表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半対の天使  作者: 薙叢雲剣
第一章 転生
41/51

第四十話 討伐作戦その2



 長い時間もみくちゃにされた僕はぐちゃぐちゃになった髪の毛を手ですきながら正剛少将の元へ歩いていく。

 甲板に出るともうすでにスサノオ部隊は整列を終えて仁王立ちで立っている。

 僕はそんなスサノオ隊員に向き合う様に立つ正剛少将の元まで歩いていった。

 正剛少将は僕のぐしゃぐしゃになった髪の毛を見て不思議そうな顔をする。その「何をやっているんだ?」と言いたげな目を見て僕の額に青筋が立った。


「なんだ?髪が乱れているが何かあったか?」


 その呑気な発言にキレそうになった。もともとはあんたの部下だろう!と言いたくなるが、グッと我慢する。これでも前世で色々な理不尽を経験してきた身だ。我慢は出来る…我慢は。


「ええ、貴方の部下に潰されましてね。よもやスーパーの精肉店か、色町の風俗に売り飛ばされるかと思いましたよ」

「それは…すまなかったな」


 いくら大人とは言え文句の一つぐらいは言いたい。

 まあ、愚痴はこのぐらいにしておこう。正剛少将には落ち度はない。出来れば注意喚起ぐらいはしてほしかったが、それを言っても仕方がない。

 一部の軍人(女性)がほくほくとした笑顔になっているが、僕はなるべく見ないようにする。あの押しつぶされる筋肉の感触は思い出すだけでも苦しくなる。

 本当に失礼だけれどもあの人たちは女なのだろうか?柔らかさと言う物が全くなかった。


「さて、時間通りだな」


 正剛少将が頭に付けているAR型情報端末で時間を確認すると、声を張り上げてそう言った。40人全員にいきわたる声量は隣で聞くにはうるさい。


「さて、今からキクの花作戦を決行する。各自再度気を引き締めてのぞむ様に!では、第一班は中田、お前が率いろ!第二班は浅野大佐が率いろ!第三班は咲菜中佐が率いろ!では我に続け!」


 そう言うと正剛少将が宙に浮かび上がった。

 僕がそれに驚いていると、他の隊員も次々と宙に浮かび上がる。

 

「な、なにあれ!?」


 僕が驚いて声を上げるといつの間にか隣に居た見覚えのない軍人が教えてくれた。

 って、気づいたら周りに5人も軍人が居た。この制服は大和軍の物では無く、大阪軍の物だ。

 前世の時にも親しみがあった自衛隊の服をまとった30歳から50歳ほどの見た目をした5人組だ。だれもが優しい笑顔を顔に張り付けている。


「あれは、天叢羽衣と言うんだよ」

「あまのはごろも?」


 僕はそう言われてスサノオ部隊の人を見た。確かにさっきまではぐちゃぐちゃにされてイライラと疲労感があって気づかなかったが、よくよく見てみると軍服の下にウェットスーツの様な物を履いている。

 あのウェットスーツの様なものが天叢羽衣と言うヤツか。イメージ検索で調べてみるが、ほとんど載っていなかった。この天叢羽衣は機密情報と言うヤツなのだろう。

 でも、ネットに載っていなくても知っている人が僕の隣にいる。


「あのぉ、天叢羽衣って何ですか?」


 僕がちょっと媚びた感じでそう問うと、隣の大阪軍人は感じよく答えてくれた。


「ああ、天叢羽衣って言うのは天使戦専用に作られたスーツ型兵器だね。2次元的にしか動けない僕たちと3次元的に動ける天使では土俵自体が違う。それを埋める為に作られたものだよ」


 へぇーなるほどね。確かに一部の超能力者以外空を飛べない。届かない距離から凹すか攻撃されてはたまったものではない。

 でも、僕も空を飛んでみたいなー。一度は皆が夢に見る生身での飛行をやってみたい。あれ正剛少将に頼んだら、貸してもらったりは出来ないのかな?チャレンジで後で聞いてみるか。


「ほかにも天使の攻撃を軽減させる効果がある」

「それはすごいですね。空も飛べてダメージも軽減できる。まさに必須装備に思えるのですが、なぜあなたは着ていないのですか?」


 そう、隣にいる軍人は普通の軍服しか着ていない。何故そんな有用なものを語っているこの人自身が着ていないのだろう?

 その事を聞いてみると。


「あーそれね。僕も一度は着けてみたいんだけどね。あれ一着がめちゃくちゃ高いんだよ」

「高いっていくらぐらいですか?」

「一着50億」

「…」


 あまりの金額に言葉が出なかった。

 だって、正剛少将たちはみんな装備していると考えたら。50×40で2000億円になる。普通にえぐ~である。

 

「俺もいつか着れるようになりたいな~」

「着るのに条件ってあるのですか?」

「それはもちろん。在庫数も決まってるから、上位の人達から優先して配られていくんだよ」

「なるほど」


 そんな話を名も知らない大阪の軍人と呑気に話していると、さっそく一人目の怪我人がやってきた。

 晴天の空から降りてくるスサノオ隊員は良く見えないが、真っすぐとすごい速さで飛んできている。

 船の甲板にその隊員が着陸すると僕に右手を見せてきた。いや、右手を、と言うよりかは右手があった場所と言った方が適切だ。

 何かに消し飛ばされた右手の付け根からはだらだらと血が流れ落ちている。甲板をどんどん地に染めていっているが、隊員はそんな事は気にせずに治療を頼んできた。


「頼む」

 

 隊員は額に脂汗を浮かべながらそう言った。

 我慢しているようだけれどもかなり痛いのだろう。

 

「わかりました。では治しますね」


 僕は隊員の無くなっている付け根部分に触れる。それだけで一瞬にして右手を再生させた。かなりの量流れ落ちていた血液までも再生させると、楽になった隊員が感謝を言ってきた。


「ありがとう」


 そう言うと隊員はすぐさま飛び立ってしまった。

 何とも簡素的だが、今すぐ前線に戻らないといけないのだろう。

 かなりのスピードで飛び去る背中を見ながら僕は思った。


「これって案外ひま?」


 と。

 

~~~


 side 正剛少将



 天使には階級と言う物がある。一番下から、天使、大天使、権天使、能天使、力天使、主天使、座天使、智天使、熾天使と九つの階級がある。

 この九つの階級の中にも区分けがある。

 天使、大天使、権天使の聖霊のヒエラルキー。

 能天使、力天使、主天使の子のヒエラルキー。

 座天使、智天使、熾天使の父のヒエラルキー。

 と三つがある。

 一般的に言われる天使とは聖霊の階級の一番最下級の天使だ。その上の大天使、権天使は指揮官クラスと言われている。

 そして今戦っているのが力天使パワーズだ。子のヒエラルキーの一番下に位置する力天使だが、大天使や権天使などとは比較にならない強さを持つ。子のヒエラルキーを大指揮官クラスと言うのだが、なんといっても聖霊のヒエラルキーには無かった特異性がある。それは…。


「第一班!全力回避だ!」


 次の瞬間、さっきまでいた場所が能天使の放った矢によって貫かれた。

 聖霊のヒエラルキーとの一番の違い。それは階級それぞれに特殊な能力があると言う事だ。

 聖霊のヒエラルキーは天使の位が上がっても力が増すだけでそれ以上の変化は無かった。しかし、子のヒエラルキーになったら突然として特殊な能力が現れる。

 今戦っている能天使パワーズは子のヒエラルキーの一番下と言う事もあり、分かりやすい能力をしている。それが光の武器だ。

 天使の主な攻撃手段は光の剣または槍か光の弓だ。それをそのまま強くしたのが能天使パワーズの能力だ。その攻撃は聖霊のヒエラルキーのとは違い、とてつもない威力を放つ。それこそ一撃で山が抉れるほどの矢を連射してくる。まともに当たれば即死。掠っただけでも体が蒸発する。

 天使の一撃が体に銃弾ほどの穴が開く程度だと考えれば段違いに威力が違う。指揮官クラスでも当たった場所が丸く抉れるだけで蒸発まではしない。

 そして一番厄介なのがその飛行性能だ。我々も訓練しているが、元が空を飛ぶ種族の天使には到底及ばない。

 まともに攻撃を当てるのも苦労する。遠距離攻撃ではその飛行性能で躱されて、近接攻撃では掠っただけで体が蒸発する槍を振り回してくる。もしも隙をついて攻撃を当てても、威力不足で大したダメージにはならない。

 そんな絶望的な相手だが、我々にとって唯一の救いは怪我を負っても鞠がすぐに治療してくれると言うことぐらいだ。 

 

「第一班!距離を詰め過ぎだ!少し離れろ!」


 第一班が天使との距離を少し縮めたその瞬間、第一班はとっさに下がったが、一人が被弾してしまった。


「ダメージレポート!」

「被弾1、右手が消失しています!」

「下がって治してもらってこい!」


 被弾したものが船の方へ下がっていく。それを見ながら隊員が一人抜けた穴を我が塞いだ。

 天使の攻撃を一個の生物の様に第一班は躱していく。熟練された兵士たちは第一班の指揮官のイメージ共有によって全く無駄のない回避が出来ている。

 先ほどの抜けた隊員が戻ってきた事の報告が入った。その隊員と入れ替わるように我は第一班から抜けると全体の指揮に戻った。


「第一班が全員そろった!第二班!隙をついて攻撃しろ!」


 第一班が欠員が出た時に攻撃の姿勢から防御の姿勢に入っていた。それを解除して攻撃の体制に移るように第二班にそう言っていた。

 今回の大指揮官クラスとの戦闘は、第一班が止めて第二班が攻撃。第三班は援護と補助にまわる。そうやって上手く回している。しかしながら、そう上手くやっても、あと何時間かかるか分からない。今は兎に角火力が圧倒的に足りない。

 あと100人部下が居たら簡単に倒せたのに、なんて愚痴が出そうになるが、今それを言っても仕方がない。


「第二班!1人負傷しました!」


 一人が能天使の攻撃を避けきれずにお腹に大きな穴が空いている。


「二人が支えになって今すぐ治療を受けてこい!第三班!その隙間を埋めろ!」


 時間が経つにつれて超能力、精神力どちらも削られていく。幸い未だ一人も死んでいないが、それも時間の問題だろう。

 しかし、その時間が今は必要だ。今大阪軍は再編成をしている最中だ。それが終われば船で我々の近くまで来てくれる。

 そうしたならば今一番欲しい火力の問題が何とかなる。

 でも、その時間が今兎に角苦しい。あと何時間戦えばいいのか分からない中では部下の士気が持つのかどうかが勝利へのカギだろう。


 そう、そんな事を考えているときに天使の動きが突然変わった。

 これまでにない行動に一瞬動揺したが、すぐに気を取り直して部下に指示を出した。


「全員下がれ!なにか起こるぞ!」


 能天使から距離を取る。全員が距離を取った事を確認した我は、次の行動を伺うが、天使は何か一点を見つめて動いていない。

 天使は何かを見ている。一切視線が動かない所からして一点を見ている事は明らかだった。我は不思議に思い天使の視線を辿っていった。そして、天使が見ていたものは…。

 

「まさか…まさか!」


 天使の見ている方向。それはこの海域に唯一ある船。そう鞠が乗っている軍艦があった。

 一瞬にして危機を感じ取った我は即座に部下に命令を飛ばしていた。無意識の反射的行動だったが為に、自分で自分の事を理解するのにほんの刹那の時間を要した。


「全員天使に攻撃を加えよ!絶対に船に攻撃させるな!あそこが落とされたら我々の負けだ!」


 部下は我の指示通りにヘイトをかう為に一斉攻撃を行ったが、天使は回避も防御もする事無く、それをすべて無視して船の方に飛び始めた。

 

「絶対に船を攻撃させるな!あの船はお前たちの命より重い!」


 あの船が落とされて鞠が死ねば、我々の回復手段がなくなる。そうなれば今以上にじり貧になり、大阪軍の応援が来る前に我々は全滅する。それだけは絶対に避けなければならない。

 皆が天使に飛び掛かり天使を止めようとするが振り払われてしまう。我も強化した拳で殴るが、少しよろめかせる程度しか効いていない。連携を欠いた個々の攻撃では大したダメージになる事は無く、天使は船の方に飛んで行ってしまう。

 船の方に連絡をして退避を促しているが、ただでさえ遅い船と言う物は到底天使からは逃げられない。

 我は天使の後を追いながら、慌てる。どうすれば止まるのか考えても一切思いつかない。

 全身に嫌な冷や汗が背中を伝うが、今はそれどころでは無かった。

 そして、天使はついに軍艦に着いてしまった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ