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私勇者さん、今冤罪で断頭台にいるの~打ち切り改稿します~  作者:
一章:当代勇者カインの十九年
6/15

5話.勇者の旅立ち②~カインの母は強い~

本日最後の投稿となります。

カインくんの実戦チュートリアルと、最恐との邂逅。

お読みいただければ幸いです。

翌日の昼頃、予定通り麓に差し掛かった二人は、予定通りに魔物の群れの襲撃を受けていた。


ストレイドッグ、野犬呼ばわりされる眼を血走らせた真っ黒な大型犬のような魔物が七匹。

戦闘能力は普通の狼と同程度で、魔物に分類されてはいるものの、羆や虎の方がよっぽど危険だ。



この世界の生き物は、四つに大別される。

一つは、魔なし。

他の三つと違い自力で魔力を保有生成できない生き物で、一般の動植物や微生物などがここに区分されており、いわば「その他」扱いされることも多い。


一つは人類。

ヒト、エルフ、ドワーフや獣人など異世界“勇者”の記憶にあった「異世界もの」で人扱いされる定番だ。

適職称号を有する者でもある。


一つは魔族。

人類と同じく真央大陸言語、通称大陸語を操るものの、適職を持たない者。

適職を持たない代わりに種族固有のスキルを持ち、形態は人型から獣、異形と幅広い。

心臓の代わりに、球形の核を有する。


最後の一つが魔物だ。

大陸語を話せず称号も持たないものである。

形態的な特徴がなく核を有する点が魔族と共通しており、しかし死ぬと核が結晶化して丸みを失い、魔石と呼ばれる角ばった石に変わる点で魔族と異なる。

しかしながら、魔石化するのは死後であることから人類に言わせると「どっちも殺しておけば安全だろ」が一般的見解である。



さておき、カインにとっては組打ち稽古と違う初めての命のやり取りだ。

カインを隠すようにカイトは群れの前に立ち、我が子に声を掛ける。


「カイン。実際に対面してみてどうだ、何匹いける?」

「どうでしょう。剣だけならば二匹が精一杯かと」


ストレイドッグは二人を囲むべく散開し始めた。

カイトの後ろにいたカインは、背中合わせになるよう振り返る。


「ふむ。冷静だな。それでいくか、どうせ簡単に殺せそうなお前に数が偏る。一方を少数で足止めしている間に、一気に弱そうなもう一方を片付けるつもりということだが………分断されてもいないこちらが位置を入れ替える程度のことすら頭にない連中だ。合図をしたら右手側から入れ替わるぞ」

「はい」



高鳴る鼓動を数えること数回、機が満ちる。


「行けッ!」

「「ガァッ!」」


カイトの声が響いた瞬間、カイン側にいた四匹のうち二匹が飛びかかってきた。

が、そちらには目もくれずカインは身体を入れ替え、一瞬で三匹を視界に捉える。


一匹、合図の咆哮とともに叩きつけられた父の闘気で身が竦んでいる。

もう一匹、これも同様。

最後の一匹、カインとカイト、両方を狙える位置に陣取っていたはずの一人称匹は、右目から血や髄液、肉片など垂らして倒れている。

すでに死んでいるらしい。


心の中で苦笑しつつ、一気に距離を詰めて固まってしまった一匹の脳天をたたき割る。


「ガゥッ!」


仲間の死にようやく動けるようになった二匹目が飛びかかってきた。

一歩踏み出して小さな身体を更に低く沈め、交差の瞬間に斬り上げる。


「ヒャインッ!」


腹を斜めに斬られ、悲痛な声を上げて落下したストレイドッグに止めを刺して視線を移せば、カイトは既に残る四匹を片付け、穂先の血すら拭い終えてこちらを眺めていた。


「悪くない。が、この先もアベルと共にと言った以上、身体の竦んだ獣など骨ごとかち割るものではない。視覚に頼る手合いは目を潰してやればその場でバタつくか縮こまるしかないただの的だ。心胆を鍛えることを第一とせよ」


見れば、四匹全て先の一匹と同じく右目を突かれて死んでいる。

近寄ってみても、それ以外に打撲傷も刺切創も見当たらない。

五匹全て、右目から脳髄を貫く一撃のみで殺している。


「これが白鎗流の師範、ですか。肝に銘じます」


カインとて、自覚はしていた。

“博覧強記”を持つ自分が最もよく知るのは、当然ながら人生全ての記憶を聖剣に蓄積させてきた歴代“勇者”たちの鍛錬と戦闘。

ひたすらステータスを伸ばして剣と魔法でごり押しする剛の力。

稽古でこそ、かつての“剣聖”のような研鑽の極致に思いを馳せつつ剣を振っていられたが、初めての実戦に浮足立ってつい力任せになってしまった。


――アヴァロンで父と別れたら、抜け出してサバイバルですかね。




その後も、数回の戦闘を経て下山し、鑑定符を発行してもらったヴォルスピアの街に到着した。

宿で夕食を食べ終えた頃、カイトが徐に告げる。


「私は少し所用で出てくる。お前は大浴場で湯に浸かって、早めに休め」

「わかりました。お先にお湯をいただいてきます」



初代”勇者”がどうしても、と導入したという風呂からあがり、自室に戻る。


鍵を開けて扉を少し押した瞬間、漂ってきた臭いはなにやら最近嗅いだような、ただ記憶で知っているだけのような。



――古戦……場?


思い至ると同時にドアノブから手を放し、横に跳ぶ。



――キィッ……


ほぼ開いていなかった扉が引かれ、軋む。


呼吸が浅い。

早鐘のような鼓動が、集中を妨げる。



ずるり、と。

赤黒く細長い何かが姿を現す。

刹那、理解する。

臭いの元凶はこれだ。

戦場まる一つに引けを取らない数の命を啜ったことが容易に想像できる、こびりつく血肉で着飾った魔鎗。


――主戦派の魔族!?“勇者“の存在がばれたとでも!?

愛剣アベルは部屋の中だ。カインは瞬時に魔力を練り、右手に光を作り出して圧縮する。





「あら?カイン?お風呂から戻ってきたのではないのですか?カインをびっくりさせようと父上と入れ替わって飛んできたのに、母は待ちくたびれてしまいましたよ?」


「…………はは?」


乾いた笑いとも確認ともつかない声が、カインの口から漏れ出た。

右手に集めていた光も霧散する。


「そうですよ、貴方の母レアンですよ。聞きましたよ?鑑定結果、誤魔化してたんですってねぇ?」


これまでの五年間が、カインの頭の中を凄まじい速さで駆け抜ける。

そのほぼ最後尾、それはあった。



『二度とするな。私から言うのは、それだけだ。』

『私から言うのは、それだけだ。』

『私から言うのは』



「ごめんなさい」


カインは持てる知識の中から最も強く謝罪の意思が込められた姿勢を瞬時に選び、形にした。


「カイン?謝る時は、ちゃんと相手の目を見て謝りなさい?謝る方が座っているなんて、失礼ですよ?」



……。

伝わらなかった。

カインは焦燥のあまり失念していた。

カインの知識にある最上級の謝罪である『土下座』は、“勇者”たちがいた異世界の文化だった。


「すみません、焦ってしまいました。“勇者”の世界の風習は伝わってないのですね」

「“勇者”の世界?それがですか?」

「ドゲザというらしいです。靴で歩くような場所に額をつけるのも構わないくらい、という意思表示じゃないでしょうか」


その答えに、レアンは溜息を一つ。


「そんな意思が感じられないくらいあっけらかんと喋りますね貴方は。まぁ良いですが。早く部屋にお入りなさいな」

「それよりもなんですかその物騒な鎗。魔鎗ですか?」

「これは傭兵時代に使っていた白くなくなってしまった元白鎗ですよ。六代目です」


予想以上に凄惨だったらしい母の傭兵時代に、啞然としてカインは尋ねる。


「何年やったら六本も魔鎗量産するんですか」

「五年ないくらいでしたか……一応言っておきますが、これは使っていたら落としきれなくなっただけの鈍らですよ。なんの力もありません」

「母上がいるなら“勇者”要らなくないですか?ちょっと東の方まで旅してきてくれません?」


あまりにも明け透けな言いように、再度レアンの口からこぼれる溜息。


「カイン……隠し事を打ち明けてから随分変わりましたね……」

「えぇ、まぁ。そちらの方が気が楽というか、旅立つ前に壁のない思い出が欲しかったというか」

「その割に、母には何も言わずに行こうとしたのですか。そうですか。この先には『紅鎗』が出ないと良いですね」

「……意味も伝わったことですし、もう一回ドゲザしておいた方が良いですか?」

「不要です。貴方への罰は、母の腕の中で眠ることですよ。色々聞かせなさいな」


カインは、『自分で罰だと言ってしまうんですか』と苦笑しつつ、部屋に入る。

家を出る時にあまりにあっさりと見送られたこともあって、なんだかんだ母ともこうして話せるのは嬉しかった。

二人は心ゆくまでヴォルスピアの夜を語り明かすのだった。



母は強し(物理)。

レアンとしては、「カインに危険のないところで恐怖を知っておいて欲しい」という恐ろしく、深い愛情(「おそろしく深い」ではない)から出た行動です。

旅先の宿でこんなん出てきたら嘴は多分心停止しますが。


悪戯好きで強くて美人なママさん、といえば物語のキャラとしては好きですけどレアンは大分やべえ奴ですね。

明日は日曜ですし昼頃にでも。……すみません、少し練ってみようかと思うので、夜更新としますorz

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― 新着の感想 ―
[良い点] 粗削りですが、文章のクオリティはかなり高いです。 『必要な情報を必要なだけ』 『場面のつながりを意識して飛び飛びにならないように』 これを意識するともう少し読みやすい文章になるんじゃないか…
2020/10/11 01:26 退会済み
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