【100.書庫】
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翌日から〈マニ教国〉に跳んだ。
夜、自室に引っ込んでからだ。
テレパシーで連絡を取ると、すぐに部屋のようすが変わった。
なんの力も加わらなかった。
その部屋は、板張りで、ガランとした何もない部屋だった。
ひとりの女性が立って、待っていた。
「ようこそ、〈マニ教国〉へ」
女性は、テムジン大師父だった。
「お邪魔します」
「どうぞ、こちらへ」
廊下に出る。
窓からの光がまぶしい。
どうやらお昼前のようだ。
ときどき、別の僧侶が通りがかり、テムジン大師父とお辞儀を交わす。
廊下の奥までくると、テムジン大師父はドアをノックした。
ドアの覗き窓が開き、そこから鋭い眼光がこちらを見つめた。
すぐに覗き窓が閉じて、ドアが開けられた。
そこには、やせた男性が立っていた。
「テムジン大師父」
「ご苦労様」
彼女とともに部屋に入る。
ドアが閉じられると、ロウソクの明かりだけになり、薄暗い空間になった。
「アラン、今後、このかたが来たら、お通しするように」
「わかりました」
「モーガンさん、どうぞ、ご自由に」
「ありがとう」
「帰る際は、私に念を送ってください。手配をしますので」
「わかりました」
彼女が去るのを待たずに、書棚に向かう。
書棚からひと山取り出し、空いている机に載せる。
アランと呼ばれた男性が、火の灯るひとつのロウソクの立つ燭台を机に置いてくれた。
「ありがとう」
「いえ」
イスに腰を降ろし、一冊ずつ、ページをめくっていく。
その都度、風が起こり、ロウソクが揺れる。
「これでは、仕事にならないな」
「どうすれば?」
「ふむ」
少し考える。
「未使用の紙はあるかね?」
アランが用意してくれた紙を受け取り、それを燭台に近づけ、明るさを確認する。
明かりが少し分散されるが、全体的にも配分されて、見やすくもなる。
そこで紙を筒状にして、燭台にかぶせることにした。
アランからノリをもらって、筒にした紙の端を止める。
それから燭台にかぶせた。
紙は燭台の脚部に引っ掛かって、ずれたりしない。
「これでいいだろう」
仕事を再開する。
どんどんとページをめくっていく。
「何をお探しなんですか?」
「探しているんじゃないんだよ。瞬間的に記憶しているんだ」
「記憶? そんな一瞬で?」
「ああ」
アランは、それ以上の口を訊かず、オレのやることを見ていた。
ひと山を終えると書棚に戻し、次の山を取り出す。
「もしかして、そうやって、すべての文献を?」
「そのつもりだよ」
「わかりました。あなたは、座っていてください。私が、文献をお取りいたします」
「そうかね。そうしてもらえるとありがたい。頼みます」
そうして、アランとの共同作業がはじまった。
いられる時間は少ない。
そこで一日の量を書棚ひとつを目安にした。
それが終わると、息を吐き出して、全身から力を抜いた。
「お疲れ様でした」
「うん。君のおかげでずいぶんと早く終わることができたよ」
「記憶するためにずっと来られるので?」
「そうなるね」
「時間は同じくらいに?」
「うん」
「わかりました。ここは、交代制なので、私がいないこともあります。ほかの者にも手伝うように、言っておきましょう」
「助かるよ」
テムジン大師父に念を送り、彼女が来るのを待って、書庫を出た。
「いかがでしたか?」
「アランが手伝ってくれました。助かります」
「そうでしたか」
「一日に書棚ひとつを目安に作業を進めます」
「わかりました。御入用のものなどは?」
オレは首を振った。
「記憶するだけですから、何も」
最初の部屋に行き、彼女の見ている前から自室に戻された。
意識を集中していたので、かなり疲れた。
ほとんどそのままベッドに潜り、夢を見る間も惜しんで、眠った。
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