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私勇者さん、今冤罪で断頭台にいるの~打ち切り改稿します~  作者:
一章:当代勇者カインの十九年
3/15

2話.勇者の幼少②~カインは勇者であることを両親に明かす~

本日の最終更新となります。

ほぼ名前だけだったママの登場とカインの”勇者”バレ(隠してない)回です。

歳月が経ち、カイン五歳の誕生日。


宣言通りに己の修めた白鎗流の型全てを、流れだけとはいえ覚えさせることに成功していたカイトは、息子を背負って山を降り、最寄りの街ヴォルスピアに入っていた。

白鎗国モントブロの南東に位置するヴォルスピアは、カイトが師範として頂点に立つ山の最寄りであると同時に、最もアヴァロン王都に近い玄関口でもある。

武の臭いの濃さは、モントブロでも指折りだ。



人類領の街は、どの国であっても基本的に創造神エルステラを主神に奉じる教会と初代勇者が導入したとされる冒険者協会、ギルドまたは協会と呼ばれる建物とが置かれている。

その役割は多岐に渡るが、共通するのが“鑑定符”の無料発行である。


初代“勇者”が当時の“魔王”を打倒した年を元年とする聖勇歴の始まりから約三百年、ある魔法技師が簡素な解析魔法を魔道具とすることに成功。

以来五百年近くかけて改良と量産を繰り返してきた鑑定魔道具を両施設は設置しており、現在この魔道具は触れた者のおおまかなステータス、そして持っているならばスキルと称号を、差し込まれた羊皮紙に焼き付けるというところまで進歩している。

こうして出来る鑑定符に鑑定対象者の名前と、教会もしくはギルドが署名をして公的な文書とするのである。


ちなみに、情報・自由意志保護の観点から、羊皮紙の排出口には署名欄の箇所に穴の空いた封筒が設置されており、職員の目にも触れないよう規則が徹底されている。



門弟や道場破りなど荒くれ者に慣れ親しんだカイトは、ギルドで鑑定を頼むことを選び、その木戸を開けた。

この街の教会は、カイトにとっては五年前に起こしたちょっとした騒動のせいで敷居が高いというのもあったが。


このモントブロで主流となっている釘を使わない丸太造り建築で建てられたギルドにいる者たちも、この街に出入りする白鎗流師範を知らないわけがない。

なにせ白鎗流の聖地たる白鎗国モントブロで武器を取ることを選んだ者たちと白鎗の武名に釣られた腕自慢、そしてそんな彼らに接するのが仕事のギルド受付嬢連中だ。


建物に入った途端に、尊敬、畏怖、敵意、情欲といった視線ばかりがカイトに向けられる。


が、次の瞬間には集まった視線が霧散する。

子供連れだったからだ。

「いつか勝つ」と息巻く者も、というより息巻く者たちだからこそ理解は早い。


――あの子供を少しでもびびらせてしまえば、自分はここで死ぬ。



そんな空気に気づいているのかいないのか、カイトは悠然と受付カウンターに歩み寄ると、連れて来た子供を抱き上げるや受付嬢と目が合うように突き出す。


「はぇ?」「ちちうえ?」

「この子の鑑定を頼みたい」

「はぇ?」「ちちうえ?」


無骨なカイトは受付嬢の頓狂な声も戸惑う我が子の声も意に介さず告げるが、返ってきたのは全く同じ反応だった。

受付嬢の反応は、プロとしてどうかというのに目をつぶれば自然なものだ。

普通は年端もいかない子供を荒くれ者ばかりのギルドなどには連れて来ないし、適職を授かる十二歳にならないうちから鑑定というのも基本ない。



「…………っ!!かしこまりました」「ちちうえ?」


が、やや間があいたものの、どうやら受付嬢に意図が伝わったようだ。

金環に囲われた瞳、天職持ちの証に気づいたらしい。

依然として、子供は抱え上げられたまま置いてけぼりのようだが。


同僚に席を立つ旨を伝えた受付嬢の案内で鑑定魔道具のある部屋を訪れたカイト親子は、(つつが)なく鑑定を終えると、ちらちらと(うかが)う観衆たちを後目にギルドを出た。

慣れない空気に対する戸惑いと鑑定結果に対する期待からか落ち着かない様子のカインに、カイトは変わらぬ不器用な言葉をかける。



「開けるのは帰宅してからだ。落ち着けんだろうし、お前も母上と一緒に見たかろう」

「そう……ですね。ちちうえのおっしゃる通りです」

「ではまた背負ってやろう。今から急げば、夕方には帰れる。三人で食卓を囲んで見るとしよう」

「ありがとうございます」


カインがその背によじ登ったことを確認すると、カイトは往路同様、戦闘時に自身の攻防力や敏捷性など身体能力を向上させるのにしか使わない魔力でカインを包み込んで保護し、山頂へと駆け抜ける。





「二人ともお帰りなさい。カイン、久しぶりの街はどうでした?父上は誰か怪我させたりしませんでしたか?」


邸宅に戻ると、カイトから帰宅予定時間をある程度聞いていたのだろう、母のレアンが玄関先で待っていた。

レアン・ニドレイト、今年で二六歳になるカイトと同門の鎗術師。

低めの位置で結わえたサイドポニーの白髪を胸元に垂らし、金の眼を穏やかに細める楚々とした、身長一六0㎝弱のこの地域ではやや小柄な美女である。


「ははうえ、ただいまもどりました。なにごともなかったですが……久しぶり、ですか?」

「ふふふ。カインは覚えていないでしょうけど、貴方が産まれてすぐに、祝福を授けてもらうなんて言って父上は貴方を抱いて教会まで飛んで行ってしまったのですよ、私が出産直後で休んでいる間に。信じられません」

「ははうえ?」


『楚々とした美女』の見た目を崩さないままのレアンがする説明に、カイトは苦笑いで呟く。


「あの時のお前はかつて私が相対した武人の誰よりも恐ろしかった」

「当たり前です。産まれて間もない赤子を雪山に出すなんて許せる母がいるわけないでしょう。カインが無事に戻ってきていなければ、今頃この邸の裏庭には墓標が三つ多くあったことでしょうね」

「ははうえ?」


瞳だけを凍らせた笑顔で恐ろしいことを言い出す母に、カインは呼びかけることしか出来なかった。


「カイン?父上のように強くなるのは良いですが。でも貴方は父上のような無愛想、不器用で考えなしのただ前に突き進むことしか知らない鎗人間になってはなりませんよ?」

「レアンよ?」「ははうえ?」

「さて、せっかくカインの誕生日なのですから、お説教はここまでにしましょうか。二人ともお腹も空いているでしょうし鑑定結果も気になっているのでしょう。ご飯にしますよ」


レアンの金の瞳が温かく柔らかいものに戻ると同時に、カインは自分の呼吸が浅くなり、また肌着が冷たく張りついていたことに気づいた。

隣を見上げてみると、カイトも同じだったようで、珍しく決まりの悪い苦笑を浮かべて言う。


「少し、帰りに飛ばし過ぎて汗をかいたようだな。体が冷えてしまった。中に入って火に当たるか」


後にカインがいかなる強敵にも怯まず勝ち筋を探れるようになったのも、たまに無意味なほど言葉を重ねるのも、レアンという母親の恐怖と教訓が少なからぬ影響を与えたものであっただろうか。


さておき、夕飯を食べてしまえばようやく鑑定結果のお披露目である。

リビングダイニングに備え付けられた暖炉に薪を足してから、カイトは封筒を差し出してこう告げた。


「まずは、お前一人で見ると良い。受け入れられたなら、見せてくれ。受け入れたくないものだったなら、そんな紙切れはお前の魔法で燃やしてしまうといい」

「……ありがとう、ございます」


鑑定符を取り出したカインは、首を傾げたあと、眉を顰めてから何かに思い至ったような微笑みに表情を転じて、両親の方へ羊皮紙を差し出した。


「「……っ!」」


鑑定結果を目にした二人は揃って息を吞み、目を閉じた。


=============================

      冒険者協会発行公式鑑定符

カイン・ニドレイト様   モントブロ国ヴォルスピア支部


ステータス

HP:H

MP:H

攻撃力:H

防御力:H

敏捷性:H

知力値:H

魔法適正:H

抵抗力:H

器用さ:H


スキル

先天性:“博覧強記”

後天性:白鎗流白雷派鎗術

 火魔法 光魔法 魔力操作


適職:“勇者”

功罪:


聖勇歴799年4月1日

=============================




少し短いですが、今回、というか今日はここまで。

戦闘シーンを描写する予定は現状ないですが、ぶっちゃけレアンは戦闘系の天職持ちを除けば物理面において作中の人類最強です。


ちなみに、創造神エルステラの名前は「創る」の外国語で人名っぽく出来そうなのないかなーで見つけたドイツ語”erstellen”が由来です。でも神による創造とかはドイツ語だと”schaffen”を使うのが適切なんだそうなのですが、今一つ語感の良い「ぽいやつ」が浮かばなかったから前者を使わせていただきました。


明日も19時くらいに『次へ』を出してもらえるようにしておきたいと思います。


ぶっちゃけ嘴としてはレアン暴走を早くお届けしたくもあるので、ご要望がいただけるようなら投稿ペースを上げるのも考えているのですが……そこまでこの駄文に需要はないでしょうし、ストックが削れていく恐怖に耐えられるかも分かんないんですよねぇ。

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