Episode4 聞き込み②
ひと通り家族に話を聞いて、今度は使用人たちのところへ向かった。
「ルーシー、応接間の飾り棚に飾ってた首飾りのこと知ってた?」
「首飾り、ですか。応接間にはあまり入りませんので、そういったものがあったこと自体、存じませんでした」
「最近、何か変わったことはある?」
少し首をかしげて、ルーシーが続けた。
「そういえば、最近食材の減りが早くて困ってるんですよ。調理前の野菜とか保存食とか。鍵も壊されてないし、夜番も何も見てないって言うし」
「いつ頃から?」
「一月ほど前からですかねえ。ほんとに不思議で」
私はメモを取った。
……一ヶ月前からなら首飾りとは関係ないかな。
次にカーラたちのところへ向かった。サラとココと一緒に廊下の掃除をしていた。
三人が私を見て、顔を見合わせた。
「お嬢様、応接間の小麦粉なんですけど…」
三人が口を開きかけたのを遮るように質問した。
「昨日の夜、応接間の近くで誰か見た?」
カーラが少し考えてから口を開いた。
「夕餉の前に、奥様が応接間にお入りになるのをお見かけしました」
「首飾り、昨日見た?」
三人が顔を見合わせた。
「午前の掃除のときにちらっとは……あったと思うんですけど、まじまじ見てたわけじゃないので」
「棚の中はセバスチャンさんが掃除されるので、私たちは毎日は確認してなくて。昨日はセバスチャンさんもいらっしゃらなかったので、飾り棚の確認は……」
「夜番も不安でしたし」とカーラが少し眉を寄せた。
「セバスチャンさんがいないのは珍しいので」ココが続けた。
私はメモを取った。
立ち去ろうとしたとき、三人がまたこちらを見た。
「あの、お嬢様、小麦粉の件なんですが——」
「今後は気をつけるから!ありがとう!」
声だけ残して歩き出した。三人の視線が背中に刺さった。
次に馬屋へ向かった。トムが馬の世話をしながら振り返った。
首飾りについてと昨日何か変わったことがなかったか尋ねると
「昨日はセバスチャンさんがいなかったんで初めて夜番でしたね。これと言って何も起きなかったですけど」
「昨日無くなった首飾りのことは知ってた?」
「旦那様をオークションに送り迎えしましたから、何か大事なものをお持ち帰りになったのはわかりましたけど、中身までは⋯⋯」
「セバスチャンがいつ戻ったかわかる?」
「朝方でしたね。私が馬の世話を始めた頃に、セバスチャンさんがお戻りになりまして」
最後にセバスチャンの執務室を訪ねた。
「昨日の夜、どこにいたの」
セバスチャンは書類から目を上げた。
「知己を訪ねておりました」
「どこに?」
「……南の方へ」
「飾り棚の鍵は?」
「一昨日、旦那様のお部屋へお届けしてございます」
「最後に首飾りを見たのは?」
「一昨日の朝、清掃の際に確認しております。その後、旦那様へ鍵をお預けしましたので」
「何時に戻ったの?」
「今朝方、屋敷に戻りましてございます」
セバスチャンは表情を変えずに言った。
「鍵は、戻った際に旦那様より直接お預かりいたしました。その足で飾り棚の確認に参りましたところ——」
一拍、間があった。
「その際に、首飾りがないことに気づきました」
それだけ言って、セバスチャンは書類に視線を戻した。
「ところで、お嬢様」
「なに」
「その眼鏡は」
「探偵活動用」
セバスチャンの眉が、ぴくりと動いた。
セバスチャンが静かに息を吸った。説教が来る、と悟った瞬間に私は立ち上がった。
「ありがとう、参考になった!」
「以前もお伝えしたかと存じますが、お嬢様のお立場をお考えになりますと、そのような——」
「また後で!」
私は足早に執務室を出た。




