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落とされ人  作者: カーブミラー


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99/126

【099.結論】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 2日後。

 ふたたび、大師父3人との会談に臨む。

「前置きはなしにしましょう。結論からお願いします」

「はい」

 テムジン大師父は、間を置いて、口を開いた。

「我々は、それでもあなたに導いて欲しい、との結論にいたりました」

「なぜかね?」

「集団自殺に追い込まれるのは、困ります。ですが、予言書には、そんなことは書かれておりませんでした。そんなことになるのであれば、予言書に書かれているはずです」

「書かれていないだけでしょう。導かれたために〈マニ教〉が衰退していくかもしれませんよ?」

「予言書には、〈マニ教〉の終わりについても書かれています。それについては、ここでは申せませんが。“〈導く者〉が〈マニ教〉を滅ぼす”とはどこにも書いてありませんでした。もちろん、その可能性も考えて相談してきました。ですが、我々はあなたを〈導く者〉として信じることにしたのです。それが結論です」

 オレは、3人を見た。

 硬い表情だ。

 この結論は、覆りそうにない。

 そのくらいの決意が見える。

「ならば、私はどうすればいいのです?」

「我々を導いて……言い換えましょう。我々を使ってください」

「使う?」

「はい。必要なときに必要なだけ。秘儀の種類もお教えいたしましょう。あなたにも使える秘儀があるかもしれません。その極意もお教えいたします」

「何もかもを?」

「必要であれば」

「それほどの人間ではありませんよ?」

「それは、我々では、判断できません。もちろん、示された道が正しいかはその都度、判断いたしますが」

「ふむ、なるほど。ただの言いなりではない、ということですな」

「そのとおりです」

「よろしい。では、さっそく。まず、そちらが集めた各国の情報とその評価をいただきたい。それからあなたがたがご存知のポッドの着陸ポイントの位置。その状況も」

「わかりました」

「秘儀については、それなりの文献が?」

「はい、ございます。すべてに関して、記されております。御入用でしょうか?」

「どのくらいの量か、見せてもらえますか?」

 テムジン大師父が右手を上げて、指した。

 そこにボンヤリした周囲を持つ画像が現れた。

 書庫のようすだ。

 それなりにはあるが、ひとつの仕事をはじめる資料としては、まぁまぁの量だ。

「それをこちらで記憶してもよろしいかな?」

 テムジン大師父が怪訝な表情になる。

「記憶?」

「私のここに」と自分の側頭部をつつく。

「しかし、かなりの量が」

「記憶するのに量は関係ありません。そちらの書庫内に入れてもらえば、自分で記憶します」

「つまり、こちらにいらしていただけると?」

「ええ。物送りの術で、そちらに行くことは可能でしょう?」

「はい。わかりました、手配いたします」

「それから今後はスエツグくんを経由せずに話せればいいのですが」

「以心伝心の術を覚えていただければ可能です。おそらく、苦労することはないでしょう。あなたは、すでにどう受ければいいかをわかっておいでです。あとは、誰と話したいかをはっきりとイメージできれば」

「なるほど。スエツグくんからは、“誰でもできる術”だと聞いてましたから心配はしていませんでしたが」

「誰でも、というわけではないのですが。脳に損傷を負った人では、うまく使えないことがわかっています」

「ああ、なるほど。機能が欠損しているからですな。そういうことなら心配はいりませんね」

「はい」

 要求すべきことは伝えた。

 各種情報は、文献として、送ってくれることになった。

 以心伝心の術は、簡単なレクチャーを受けただけで使えるようになった。

 スエツグのように条件もかけられていない。

 術のことを知らない人間にも、話しかけることができるそうだ。

 もちろん、相手のことを知らねば、無理だが。

 それでもありがたい。

 通常では使う必要はないだろうが、いざというときには役立つはずだ。


 あとから寝室に文献が送られてきた。

 夕食を終えて、くつろいだあと、自室に引っ込んでから、テレパシーを送ったのだ。

 厚みのある文献には、手書きで情報がつづられていた。

 南大陸の情報が多い。

 当然だろう。

 彼ら本来の土地なのだから。

 いくつもの国がある。

 国とも言えない規模の場所も。

 それらは、人間の集まりとしては、原始的なレベルがほとんどだ。

 なんとか武器を作り、猟をしたり、自分の家族や縄張りを守ったりしている。

 あるいは、狩猟採集から抜け出し、食物を育てる者たちもいた。

 だが、文明的な生活ではない。

 そうしたことが行なえている国は、〈ラクロア王国〉とその周辺国だけだった。

 ポッドの着陸ポイントは、北大陸と同じくらいが発見されている。

 その周辺で、孤独か集団で生きている。

 王国があることなど、知らないのだろう。

 そうした場所の人間たちは、ほかの人間を探そうともしていなかった。

 日々の生活に追われて、そこまで考えられないのだ。

 〈ラクロア王国〉がそうした者たちを集めていないわけではない。

 集められるだけ集めている。

 しかし、〈ラクロア王国〉とその周辺国に限られてしまうのだ。

 その外は、いかに〈ラクロア王国〉と言えども簡単に遠征していくわけにはいかない。

 そこには、自分たちの縄張りを守っている部族がいるのだ。

 彼らと戦わなければならない。

 〈ラクロア王国〉も飛行機は持っていた。

 だが、短距離しか飛べないような双発のプロペラ機だ。

 飛行船はなく、気球があるだけだし、風の向きも悪かった。

 海に接していれば、船で迎えに行くことも可能だ。

 そう思っても多くのポイントでは、険しい岩場があったりして、岸に近づくこともできなかった。

 ふむ、そういう点では、〈スベルト王国〉の方が多くの人間を集められているな。

 〈ラクロア王国〉に飛行船技術があれば、回収は可能だろう。

 〈スベルト王国〉でも同じような状況で、飛行船が活躍しているのだから。

 各国の評価を見る。

 やはり、〈スベルト王国〉〈ラクロア王国〉が群を抜いている。

 それ以下の国は、周辺国で甘んじており、両国からの甘い汁を吸っているかのようだ。

 それでもほとんどは、両国と交易をして外貨を稼いでいるのだから、悪くない国家と言えるだろう。

 現状としては、そんなものか。

 文献を閉じて、サイドテーブルに置くと、ベッドに横になった。

 そのまま、考える暇なく、眠った。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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