第四話 お出かけ
超能力を得てから数日が経った。
あれから毎日欠かさず超能力をバレない様に使っている。最初に経験した要は激しい頭痛では無いものの、毎度毎度の成長頭痛は嫌になる。
それでも、その成長頭痛を味わったかいがあった。徐々にではあるが使用回数と規模が上がっていっている。最初は10回だったが今では14回使えるようになった。
前世、と言うよりかは人生において明確に数字で成長を実感できる物は限られている。幼い頃だったら勉強やスポーツと言った物が上げられる。大人になると売り上げ成績や昇進と言った形で成長が見える。しかし、どれもが長い期間必要であり、毎日の成長を実感できる超能力とではモチベーションが違う。
どんどんと成長できる事が楽しくて毎日限界まで使う。それでも成長頭痛を味わうのはキツイが、これも成長のためと思えば何とか耐えられた。
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「鞠、ちょっと都内の方にお出かけしない?」
土曜日。僕が超能力を使える隙を伺っていると母からそんな提案をしてきた。
突然の提案に僕は驚く。なぜならば、僕は生まれてから一度として都内と言われるB番区に行ったことが無い。
この完全人工都市大和は近年作られた為に合理性に富んだ設計で作られている。
大和は11×11の1から121までの番区に分かれた構造になっている。
中央に位置する一番区、これはこの都市の中心であり、皇族が住んでいる場所でもある。
1番区を囲む様に、2~9番区がある。この番区には国の機関が集まっている場所だ。一般人はほとんど入ることが出来ない場所でもある。この1から9までの番区をAdministration Areaと言い、通称A区と言われている。
A区の外側には、10から25番区がある。この場所はBusiness Areaと言い、通称B区と言われている。B区には企業のオフィスや、大規模なショッピングモールなどが置いてある。それ以外にもホテル、高級飲食店などもある。
B区の外側には、26から81番区がある。この場所はResidential Areaと言い、通称R区と言われる。R区には住宅街があり、大和全体の人口99%が住んでいる。
R区の外側には、82から121番区がある。この場所はDefense Areaと言い、通称D区と言われている。D区は本来、防衛を主眼に置いて作られた区画だが、大和都市に入れなかった人たちが暮らしている。D区は天使からの被害が時々起こるような場所でもある。
D区は僕も住んでいるが、D区の住人は大和都市の人口に加算されていない。
これが大和の都市構造なわけだが、こんな棲み分けがあるのだ。もちろんの事、差別は生まれた。
別に法律上、番区に序列なんて存在しない。単なる棲み分けとしてあるだけなのだ。
しかし、住む場所によって天使から受ける被害や、都市内の移動などが変わってくる。それが、上流国民と中級国民、下級国民に分かれてしまった。
A区は住めないので除いて、B区が上流国民として、R区が中流国民として、D区が下級国民として差別されてしまった。
そして、僕が住んでいるのはD区だ。D区はもともと防衛で設計されていたので、民間人が乗るような電車は無く、軍用の電車しかない。そのためいったん近くのR区まで歩いて出て、そこから電車に乗るのだ。
そう、交通の便がめちゃくちゃ悪い。しかも、ここから一番近いR区の駅まで5キロ近く歩く羽目になる。一応民間は運営するバスもあるのだが、国の補助金が無いためにかなり高い。
母がB区に行くと言って驚いたのを、納得いただけただろうか。
「うん、いく」
母に行くことを伝えた。すると母はニコニコの笑顔になって背中に隠していた何かを取り出した。
それは…服だった。……女の子用の。
「これ?きるの?」
「ええ、そうよ。一度着させてみたかったの」
そういって漫勉の笑みで近寄ってくる母に、僕は後ずさりをして逃げようとした。しかし、まだ生まれてから1年と半年ほどの肉体では逃げる事なんてできず、無事に母につかまった。
それからなすが儘に身体を弄ばれた。
5分後、僕はワンピースを着させられていた。ワンピースは青色を基調としている服だ。
僕は歩いて鏡の前に立ったのだが、自分の姿を見て膝から崩れ落ちた。
「さあ、鞠の支度もできたし、行きましょうか」
母は乗り気で今にもスキップをしだしそうなほどご機嫌だ。それとは違い僕は外に出たくない。
「ほら、行くよ」
母に手を引っ張られて連れ出された。
外に出るとガラス越しの太陽が照らしていた。そう、ガラス越しだ。
天使は空を飛ぶ。それは翼が生えているところから見ても分かるだろう。その天使の進行を防ぐために特殊なガラスを大和全体に張り巡らせているのだ。
ガラス越しでも太陽光は暑い。幸い紫外線や有害物質はガラスによって遮断されているが、暑さは防げない。
「さあ、行きましょうか」
ニコニコと嬉しそうに手を引く母に僕はどんな気持ちを抱けば良いのか、今は分からなかった。
…本当に着替えさせてほしい。
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バスに乗りR区の駅からB区の16番区にやってきた。
雑多な人たちが家を建てたD区とは違い、B区は計画的に整頓されている為に街並みは美しい。なにより、その歩く人間の量と服装はD区では絶対に見れないものだった。
「さて、鞠さっそくお買い物にいきましょうか」
「…」
幸いと言っては何だが、幼い体は男女の差がほとんどない。故に、髪が短い事以外は女の子の見た目なのだ。これがもし前世の見た目なら白い目で見られていた。
母に手を引かれるがままに大型ショッピングモールの中に入った。
ショッピングモールと言っても、前世でよく見るようなショッピングモールでは無い。この都市のB区は高さ300メートルのビル群が並ぶ場所なのだ。そのビルの階数は75階と非常に多い。
前世以上の技術が端々から感じられて、建築を一切かじった事のない僕でもそのすごさが一瞬で分かる。
そして、ショッピングモールの案内図を見ていると、前世では絶対に無い店の名前が堂々と書いてあった。
その店とは超能力者用の店。前世では怪しい所にしかない店だが、この世界には何の違和感もなくある。
周囲の光景を興味津々に見ていると、母が話しかけてきた。
「鞠、何か欲しい物があった?」
「ううん」
別に何かが欲しくて見ていた訳ではない。ただ、前世との違いに興味深々になっていただけだ。
母は僕が遠慮していると思ったのか、頭をなでてきた。
「別に遠慮する必要は無いのよ。欲しい物があったら言いなさい」
「…うん」
家の家計は決して余裕のあるものではない。それでも子供に何かしてあげたくて母はこんなことを言ったのだろう。
もし僕が本当の1歳児だったら色々な物が欲しくなっていたのだろう。でも、僕には前世の記憶がある。子供用のおもちゃなんて興味の欠片もない。どちらかと言えば超能力者用の店を見てみたい。一体どんな物が売っているのだろうか。
「じゃあ、まずは私の用事を済ませちゃいましょうか」
母はそういうと僕の手を引いて化粧を専門として扱ってる店に入っていった。
前世では入るどころか見向きもしなかった店だが、今一度こう見てみると興味深い。
なんだこの拷問器見たいな物は。…え?これ目に当てる奴なの?こわ!
しばらく店の中を見ていると母が買い物を終わらせてやってきた。どうやらかなりの量を買ったようで、化粧品にしてはやけに大きい紙袋を持っている。
「さあ、次に行きましょう」
それから服、靴、小物、と色々な物を買っていった。どうやら母は普通の女の人とは違い買い物が早い。男の身としてはありがたい限りだが、女の人っぽくない。
「さて、一通り買いたい物は買えたわ。鞠、好きなものがあったら言って良いのよ?色々見て回ったけどほしい物あった?」
んー、確かに色々見たけど女性物はちょっと。でも、気になる店はある。それは超能力者用の店だ。
ちょっと引ける気持ちもあるが正直に伝えてみた。
「…えっと。ちょうのうりょく、みせ」
「…超能力者用のみせ?そんなのが良いの?まあ、鞠は超能力者のドキュメンタリー楽し気に見ていたものね。いいわ、いきましょう」
母は携帯を見てショッピングモールの地図を確認すると歩き始めた。
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母の後をついて行って超能力者専用ショップに着いた。
自動ドアを通り抜けて入った店内はなんとも奇妙だった。
前世では見なかった武器が壁一面にずらりと並んでいる。刀は勿論、クナイや投げナイフといったニッチな物も置いてあるようだ。
そして、一番目を引いたのが大きな台に置かれた巨大な筒状の何か。近寄って見てみると、電磁力式小型レールガンと書いてある。
レールガン。前世でも何度か聞いたことがある名前だ。その殆どがファンタジーの代物での話だが、一応現実世界でも実験はされていたらしい。あまり詳しい話は知らないが。
そんな夢の代物が両手で持てるサイズになっている。サイズ感で言えば一番近いサイズはミニガン程だろうか。
「これは、すごいわね。私はこうゆう店は数回しかきた事ないから、新鮮だわ」
母も興味津々といった感じだ。僕のことを忘れかけていて、店内を色々見回っている。
そんな母と似て、僕も今目の前にあるものに夢中になっていた。
「なんだこれは?」
そう、目の前にあるものは…灰だった。
ガラスの瓶に入っている灰。灰は銀色の色をしている。なぜ銀色なのに灰だと分かったのかと言うと商品の説明に灰と書いてあったからだ。
商品名、天使の灰と。
僕は天使の灰の説明を見る。
〈この天使の灰は天使が死んだ時に灰となった物を集めた物です。
天使の灰は超能力吸収率に優れている物で御信用として愛用される方もいます。軽くてコンパクトなので女性の方によく愛用されています。
超能力吸収率は99.8%と高く、超能力用の建材として使われています。〉
こう書かれていた。この天使の灰は僕が懸念していた課題を解決するかもしれない。と言うのもいちいちトイレットペーパーでやるのは限界があると気づいていた。それでも、限界が来るのはまだ先だとは思うが、いずれ問題に直面するなら解決法を考えておきたかった。そんな時にこの商品は魅力的すぎた。
「鞠はこれが欲しいの?」
僕が熱心に天使の灰を見ていると、母が後ろから問うてきた。
欲しい、確かにこれは欲しい。でも、値段がかなり高い。天使の灰は1gあたり30円。100も買えば3000円とかなりの値段になる。勿論高くはないが、子供がねだるには少し躊躇する値段だ。
でも、これはそれだけの価値がある。躊躇はしたものの、頼んでみるか。
「うん。ほしい。きれいだから」
一応誤魔化しの文句で綺麗といっておく。天使の灰は銀色でキラキラしているから、綺麗と言えば綺麗だ。まあ、その実態は天使の死骸なのだが。それは見なかったふりをしておく。
「いいわよ。そうね。鞠はどれくらい欲しい?」
「なるべく、たくさん」
ここで具体的な数字は出さない。それでは綺麗と誤魔化した意味がなくなる。具体的な数字を出したら何に使うのか聞かれるからだ。
「そう、分かったわ」
母は近くにいた店員に話しかけた。その声は小さくてあまり聞こえなかったが、店員は店の裏側に行った。
数分待っていると、さっきの店員が戻ってきた。その手には袋を持っていた。
「ママいくら頼んだの?」
「1000gよ」
1000、千、1k。え?マジ?だって、1キロって3万円もするんだよ。あまりにも奮発しすぎじゃない?だってうちの家計って厳しくなかったっけ?どっからそんなお金が出てきたの?
「じゃあ、お会計しちゃいましょうか」
母は、会計しに行った。この世界の会計方法は簡単で携帯を軽くスキャナーにかざすだけだ。それだけで会計ができてしまう。レシートなどはなく、データはすべて端末に保管されるのだ。
「鞠、他に欲しいものは無い?遠慮せず言っていいのよ」
まじで、どこからそんなお金が湧いて出ているのだろうか。
でも、何かあったのだろうな。母に陰鬱とした雰囲気を感じないから、悪いことではないのだろうけど。ちょっと騙されていないか不安だ。
でも、欲しいものか。別にないんだよな。昔からコレと言って何かをコレクションしていた訳じゃない。仕事三昧でミニマリストの様な部屋だったぐらいだ。
だから、欲しいものがあるか、と聞かれると分からないとしか言いようがない。本当に何もないのだ。
「ううん」
「そう?遠慮してない?」
「してない」
「そう。じゃあ、この辺を少し見てから帰りましょうか」
一通りB16番区を見て周ると僕たちは家に帰った。
もし、この作品を気に入ってくれたら「いいね!」や「ポイント」を入れてもらえると非常に嬉しいのでお願いします。
楽しんで読んでもらえれば嬉しいです。自分でも見返しているのですが誤字脱字があれば報告してくれるとありがたいです。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。




