Episode11 首飾りの続き
夜。
自室に戻って、椅子に腰を下ろす。
フィンは窓枠に座って、外を眺めていた。
私は伊達眼鏡を外して、引き出しにそっとしまった。
——真実は、いつもひとつ。
でも、人の事情は、いつだって一言じゃ終わらない。
今回だって、首飾りを盗んだ犯人を捜していたはずが、たどり着いたのは、弟の不器用な献身と、ひとつの困窮家庭だった。
これが、私の最初の事件。
探偵デビューとしては、空回りばかりの散々な滑り出しだったけれど。
悪くない第一歩だった……たぶん。
「ねえ、エラリー」
フィンが、外を見たまま言った。
「僕的には中々楽しめたよ」
フィンが楽しげに目を細めるのを見て、私は小さく息を吐き出す。
「……悪趣味ね」
私は頬杖をついて、フィンと同じように、窓の外を眺めた。
たぶん、これからもこういうことに首を突っ込んでいくんだろう。
そんな予感が、もうしている。
——そういえば。
ふと、思い出した。
フィンが言っていた。あの首飾りからは、変な気配がする、と。
カイルが隠そうとしたとき、ひとりでに光ったという首飾り。
ただの装飾品では、ないのかもしれない。
「ねえ、フィン。あの首飾りのことなんだけど」
振り返ると、フィンはもう、すうすうと寝息を立てていた。
……まあ、いいか。
もしかしたら、カイルの罪悪感が見せた、ただの幻だったのかもしれない。
追い詰められた末の、気の迷いだったのかも。
でも——それにしては、フィンの反応が、妙に真剣だった気がする。
謎は、逃げない。
それもまた、おいおい解いていけばいいのだ。
「おやすみ、フィン」
もう眠ってしまったのか、返事はなかった。
窓の外を、夜風が静かに通り過ぎていった。




