表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半対の天使  作者: 薙叢雲剣
第一章 転生
3/51

第三話 超能力



 生まれてから1年半が経った。

 生まれてから転生以外大した事は起きなかった。そう、今日までは。

 朝、いつも通りの時間に起きた。最近やっとできるようになった二足歩行で寝室からダイニングへと向かった。


「あら、鞠おはよう」


 母が今生の僕の名前を呼ぶ。

 毎度、毎度思うのだが、鞠と言う名前を呼ばれるたびに何とも言えない気持ちになる。

 いやね?不満ではないんだけども、女の子っぽい名前は違和感があるといいますか。ね?分かるでしょ。

 でも、今世の母親はシングルマザーで僕を育ててくれている。文句など言えるはずもなかった。


「おはぁよ」

「はい、おはよう。さあ、ごはん出来ているから食べましょうね」


 一人では登れない椅子に母が脇を持って座らしてくれる。しっかり座ったのを確認すると母も席に着き食べ始めた。

 僕もつたないながらにスプーンを持って食べ始める。

 そして、異変が起きたのはこの時だった。

 いつも通りに食べていた食事の最中、突然雷に打たれたかの様な衝撃が全身を駆け巡ったのだ。

 あまりの突然の事にスプーンを落としてしまった。


「ちょっと、なにやっているの」


 それを見かねて母がスプーンを拾ってくれる。幸いスプーンは机の上だったが為に掃除は簡単だったが、僕はそんなどころでは無かった。

 感覚。そう、感覚が一秒前までとはまるで違う。そう実感できるほどに何かが変わったのが分かった。

 スプーンをお皿に戻しても一向に食べようとしない俺を見て母は疑問に思ったのか何か話しかけてきた。

 でも、そんな事を聞ける状況では無かった。

 まるで、世界が広がったかの様な感覚と何でも出来てしまいそうな全能感。そして、全てを壊せそうなエネルギーが全身を駆け巡っている。

 

「ま、鞠?大丈夫?」

「っ、(コクコク」


 頷いて大丈夫な事を伝える。

 一体何だったのだろう。確かに何かが変わった感覚はあるが、何が変わったのかはハッキリとは分からない。

 疑問に思いながらもご飯を食べきる。

 母は食卓の掃除と食器を洗う。朝の時間があまりない母はすぐに片付けると軽いメイクをして仕事の支度を終わらせた。


「じゃあ、鞠行ってくるね。いい子にしているのよ」


 母はぎゅっとハグしてくる。その温かみにハグをし返した。

 母は最後に軽く手を振るとドアを閉めて仕事に向かった。

 さて、これからは僕だけの時間だ。いつもなら暇つぶしにテレビや本を読むのだけど今日はそういう状況ではない。

 今なお続いている不思議な感覚。それが何なのかを知りたいのだ。


「と、言ってもだいたいの目安はついているんだけどね」


 確かに初めて味わう感覚だが、知識としてなら知っていた。


「これが超能力か」


 あたらしく第六感の新たな感知器官が生まれる。そして不思議と自分が何の能力を得たのかが分かる。

 俺は周りを見渡す。何か実験で使えそうな物を探した。

 何か消耗品で実験のできるものが…


「ティッシュ」


 目についたのは少し高めに置いてあるティッシュ箱だった。

 でも、一歳児の身長からしたら少し高い。頑張って届くかどうかといった所だ。

 トコトコと歩いてティッシュ箱の下までやってきた。そして精一杯背伸びしてみるがあと一歩のところで届かない。


「だめか」


 なにか土台になりそうな物を探す。だが、家中探し回ったが土台になりそうなものは無かった。

 土台の事は諦めてトイレに向かった。たくさん歩いたことで尿がたまったのだ。

 トイレに着き便座を上げる。体全体を使って上ると、座る。ずっと歩いていたからか、座ると一息付けた。

 じょぉーと尿を出す。ついでだ、大の方もした。お尻を吹くためにトイレットペーパーに手を伸ばしてお尻を拭く。しっかり拭き終わるのを確認したら、手を伸ばしてトイレを流した。


「…そうじゃん!トイレットペーパーでいいじゃん!」


 もともとは消耗品で実験したかったから、ティッシュが欲しいと思ったのだ。で、あるならばトイレットペーパーで十分なはずだ。

 俺はトイレットペーパーを複数千切ってダイニングへ持って行った。

 さて、ここからは実験タイムだ。

 まず、最初に千切ってあったトイレットペーパーを一枚手に持つ。生まれた頃から在ったと思えるほどに何をすればいいのかが分かる。その感覚に従うままに超能力を発動させた。

 超能力を使った瞬間、手に持っていたトイレットペーパーが崩れ落ちた。パラパラと砂になって落ちていくトイレットペーパーを見て思ったのだ。


「なんじゃこの能力は」


 ちょっと思っていたのと違う。何かを壊す能力なのは何となく分かっていたが、砂になるほどまでに壊せる能力だとは思っても居なかった。

 まあ、さして変わらない事だし気にするほどの事ではない。

 すぐに切り替えるとまだまだたくさんあるトイレットペーパーを手に取った。

 そして超能力を使う。するとトイレットペーパーが崩れて砂になった。超能力を使う。トイレットペーパーが砂になった。それを何回も繰り返した。

 そしてちょうど10回目の時、異変が現れた。

 10回目を使った時、体がふらついたのだ。


「え?」


 慌てて手をついて体制を立て直す。そして頭痛のような痛みが頭を襲う。かなりの頭痛で立っていられず座り込んでしまった。

 座っていてもなお辛い頭痛に頭を抱えて寝転ぶ。そしてただ、耐える事しかできない時間が数十分ほど続いた。

 荒くなった呼吸が自分の体の中を反響して、大きく聞こえる。やっと、頭痛が収まった時には全身汗だくになっていた。

 あまりの汗によって脱水症状気味になった体は水を求めて水筒に手を伸ばす。ぐびぐび水筒の中身を飲み干した。

 水を飲んだことで少し落ち着いた僕は壁を背もたれにして座り込んだ。


「いったい何だったんだ」


 さっきの頭痛、多分だが超能力の使い過ぎによって起こされたものなのだろう。あれだけ強い痛みは再度味わいたくない。

 そしてもう一度も超能力を使えるとは思えなかった。それは痛みからの怖さではなく、感覚的にもう無理だと分かるのだ。

 ため息を一つ吐くとテレビをつける。まだ昼前の番組はニュースばかりだった。




 それからずっとテレビを見ていると玄関からドアを開ける音が聞こえた。玄関の方を見ると母が帰ってきていた。


「おかえりなさい」

「ただいま。さあ、鞠お腹減ったでしょう。今から作るからちょっと待っててね」

「うん」


 母は帰ってきてから一切休む事無く料理を作り始めた。毎日毎日、頑張っている母には感謝の感情が絶えない。

 ちなみにこの後、砂になったトイレットペーパーの残骸を見た母に怒られた。


~~~


 夜、目が醒める。

 目を開けると月明かりがカーテンの隙間から少し漏れている。その光はほのかだが、夜闇になれた目は十分な光源だった。

 横を見ると隣で寝ていた母の顔が見える。なるべく気づかれないようにゴソゴソと布団から抜け出した。母の枕元に置いてあった携帯を手に取ると、忍び足で部屋から出る。

 なるべく気づかれたくないから電気を点けることなくダイニングの隅に腰を下ろした。

 携帯の電源を入れると素早くパスワードを入力する。そして超能力について調べ始めた。

 家にはパソコンが無い。故に唯一の情報源がテレビと母の携帯だけになってしまう。それも、テレビは受動てきであり、能動的に情報を知りたい時には適さない。故に今、母の携帯を盗んでいるのだ。

 それから急ぐ気持ちといつ母が起きてくるのか分からないスリルにハラハラドキドキしながら情報を集めた。

 それから、30分ほどである程度は分かった。

 まず、知りたかった情報は2つある。

 一つ目が自分の超能力についてだ。昔テレビで超能力の分類法を見た。正確には覚えていなかったが、超能力も体系化されていていたのを覚えている。自分がどの分類に居るのかを知っておきたい。

 二つ目は頭痛の正体についてだ。万が一危ない物だったら母に相談しないといけない。そもそも論、母には超能力に関して話しておいた方が良いのかもしれないが、そうすると、自分に知性があることがバレてしまう。それとなくいってもいいが、毎日忙しい母にこれ以上の負担を掛けたくない。

 まず、一つ目なのだが、これは調べ上げるまでにかなりの時間を要した。と、言うよりかは9割方この情報の情報収集に使った。そして、…分からなかった。そう、載ってなかったのだ。

 まじで時間の無駄としか言いようが無かった。

 二つ目の情報は調べたら直ぐに出てきた。検索欄の一番上のサイトにアクセスすれば情報が乗っていた。

 結論から言おう。この頭痛は大丈夫な物だった。この頭痛の正体なのだが、これは成長頭痛と言われるものらしい。本来は超能力型突発性頭痛と言う長ったらしい名前があるのだが、長いため成長頭痛と言われている。

 成長頭痛は超能力を限界まで使うと起こる現象の一つらしい。人によってはめまいや吐き気と言った症状を起こす人間もいる。成長頭痛は体の限界を知らせるためのサインだ。本来は体のサインなのだが、それに付随して超能力が伸びるのだ。それ故に成長頭痛と言われている。

 これが調べられた全部だ。これで、母に無駄な心配を掛けずに済んだ。

 僕は携帯の検索履歴をすべて消すと電源を落として布団に戻った。

 天井を見上げる。徐々に暗闇に慣れていく目は少しずつ見えるようになっていった。

 僕は今回の人生死んでいない、生きている人生を歩みたい。そのために努力は欠かさないと決めている。決して努力が結ばれるわけでは無いが、その努力が無駄になる事が無い事を前世の経験上知っている。

 俺は覚悟を決めると目を閉じた。


「でも、成長頭痛はもう味わいたくないな」


 覚悟を決めたとは言え痛いのは嫌なのだ。

 こうして、超能力が目醒めた日は過ぎていった。

 



もし、この作品を気に入ってくれたら「いいね!」や「ポイント」を入れてもらえると非常に嬉しいのでお願いします。


楽しんで読んでもらえれば嬉しいです。自分でも見返しているのですが誤字脱字があれば報告してくれるとありがたいです。


※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
一人称は僕なのか私なのか曖昧
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ