」

「雨宮 鞠です」


 こんなものでいいだろう。2歳児にこれ以上自己紹介しても記憶にすら残らないだろう。


「はい。雨宮鞠くんです。みんな拍手を」


 パチパチパチとまばらに拍手が起こる。その合間にパシャと言うシャッター音が聞こえたのは聞かなかったことにしよう。そう、フラッシュが見えても。


「鞠くん。もう座っていいよ」


 言われた通りに手前の場所に座った。


「では、今日も健康に安全に遊びましょうねー」


 そう言うと、みんなが一斉にばらけだした。これが朝の挨拶の終わりなのだろう。

 その幼稚園児たちを見て思う。僕はこの中に溶け込めるのだろうか、と。




もし、この作品を気に入ってくれたら「いいね!」や「ポイント」を入れてもらえると非常に嬉しいのでお願いします。


楽しんで読んでもらえれば嬉しいです。自分でも見返しているのですが誤字脱字があれば報告してくれるとありがたいです。


※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


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