【099.結論】
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2日後。
ふたたび、大師父3人との会談に臨む。
「前置きはなしにしましょう。結論からお願いします」
「はい」
テムジン大師父は、間を置いて、口を開いた。
「我々は、それでもあなたに導いて欲しい、との結論にいたりました」
「なぜかね?」
「集団自殺に追い込まれるのは、困ります。ですが、予言書には、そんなことは書かれておりませんでした。そんなことになるのであれば、予言書に書かれているはずです」
「書かれていないだけでしょう。導かれたために〈マニ教〉が衰退していくかもしれませんよ?」
「予言書には、〈マニ教〉の終わりについても書かれています。それについては、ここでは申せませんが。“〈導く者〉が〈マニ教〉を滅ぼす”とはどこにも書いてありませんでした。もちろん、その可能性も考えて相談してきました。ですが、我々はあなたを〈導く者〉として信じることにしたのです。それが結論です」
オレは、3人を見た。
硬い表情だ。
この結論は、覆りそうにない。
そのくらいの決意が見える。
「ならば、私はどうすればいいのです?」
「我々を導いて……言い換えましょう。我々を使ってください」
「使う?」
「はい。必要なときに必要なだけ。秘儀の種類もお教えいたしましょう。あなたにも使える秘儀があるかもしれません。その極意もお教えいたします」
「何もかもを?」
「必要であれば」
「それほどの人間ではありませんよ?」
「それは、我々では、判断できません。もちろん、示された道が正しいかはその都度、判断いたしますが」
「ふむ、なるほど。ただの言いなりではない、ということですな」
「そのとおりです」
「よろしい。では、さっそく。まず、そちらが集めた各国の情報とその評価をいただきたい。それからあなたがたがご存知のポッドの着陸ポイントの位置。その状況も」
「わかりました」
「秘儀については、それなりの文献が?」
「はい、ございます。すべてに関して、記されております。御入用でしょうか?」
「どのくらいの量か、見せてもらえますか?」
テムジン大師父が右手を上げて、指した。
そこにボンヤリした周囲を持つ画像が現れた。
書庫のようすだ。
それなりにはあるが、ひとつの仕事をはじめる資料としては、まぁまぁの量だ。
「それをこちらで記憶してもよろしいかな?」
テムジン大師父が怪訝な表情になる。
「記憶?」
「私のここに」と自分の側頭部をつつく。
「しかし、かなりの量が」
「記憶するのに量は関係ありません。そちらの書庫内に入れてもらえば、自分で記憶します」
「つまり、こちらにいらしていただけると?」
「ええ。物送りの術で、そちらに行くことは可能でしょう?」
「はい。わかりました、手配いたします」
「それから今後はスエツグくんを経由せずに話せればいいのですが」
「以心伝心の術を覚えていただければ可能です。おそらく、苦労することはないでしょう。あなたは、すでにどう受ければいいかをわかっておいでです。あとは、誰と話したいかをはっきりとイメージできれば」
「なるほど。スエツグくんからは、“誰でもできる術”だと聞いてましたから心配はしていませんでしたが」
「誰でも、というわけではないのですが。脳に損傷を負った人では、うまく使えないことがわかっています」
「ああ、なるほど。機能が欠損しているからですな。そういうことなら心配はいりませんね」
「はい」
要求すべきことは伝えた。
各種情報は、文献として、送ってくれることになった。
以心伝心の術は、簡単なレクチャーを受けただけで使えるようになった。
スエツグのように条件もかけられていない。
術のことを知らない人間にも、話しかけることができるそうだ。
もちろん、相手のことを知らねば、無理だが。
それでもありがたい。
通常では使う必要はないだろうが、いざというときには役立つはずだ。
あとから寝室に文献が送られてきた。
夕食を終えて、くつろいだあと、自室に引っ込んでから、テレパシーを送ったのだ。
厚みのある文献には、手書きで情報がつづられていた。
南大陸の情報が多い。
当然だろう。
彼ら本来の土地なのだから。
いくつもの国がある。
国とも言えない規模の場所も。
それらは、人間の集まりとしては、原始的なレベルがほとんどだ。
なんとか武器を作り、猟をしたり、自分の家族や縄張りを守ったりしている。
あるいは、狩猟採集から抜け出し、食物を育てる者たちもいた。
だが、文明的な生活ではない。
そうしたことが行なえている国は、〈ラクロア王国〉とその周辺国だけだった。
ポッドの着陸ポイントは、北大陸と同じくらいが発見されている。
その周辺で、孤独か集団で生きている。
王国があることなど、知らないのだろう。
そうした場所の人間たちは、ほかの人間を探そうともしていなかった。
日々の生活に追われて、そこまで考えられないのだ。
〈ラクロア王国〉がそうした者たちを集めていないわけではない。
集められるだけ集めている。
しかし、〈ラクロア王国〉とその周辺国に限られてしまうのだ。
その外は、いかに〈ラクロア王国〉と言えども簡単に遠征していくわけにはいかない。
そこには、自分たちの縄張りを守っている部族がいるのだ。
彼らと戦わなければならない。
〈ラクロア王国〉も飛行機は持っていた。
だが、短距離しか飛べないような双発のプロペラ機だ。
飛行船はなく、気球があるだけだし、風の向きも悪かった。
海に接していれば、船で迎えに行くことも可能だ。
そう思っても多くのポイントでは、険しい岩場があったりして、岸に近づくこともできなかった。
ふむ、そういう点では、〈スベルト王国〉の方が多くの人間を集められているな。
〈ラクロア王国〉に飛行船技術があれば、回収は可能だろう。
〈スベルト王国〉でも同じような状況で、飛行船が活躍しているのだから。
各国の評価を見る。
やはり、〈スベルト王国〉〈ラクロア王国〉が群を抜いている。
それ以下の国は、周辺国で甘んじており、両国からの甘い汁を吸っているかのようだ。
それでもほとんどは、両国と交易をして外貨を稼いでいるのだから、悪くない国家と言えるだろう。
現状としては、そんなものか。
文献を閉じて、サイドテーブルに置くと、ベッドに横になった。
そのまま、考える暇なく、眠った。
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