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私勇者さん、今冤罪で断頭台にいるの~打ち切り改稿します~  作者:
一章:当代勇者カインの十九年
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4話.勇者の旅立ち①~カインは博覧強記を語る~

本日2話目の投稿です。

アヴァロン王都へ旅立つカイト・カイン父子の会話回。

旬日の後、アヴァロンにいるカイトの知己から『受け入れる用意は整えた』と通達があり、父子は旅装を身に纏った。

意外にも、レアンはすんなり見送ってくれた。


誕生日のあの日あの後のことは、カインは一生思い出さないと心に決めていた。

そして、溜め込むだけで消す機能を持たない“博覧強記”のスキルを生まれて初めて呪いもしたのだが。

それでも、アベルと名付けたあの剣を振っていれば、恥辱も懊悩(おうのう)も切り払われるような爽快感がどこまでも心地良い。


たまに、父が打ち合ってくれた。

当然、手も足も出ない。


だが実は、打ち合うたびにカイトの方は内心で目を見張っていた。


身体も技術も当然未熟。

だが拙い動きがゆえに浮き彫りになる狙いには、長じれば必ず実現されるだろう確かな理があった。



初めて自分の足で険峻な白鎗の山を降りているカイン。

近づく凶悪な魔物を屠りつつも感慨深げに彼を見守りながら、ふとそんな驚きを思い出したカイトは、少し切り込んでみることにした。


「カイン、そういえばその剣に名前をつけていたな。何か由来があるのか?」

「え、ええ。いつだったか、カインとアベルというきょうだいのいつわをみみにしまして」

「ふむ。知らぬ名だが……仲の良い兄弟だったのか?」

「いえ。おとうとをねたんだカインがころしてしまったそうです」


予想していなかった答えに、カイトは目を丸くする。


「………………剣に不満でもあったか?」

「いえ。おなじあいては二かいころせません。わたしがカインでこのけんがアベルなら、もう二どとアベルをしなせることのできないわたしはおることもないでしょうから」


「む。東方魔族領のどこかには敢えて悪い名前をつけることで邪気の全てを名前に押し込めてしまう、という風習もあると聞くが。似たようなものか」



実際には、カインは「誕生日の恥を塗りつぶしたい」と思ってつけた結果、見事に黒歴史の上塗りをしただけであったが。


「ふむ。しかし……」

「ちちうえ?なにか?」

「いや。その逸話とやらも考え方も、剣技も魔法も。ずっと私か母上の目の届く所にいたお前がどこで見聞きしたのかと思ってな。まぁ、“勇者”だから、もしくは“博覧強記”のおかげ、で納得すべきか。……なるほど両方か」


カイトは一流の武人であり、当然ながら勘にも観察力にも長けている。

喋りつつ、カインの反応で察してしまったらしい。

カインは少し悩んだが、打ち明けることに決めた。

危惧もあったが、もとより両親は全幅の信頼をおける強者だ。



「ええ。私は歴代“勇者”の人生を記憶しています」


もはや、子供特有の舌足らずな発声もやめた。

カイトは苦笑交じりに応える。


「ふむ。誤魔化しても良かったのだがな。それは、“勇者”だから、というわけか?」

「いえ。父上の推察通り両方ですよ。“勇者”はこの世界の外気に触れた瞬間、大気中の魔素を介して聖剣とつながりが出来るようです。この時、聖剣に蓄積された歴代“勇者”の記憶が一気に流れ込み、その後は逆に聖剣に当代“勇者”の人生がゆるやかに溜まっていくらしいのです。ただ普通は膨大な情報が流れ込んだ幼児の脳は、自己防衛のために記憶形成を放棄し意識を手放すため、朧気にしか残らず、それも成長とともに消えてしまうそうですが」


啞然としながらも、カイトは我が子に問うた。


「……“博覧強記”の容量は歴代“勇者”七人の人生を抱え込めるほどのものだと?」

「そうなります。歴代“勇者”パーティの使う魔法、武技も、戦った魔族の技術も、“博覧強記”を通して魔力の流れや武器の握りなど細かなものまで何度でも検討出来ます。そして、この世界にない知識への思索も」


そう。これが、“勇者”が“博覧強記”を持つことで得られる、圧倒的な強み。

歴代“勇者”がいかに成長したか、歴代最高峰の戦いがどんなものであったか、この世界にない知識にどんなものがあるか。


そして明かしていないが、聖剣の由来と役目も。

狭い世界しかなかった赤子の頃から、いつでもいくらでも見て楽しめた。



「この世界にない?」

「ええ。どうやら、四代目までの“勇者”はこの世界の住人ではなかったそうです。ただ、何かがあってもう彼らの世界から“勇者”には来てもらえなくなったそうですが。私はそんな別の世界に生きていた彼らの人生も記憶している、ということです」


その何かを、聖剣とつながったカインは実は知っていたのだが。

人類領の醜聞でしかないそれを、父には語りたくなかった。



「ふむ。かつての“勇者”ならば魔族領の風習に触れたこともある、か。剣技も魔法も辻褄は合うな。ではカインとアベルというのは?」

「四代目までの“勇者”の世界の神話だそうですよ。ヒトの兄弟が同じ神に生け贄を捧げた結果、弟のものだけしか受け取られなかったことに嫉妬し激昂して殺してしまったのだとか」

「む。神に選ばれなかったと?知らなかったとはいえすまなかった、というべきか……」


少し悲しげにカイトが零す。


「いえ。この世界で神はカインにも慈悲を垂れてくれたということではないですか?ならば私も、アベルと共に生きられる道を歩むのみです」

「ふ……。七人分の人生を背負って立つ男は含蓄のあることだな」

「むぅ。私はただ父上と母上の子カインですよ」

「そうだな。お前は私たちの自慢の息子だ」


いつになく快活な笑いを見せるカイトに、カインは胸の内に小さな痛みを覚える。

去来するは、三歳だったあの日。

剣の構えをやめなければ、もっと早く父は疑問を口にしていただろうか。

もっと早く、こんな風に父と隠し事のない気楽な会話が出来ていたのだろうか。



「だが私がお前の自慢の父ではなかったことは……知っていたのだ。すまなかった」


そんなことを考えていると、唐突に降ってきた父からの謝罪。


「父上……なにを……」

「初めてお前に型を見せたあの日言っただろう。『お前の気遣いに対する、私なりの誠意だ』と。だが、私は間違えていた。本当に誠意を示すつもりならば、最初にすべきはお前に『剣を持ちたくはないのか』と問うことだったはずだ」

「私は……鎗が良いと応えたことでしょう」

「だろうな。だが、自ら選んで口にする、つまり自己責任で選択するのには覚悟がいる。目か、声か。あるいは間か。葛藤はどこかに出ていただろう。私には、それを捉える義務があった」


カイトの発言は正しい。

ゆえに、カインは口ごもってしまった。


「それは……」

「お前の気遣いに胡坐をかいて、怠った。結果、お前に今そのような顔をさせている。もっと、自分のしたいように鍛錬も出来たことだろう」


カインはそれを聞いて、ばつの悪い顔。


「あー……父上。そこに関しては謝らないといけないことがありまして」


親として。

子に対する接し方を間違えてきたなどと、中々本人に言えることではないだろう。

ましてや、それを謝るなど。

子がどんな思いをするか、どんな思いを親に向けるか。

分からないカイトではないはずだ。


だからこそ。

カインにとってその姿がなによりの教育で。

彼は意を決してある封筒を差し出す。



「鑑定符か?誕生日にちゃんと見せてもら……ッ!」



=============================

      冒険者協会発行公式鑑定符

カイン・ニドレイト様    モントブロ国ヴォルスピア支部


ステータス

HP:H

MP:G

攻撃力:H

防御力:H

敏捷性:H

知力値:H

魔法適正:G

抵抗力:G

器用さ:G


スキル

先天性:“博覧強記”

後天性:白鎗流白雷派鎗術

基礎六魔法 重力魔法

解析魔法 呪阻魔法 隠蔽魔法 魔力操作

   無詠唱 回復魔法 空間魔法


適職:“勇者”

功罪:


聖勇歴799年4月1日

=============================




「あー……うむ。そうだな。お前は私たちの自慢の息子だ」

「父上……」


カイトは混乱していた。

魔物を殺したこともない五歳児のステータスが四つもG評価?有り得ない。

基礎六魔法だと?火水風土に光と闇だが……五歳児に全て扱える?有り得ない。

それだけでなく希少魔法に加えて呪阻(じゅそ)魔法?呪詛(じゅそ)に阻害?“勇者”が使うには邪道ではないか?いやそれはそれで有りか?

カイトは非常に混乱していた。


「説明、してくれるんだな?」

「えぇと、はい。覚え方使い方については……“博覧強記”のおかげ、で良いですか?それでまぁ、稽古の最中に重力負荷をかけたり、暖炉の火に風を送ったり。光源を作っては闇で覆い隠してみたりとこそこそやっておりまして……」


語尾の弱くなっていくカインに、父は渋い顔をする。


「暴発の心配はしていなかったのか?」

「ステータスも低いので大したことにはならないと判断しました」

「考えただけ私よりはマシ、か。ふむ。いや待て。ステータスも低くはないだろう。鍛錬だけで人はHから抜けることは出来ないと言われるほどだぞ?」


これにカインは首を傾げた。


「HやGが数値でどの程度かわからないのでなんとも言えませんが……呪阻魔法での弱体化や視界が霞むだけなど些細な状態異常なら起きている間常に効いているようかけ直してきたからでしょうか」

「そうか。我が子ながら、さすが知力値H、か」

「“博覧強記”で記憶力分がカウント外なんですよきっと」


向き合って笑い合う二人。

が、ここでカイトがある事に気づいた。


「いや待て。なにより説明すべきは鑑定符の内容が変わっていることだ」

「え、ええと。ぁはは……隠蔽魔法の重ね掛けです。すみません、二人を騙してしまって」

「一応言っておくが。鑑定符は公的な文書だ。偽装したものを提出でもしたら刑罰対象となる。親相手でなくても二度とするな。私から言うのは、それだけだ。一武人として、手の内を隠すこと自体はあまり咎めたくはない」

「すみません、ありがとうございます」


殊勝な態度のカインに、カイトは一つ溜息をついて告げる。


「さて。今日は次の道場に着いたらそこで休むとしよう」

「わかりました」

「明日は、麓にかなり近づく。山頂を離れるほど魔物も弱くなることだ。カインにも一度くらいは手伝ってもらうかもしれん」

「はい。ご指導お願いしますね」



それからは、特に何事もなく目的の道場に着き、その日を終えた。


”勇者”と”博覧強記”の組み合わせ。

言ってみれば、プロゲーマー監修の攻略サイト・攻略動画を常時見放題という類のチートです。

次話、恐怖の大魔王が降ってくる(嘘。嘘?嘘)。

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