6話.勇者の旅立ち③~カインはアヴァロンの貴人と面会する~
皆様こんにちわわ(昔飼ってた)。
投稿時間については失礼いたしました。
取り敢えず、少しばかり変えてやってみます。
複数話投稿は今日で最後の予定です。
それでは、3連投稿1発め、お目汚し失礼!
翌朝、カインが目を覚ますと寝床には自分一人。
寝ぼけまなこできょろきょろしていると、何事もなかったかのように部屋に入って来る父。
「起きたか。よく眠っていたのでな、朝風呂に浸からせてもらってきた」
「おはようございます父上。気持ち良かったですか?」
「む。わざわざ多めに金を払って融通を利かせてもらったのだが、昨晩のことには文句もなしか」
両親二人がかりのいたずらをスルーされたのがつまらなかったか、カイトは少しだけ渋い顔を作ってみせる。
だがカインの方はそれを聞いて非常に渋い顔だ。
「心臓が止まるかと思うような恐ろしい経験をしたばかりの子供を放って風呂に入ってきた親がいたと小耳に挟んだもので」
「……すまん」
「いえ。母上とも話せる場をいただいたことには感謝していますから」
「そうか……」
弱った顔の父を見て、カインはふぅっと軽く息をつき、この話は終わりとばかりに尋ねる。
「父上は朝食、済ませましたか?顔を洗ったら行こうと思いますが」
「いや、まだだ。待っているから顔を洗ってくると良い。朝食を摂り終えたら、昨晩約束を取り付けた馬車に護衛として乗せてもらうことになっている」
カインは、それならそうと言ってくれれば、と苦笑しつつ、井戸に向かった。
そんなやり取りを経て、護衛として馬車に乗り込みヴォルスピアを発つ。
モントブロ南東のこの街を出て街道を進めば、アヴァロンの国境はすぐそこだ。
国境を越え、気配を捉えたカイトが先制とばかりに森に突っ込みオーガを瞬殺、カインはゴブリン相手に一対多の立ち回りの練習、などがありつつ四日ほど。
街道の先に見えてきた威容。
聖剣国家アヴァロンが誇る王都アヴァロニスタ。
近づけば、その城壁は高さ十五mほどもあるだろうか。
また、”勇者”の記憶によれば一辺の長さは三㎞もあるらしい。
『聖剣の鞘にして人類を魔族から庇い癒す鎮守の国』という自負を表すかのように、魔族領の広がる東側に城門は一㎞おきの二つ、西側には五00m間隔で五つ、取り付けられている。
ちなみに、南北は共に三つだ。
城門をくぐり、馬車の主たる商人に別れを告げると、宿を取ってから中央貴族区へ向かう。
貴族区を真っ直ぐ進み、王城城門へ。カイトはなにやら封筒を門衛に渡すと、すぐさま踵を返してまだ昼過ぎにもかかわらず宿に籠ってしまう。
用事がないなら出歩いてみたいが、と怪訝な表情のカインに気づくと緩く笑ってこう告げる。
「あの手紙を見れば無理をしてでもこちらに来る方がいてな。伝えた場所にいてやりたいのだ」
訝りつつも納得し、いつもの通り魔法で手遊びを始めるカイン。
が、すぐに戻った割に来客とやらはやって来ない。
二時間ほど経ったろうか。
なんとなく聞きづらかった来客とやらの正体を訊ねようか悩んでいると、ノックの音と男性の渋い声が響く。
「カイト様、ご在室でしょうか。お客様がいらしておりますが、お時間はおありですか」
「入ってください」
――ん?入ってください?なぜ従業員に入ってもらう必要が……?
カインが疑問を投げるより早く、カイト本人がドアを開いていた。
「おいおいカイト、この俺が従業員の真似事をして堅苦しい敬語なんか使ってやったんだぜ?わかっててもそこは騙されてくれるのが筋ってもんじゃねえのかい?」
「これは、失礼を」
入ってきたのは、金髪金眼の美丈夫だった。
二十半ばほどだろうか、長い金髪を後ろで緩くまとめた中性的な顔だちは女性に好かれそうだ。
だが、ともすれば儚げとも表現できそうな顔が乗っかっているのは、身長一九0㎝のカイトにも勝る上背かつ、カイトがレアンを背負ってやっと同等くらいの体重がありそうな筋肉塊であることが、四肢の膨らみ具合で見てとれる。
そしてこの言葉遣いと性格で、一見して非常に高級だとわかる深紅のプールポワンを、おそらくこれも詰め物ではなく自前の筋肉で膨らませて、身に纏っているのである。
アンバランスを絵に描いたような何かが、そこにあった。
「相変わらずかてえよ戻せや言葉。んでなんだ?お前“勇者”に転職したんだって?」
「……まぁ、この部屋ならば良いか。そして“勇者”は私ではない、息子のカインだ」
「息子ぉ?あれ?いつ出来た、俺祝ったっけ?おめでとう、うん。んで?そこの坊主か?」
「そうだ。カイン、ご挨拶なさい。こちらはアヴァロンの第一王子カール・シュヴェルトライヒ・アヴァロン殿下、次代の国王となられる御方だ。そして、かつて私が叩き潰した道場破りの一人だ」
高貴な人物であることは予想していたが、予想以上の人物だ。
なぜそんな人物が一人で入ってくるのか、と訝しげなカインに、第一王子の声がかかる。
「よくぞここまで辿り着いたな“勇者”よ。左様、我こそがカール・アヴァロン、道場破りにかぶれた負け犬である」
「ご尊顔拝し奉り恐悦至極にございます。今代勇者、カイン・ニドレイトにございます」
「はっはぁ。今の自己紹介に普通に挨拶返すのかよ、坊主は大物だな!よろしく頼むぜ!」
カールはガシガシとカインの頭を撫でる。
余談だが、カールの本名はカイトの紹介にあった通りカール・シュヴェルトライヒ・アヴァロン。
鎗のモントブロと対をなす武術の国、大海王国シュヴェルトライヒの王家から嫁いできた現第二王妃の子であるが、平時だろうと公式の場だろうとカール・アヴァロンを名乗ってきた。
本人いわく、「なげえからめんどい」と。
シュヴェルトライヒの看板を背負って嫁いだ第二王妃は「遠国の血だからと嫌がらせでもされて名乗りたがらないのだろうか」と頭を悩ませているらしいが。
「そんで?鎗バカんとこじゃ剣は伸びないからうちに来たって感じか?」
「その鎗バカに勝てない筋肉バカに言われるのは釈然としないが、まぁそうだ。聖剣を抜いて“勇者”認定を受けたら騎士団の小姓あたりからと考えて連れて来たが……」
「どうしたよ?」
煮え切らない発言のカイトに、カールの追求がかかる。
「道中なにやら考え込むことが多くてな。恐らく抜け出す」
「は?五歳児が?一人でか?なんでまた。坊主、答えな。以後直答を許すぜ」
「強さを求めてです、殿下」
「やー……。坊主まだ五歳っしょ?意味わかって言ってる?」
「はい。伝手を辿ってくれた父上や、いらしてくださった殿下には申し訳ないことですが。小姓では鍛錬出来る時間も減りますし。魔物も倒せてお金もかからない野外生活をしようかと」
ガシガシと自分の頭を掻いてから、目をカイトに向け直すカール。
「カイト、坊主こんな事言ってっけど、実力は?」
「カイン、鑑定符をお見せしても構わないか?」
「ええ、聖剣に触れるなら鑑定は受けることになるでしょうし。こちらになります」
カインは鑑定符を差し出す。
「……は?ステータスH抜けてんの?カイトお前五歳児にこれ虐待だぞ?」
「そこはもう驚いた」
「え、じゃあ何このスキルの数。お前監禁教育でもやらかした?」
「そこももう驚いた」
「つーかマジで鎗バカの子が勇者なんだな……。それが一番驚いたぜ」
「そこは当然納得した」
「は?」
「は?」
過る、沈黙。
破ったのはカールだった。
「……。まぁ、取り敢えず近場の森なら良いんじゃねぇか?ホブゴブリンやグリズリー、Fレートすら十年あってもお目にかかれるかどうかの場所だ。とはいえまぁ、生活力があるならだがな。大丈夫だと判断したら、俺の名前で許可してやんよ。周りは黙らせてやる」
「そこは大丈夫だろう。なにせカインは歴代“勇者”の旅の知識を持っている。一度実践してみればすぐ出来るようになるだろう」
「は?なにそれ?歴代“勇者”?」
「先天性スキルだ、得た知識は細大漏らさず忘れないらしい」
「はー、羨ましいなそりゃ。坊主、“魔王”倒したら俺の娘と結婚して城に来いよ。嫁のナターシャに似てっから美人になるぜ?」
「私などには勿体ないお話ですよ」
即答するカインに、少しばかり鼻白むカール。
「まぁ、なんにせよ全ては“勇者”認定が出てからだがな。取り敢えず修行方法について許可は出ると思って良い。俺が出すからな。だが、俺も命が惜しくねえわけじゃねえんだ。いくつか条件は飲んでもらうぜ?」
「条件は……聞いてからとしか言えませんが。それより、殿下のお命にかかわることが?」
唐突に出てきた穏やかでない単語に本気で首を傾げるカインだが、カールは不満げな顔だ。
「いやいや。とぼけんなよこえぇよ。坊主の母ちゃん『紅鎗』だろ?手紙で釘どころか鎗刺してきやがったじゃねえか」
「あー……申し訳ございません?」
「なんだ知らなかったのか?鎗バカが寄越したあいつからの手紙見るか?酷いもんだぜ」
差し出された高級そうな羊皮紙には見慣れた母の筆跡。
そして母が綴るには見慣れぬ文言がたったの三行。
『
カインに何かあってみろ
根絶やしにしてやる
『紅鎗』レアン・ニドレイト
』
「父上?誰がこんな物騒な脅迫状を手紙に紛れ込ませたんです?」
「カインよ。目を逸らすな。母上の字であろう」
カイトの冷静なツッコミに、カールも頷いている。
「まぁ、そういうこった。あいつの傭兵時代は俺も知ってる。あいつのこえぇところは、敵陣丸ごと潰す殲滅力よりも絶対に敵陣に届いて暴れだす隠密・突破能力だ。気づかれねぇし、気づけたところで声も出せずにみんな死ぬ。隠し通路やなんやで無駄に構造が複雑な王城なんざ、むしろあいつに味方しちまうからなぁ。城も民も見捨てらんねぇ王族じゃ勝ち目ねぇよ」
「……殿下。“勇者”って必要だと思われます?」
「いやぁ俺は“魔王”に“魔王”が勝っても安眠できねぇからなぁ」
カラカラと笑うカール。
なるほど、汚名悪名のこびりついていない清廉な名前として必要なわけか、とカインは納得する。
「ま、明日にでもちゃちゃっと認められにいこうぜ。お前さんも早く戦い始めたいんだろ?」
なんともまぁ、血腥い話の後でも屈託なく笑う御方だ、と、両親やその弟子たち以外で初めてまともに対話した人になるこの貴人に、カインは好感を覚えていた。
この翌日、カインは公式に“勇者”として認められることになる。
というわけで、後に処刑劇場の相棒となるカールの登場回でした。
魔族との最前線ですからね、アヴァロンの貴人男性はプールポワンに詰め物でハリボテでも図体大きく見せる文化です。カールには要らないですけど。多分「詰め物うぜえ!面倒くせえ!」で筋肉膨らませたんじゃないでしょうか。
次は14時に。




