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半対の天使  作者: 薙叢雲剣
第一章 転生
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第三十一話 正剛少将からの贈り物



 レイと誠人に振り回されて、女子にトラウマを負ったあの日から一週間後、家にある物が届いた。

 ダンボールに書いてある差出人は正剛正義と書いてあった。


「あら、正剛さんからの贈り物ね。宛先人は鞠だわ」


 母が受け取って僕に渡してくる。ダンボールの大きさはかなりある。母は軽そうに持っているが、母の超能力でそう見えるだけかもしれない。

 その推論は当たっていて、母が僕の目の前にダンボールを置くと、ドンと重い音がした。


「何が入ってるのかしら?結構重かったわよ」


 母がカッターを持ってきてダンボールを開ける。

 僕への贈り物だが、子供には刃物を持たせない母の意向でこう言う物は母が空けている。

 

「はい、空いたわよ」


 ダンボールを開けると、中身を見ずに母が渡してくる。

 こういった端々に母の人間性が分かる。本当にこの人の子供として生まれてこれてよかった。

 ちょっと背伸びをしてダンボールを開けると、中には何着もの和服が入っていた。

 一つ手に持ってみると分かる。これがそこらの和服では無い事に。

 値段表なんかはついていないが、僕にはEgGNeuRonがある。恐る恐る検索をかけてみると…。


「ご、ごひゃくまん」


 驚きのお値段。一着500万円。それも、オーダーメイドだ。そんな服が一着、二着、三ちゃく、よんちゃく、、、ごちゃくある。計2500万円。その値段がくしくも母が株でも儲かった額と類似しているのが笑えるようで笑えない。


「あら、かわいい服じゃない」


 母は値段の事なんて知らないので気軽に服を見る。母も正剛少将が送ってきたものだから高い服だとは分かっているが、2500万だとは思ってもいないだろう。

 だから伝えることにした。


「ママ、その服一着500万だよ」

「へぇ?」


 スルッと母の手から服が零れ落ちる。慌てて僕がキャッチするが、母はそれどころでは無い様で呆然としていた。


「まって、これ500万もするの?!ってことは1、2、3、4、5…2500万円。って私の株と同じじゃない」


 母も同じ事に気づいた。反応も同じだし親子だな。 

 未だ呆然としている母だが、今聞いた事を忘れることにしたらしい。


「まあ、いいわ!私もまた200万儲かったし」


 え?また儲かったの?どうやら母には株の才能があるのかもしれない。


「さあ、鞠これ着てみてよ」


 …まって、これの流れ何回か経験したことがあるぞ。この着てみてよ、の後は絶対に着せ替え人形になる未来が経験上分かる気がする。

 そして予想通りに着せ替え人形になるのだった。


~~~


 母から解放された僕は珍しくB番区に1人で来ていた。

 理由は母への恩返しをしたいと思ったからだ。

 先日僕に多大なお金が入ってきた。それは不正な金では無く、前に受けた軍の依頼のお金だ。振り込まれるまでに半年かかったが、やっと振り込まれたのだ。

 僕の初任給と言う事で母への恩返しを考えたのだ。少し早い気もするが、恩返しに速いも遅いもない。…いや、あるか。流石に遅すぎるのは良くないな。恩返しに速いは無いのだ。


「でも、母に何を買おっかな?」


 ショッピングモールを歩いていても何が良いのか分からない。前世では女性に物を買ったり送ったりしたことが無かった。せいぜいが後輩の女性にご飯を奢る事ぐらいだ。そんな僕に母親へのプレゼントは難しい。

 見ていたら思いつくかなと思っていたが、ここは助言をもらう事にした。

 まずは安定の正剛少将に聞いてみる。


〈正剛少将少し失礼します。和服が届きました。ありがとうございます。今母親への恩返しプレゼントを探しているのですが、思いつかないのです。いい考えとかありますか?〉


 そう送るとすぐに返事が来た。


〈母への恩返しプレゼントか?ちょっと早すぎるのではないか?自分の好きな物を買って良いのだぞ〉

〈いえ、自分の欲しい物を買ったとしても6900万円も使い切る事なんて出来ませんよ〉


 前の依頼の報酬は6900万円と目玉が飛び出る金額だった。

 正直、若い時にこんな大金を手にしてしまったら金銭感覚が吹き飛ぶ。だって100万円の自動車が69個も買えちゃうんだよ。EgGNeuRonでも27.6個も買える。ちょっと想像できない。

 急に大金を持ってしまった僕はどうすれば良いのか悩んだ。そして一つ決めた。1000万円までは自分の好きなように使おう、と。残りのお金は未来の為に残しておくことにした。

 そして1000万円の使い道を考えた。まず最初に思いついたのが母への恩返しプレゼントだった。


〈そうか。ならば参考になるかは分からないが、我の話をしよう。我の時は車を送った〉


 おっと、いきなり参考にならないのが来た。みんなも考えてみてほしい。子供が急に車をプレゼントしてくるのだ。正直どう反応のすればいいのか分からない。


〈もうっちょっと普通なのはありませんかね?〉

〈普通か。それならば服とかはどうだ?〉


 服か。確かに良いのだが僕にそんなセンスは無い。まあ、店員に選んでもらえばいいか。


〈服ですか。いいですね。それで行こうと思います。お時間をいただいてありがとうございます〉

〈そうか。参考になったなら幸いだ〉


 よし!決まった。せっかくならば高い服を買おう。だって1000万もあるからな。

 僕は180度回転すると駅の方に向かい出した。高い服と言えば12番区が良いだろう。


~~~


 電車を一回乗り換えて12番区へ来た。さっきまでいた15番区とは違い、歩く人々の服装が質のいい物になっている。一目見るアクセサリーも全部高そうだ。一応EgGNeuRonで検索もできるのだが、やめておいた。値段を見るだけでSAN値が削られそうだ。


「さて、どの服屋が良いかな?」


 何も情報が無い僕は、EgGNeuRonで調べることにした。3秒と掛からずに12番区にあるいい店を2つほど見つけた。

 一つ目の店は11番区寄りの超高級店だ。すべてがオーダーメイドで、最低価格が3000万からだ。ちょっと意味が分からない。

 二つ目の店が、ここからも近い店だ。高級店ではあるが、最低価格が100万円からとお値打ちだ。…僕の金銭感覚は早くも狂い始めている気がする。

 まあ、母のプレゼントと言う事で金銭感覚の事は忘れることにした。

 案外駅から近くに在って子供の足でもすぐについた。

 僕の身長では取っては使えないので下の方を押して店内に入った。

 カランカランと鈴の音が店内に響き渡る。その音を聞きつけて店員さんが来るが…。


「あら、かわいい子ね。迷子なのかしら」


 僕の事を迷子だと思ったらしい。まあそれも仕方ないのだけれども、一人悩んでいる店員の思考を僕はぶった切った。


「服を買いに来た」

「あら?そうなの?親御さんは?」


 どうやら親御さんの連れ添いのもと来ているのだと思ったようだ。親らしき人を探している。


「僕一人で来た」

「あら。ごめんなさいね」


 店員は子供の客の相手もしたことがあるのか、子供相手でも丁寧に接客を始めた。


「それじゃあ、今日どんなものを買いに来たのかしら」


 丁寧な接客とはいっても言葉使いは子供に対するものだ。

 それが不快に感じる子供もいるのかもしれないが、僕は全く気にせずに要件を伝えた。


「母へのプレゼントが欲しい」

「写真はあるかしら」


 もちろんの事ながら、母の写真はかなりの枚数ある。最近とった一枚の画像を選択したが、そこで僕は困ってしまった。そう、伝える手段が無いのだ。EgGNeuRonは、外部に出力するには他の機器を通さないといけない。しかしながら僕にはその外部機器が無いのだ。どうやって伝えようか迷っていると、良い事を思いついた。


「店員さん。スマホとかそう言う系の物ある?」

「あるけど…」


 そう言ってポケットから取り出した小型のAR機器を取り出した。僕のとは違い、外部の操作を必要とするモデルタイプだ。


「ちょっとこれ着けて起動してみて」

「分かったわ」


 素直にARを着けると起動した。僕は起動されたARの識別番号と個人識別番号を取得する。いわゆるクラッキングだ。

 これは秘密なのだが、EgGNeuRonを貰った時に遊び感覚で自分の持っていた携帯端末にクラッキングをやってみた。前提知識など無い僕はネットでリサーチングを行い情報を集めて試してみたのだ。するとどうだ。簡単にできてしまった。さすがに公的機関や会社などのセキュリティーは頑丈で突破は無理だったが、個人端末程度ならば一瞬で侵入できてしまう。

 まあ、犯罪なのだが、バレなきゃ犯罪ではないと言う言葉を借りて、こっそり行っている。

 僕は取得したパスワードでARに侵入して一枚の画像を添付した。一応付け加えておくならば、この情報を送る以外の事はしていない。


「何これすごいわ!」


 なにも操作していないのに出てきた画像に驚いている様だ。もちろんこれがクラッキングだと言う事は伝えていない。


「これでどうですか?」

「んー、そうねー。ある程度は参考になるのだけど、写真だけではぴったりの者は選べないわね。ゆったりとした服にしましょうか」


 そう提案してくるが、僕はその言葉を無視して、ある作業をしていた。脳にあるすべてのニューロンをフル活用して一つの3Dモデルを作る。もちろん母のだ。

 もともと、3次元的視覚を処理していた脳は3Dモデルと言う物に高い適性を見せていた。10秒ほどである程度の3Dモデルを作りあげる。流石に動かしたりは出来ないが、サンプルとしてはこれで十分だろう。

 僕は出来上がった3Dモデルを店員さんに送った。


「これでどうですか?」

「なにこれ!?すごいわね。今の子はこんなこともできるのね。でも、これがあるならばぴったりの服を選べるわ」


 そう言っておすすめの服を持ってきてくれた。僕も服と3Dモデルを合わせてみる。

 店員のセンスは良く、確かに似合っている。

 かわいい系からシュっとした綺麗な服まで色々持ってきてくれた。いろいろな色と形を店員と相談しながら決めた。

 なんだかんだ2時間ほど選ぶのに掛かった。僕自身買い物は直ぐに終わらせるタイプだったけど、母へのプレゼントには2時間でも3時間でも余裕だ。

 悩みに悩みぬいた僕は二つの服を選んだ。一つ目がかわいい系の服。二つ目がシュっとした服をそれぞれ一着買った。

 ウキウキで会計を終わらせると僕は両手いっぱいに紙袋を持って店を出た。

 母の反応が楽しみだ。



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