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幼なじみと一緒にいたら、スクールカーストの底辺になった  作者: 錦織一也
オタクと幼なじみしかいない冬休みに突入してしまった…
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紫苑と葛城の勝負

 

「舟に乗るまで1時間。高村さんは、どんな勝負を提案するのかしら?」


 俺と相席になる為、葛城と紫苑は舟に乗る1時間、勝負をする事になった。今は9時15分ぐらいで、真彦さんが早めに予約しても1時間は待たされる。結構人気があるアトラクションなのだと、改めて思った。


「ふっふっふ。初戦に相応しい勝負をするのですよっ!」


 そう言って紫苑が取り出したのは、新幹線の中で見たあのトランプの箱だった。


「ズバリ、ババ抜きなのですよっ!」


 本当に、紫苑はババ抜きが好きだな。最初の内は楽しいが、何度かやっているうちに、違うゲームを提案するだろう。


「いいわよ。私に一度も勝てない、めげない高村さんと戦うの、嫌いじゃないわ」

「今回は、私が考えた、面白いルールで、果歩ちゃんの負けは確実なのですよ」


 何か、変わったルールを付け加えてババ抜きをするようだ。


「私が負けちゃうルール、とっても興味があるわ」

「ここでは、最先端の食べ物、ソフトクリームを食べながら勝負するのですよ」


 アイス食いながら、ババ抜きをするのか。夏にやれば、そこそこ盛り上がるだろう。


「カードを1枚引くのと同時に、相手のソフトクリームも一口食べる。それでババが残った方が負けなのですよっ!」

「ソフトクリームの必要性を感じられないわね」


 それなら普通のババ抜きで良いと思うのだが。ソフトクリームを持たせることによって、葛城の集中力を欠けさせようと考えたのだろう。


「ババを持たず、ソフトクリームも食べ切ったら勝ちにしたら、面白いと思うの」

「いいのですよっ!」


 葛城は、自らの首を絞めるような、不利になるようなルールを追加して、葛城と紫苑は再びババ抜き勝負になった。


「ほらよ」


 2人はベンチに座って、カードを分けている時、俺が二人にソフトクリームを奢る羽目になった。


「ありがとう、松原君」

「ありがとうなのですよ。それでは、私から引きますっ!」


 紫苑と葛城は、俺が買ってきたアイスクリームを受け取って、それからカードを持って、紫苑が葛城の手札のカードを引こうとした時だった。


「ゲームが……出来ないのですよ……」

「今気づいたの?」


 俺もソフトクリームを買い終えた時に気付いたのだが、両手が塞がっていては、相手のカードを引くことは出来ない。それを分かっていたから、ソフトクリームを食べ切ると言うルールを追加したようだ。


「……ルールの変更します。……普通にババ抜きをしましょう」

「それが一番ね」


 紫苑と葛城は、俺が買って来たソフトクリームを食べてから、普通にババ抜きをして、そして紫苑は葛城に負けた。





「次は、かけっこで勝負なのですよっ!」


 葛城にババ抜きで全敗しても、紫苑は落ち込む事無く、すぐに葛城に勝負を挑んだ。


「この辺の事を良く知らないのに、どうやってかけっこで勝負するのかしら?」

「ふっふっふ。さっき案内板を見たら、ちょっと行った所に神社があるみたいなのですよっ! そこをゴールにして、1着の人を勝利としましょうっ!」


 ハイテンションな紫苑は、葛城の腕を引っ張って、俺も紫苑たちについて行くと、そこは神社に続く、参道の入り口に案内された。


「高村さん。流石に神社の境内を走るのはマナー違反だと思うから、早歩き、国際的な運動の祭典にも採用されている競歩勝負にしましょうか。そしてゴールはこの藤棚にしましょう」


 神社の境内に、藤棚があるようで、そこをゴールに葛城は提案していた。せっかく旅行しているのに、境内で走って、色んな人に叱られるのも嫌だからな。


「いいでしょう! 早歩きだからと言って、油断しない事で――」

「はい、スタート」

「いきなりは卑怯ですよっ!?」


 葛城に急にスタートを切られたので、紫苑は頬を膨らませながら、葛城を走って追いかけようとしたが。


「走ったら反則よ? これでマイナス100点」

「いつの間に、ポイント制になったのですかっ!?」


 そうツッコんでおきながらも、紫苑はすぐに早歩きに戻って、葛城の後を追った。


「私は1000点、高村さんはマイナス5100点。本気でやらないと、私が松原君と相席。仮にここで負けても、勝負は確定みたいな物ね」

「ババ抜きで負けただけで、どれだけポイントを引かれるのですかっ!?」

「もちろん、新幹線の中も含めてよ」


 葛城が、新幹線の中も含めると言ったら、紫苑は納得していた。そこはババ抜きだけで、どうやったら取り返しのつかないような、ポイントになるのか。そこは抗議してほしい。


「高村さん。周りの景色を見るのも、競歩の醍醐味よ。横の景色、見てみたら?」


 そう言って、葛城に言われたとおりに、紫苑は顔を横に向けると、紫苑は足を止めていた。


「すごい……のですよ……」


 俺らが歩いている参道の横は、雲が一つもない、冬の澄んだ空の下にある、倉敷市の街を見渡せる場所だった。そんな景色に、紫苑は目を輝かせて、感動していた。


「そうかしら? このような景色、東京の高架になっている駅のホームなら、どこでも見えると思うけど?」


 そしていい感じになっていた空気を壊す葛城。自分から言っておいて、どうして身もふたもないような事を言えるのだろうか。


「違いますよ、果歩ちゃん。この場所、この瞬間の景色を見られるのは、今だけなのですよ。東京では見られないですし、こうやって皆さんと楽しめるのは、今だけなのですから」


 紫苑は、スマホで写真を撮ってから、俺たちにこう告げた。


「私、冬休み明けから、もうマロンたちとは会えません。大みそかの日に、九州に引っ越します」


 その知らせは、俺の小学生のトラウマを思い出させる、二度と聞きたくなかった、紫苑の別れの台詞だった。


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