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落とされ人  作者: カーブミラー


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100/120

【100.書庫】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 翌日から〈マニ教国〉に跳んだ。

 夜、自室に引っ込んでからだ。

 テレパシーで連絡を取ると、すぐに部屋のようすが変わった。

 なんの力も加わらなかった。

 その部屋は、板張りで、ガランとした何もない部屋だった。

 ひとりの女性が立って、待っていた。

「ようこそ、〈マニ教国〉へ」

 女性は、テムジン大師父だった。

「お邪魔します」

「どうぞ、こちらへ」

 廊下に出る。

 窓からの光がまぶしい。

 どうやらお昼前のようだ。

 ときどき、別の僧侶が通りがかり、テムジン大師父とお辞儀を交わす。

 廊下の奥までくると、テムジン大師父はドアをノックした。

 ドアの覗き窓が開き、そこから鋭い眼光がこちらを見つめた。

 すぐに覗き窓が閉じて、ドアが開けられた。

 そこには、やせた男性が立っていた。

「テムジン大師父」

「ご苦労様」

 彼女とともに部屋に入る。

 ドアが閉じられると、ロウソクの明かりだけになり、薄暗い空間になった。

「アラン、今後、このかたが来たら、お通しするように」

「わかりました」

「モーガンさん、どうぞ、ご自由に」

「ありがとう」

「帰る際は、私に念を送ってください。手配をしますので」

「わかりました」

 彼女が去るのを待たずに、書棚に向かう。

 書棚からひと山取り出し、空いている机に載せる。

 アランと呼ばれた男性が、火の灯るひとつのロウソクの立つ燭台を机に置いてくれた。

「ありがとう」

「いえ」

 イスに腰を降ろし、一冊ずつ、ページをめくっていく。

 その都度、風が起こり、ロウソクが揺れる。

「これでは、仕事にならないな」

「どうすれば?」

「ふむ」

 少し考える。

「未使用の紙はあるかね?」

 アランが用意してくれた紙を受け取り、それを燭台に近づけ、明るさを確認する。

 明かりが少し分散されるが、全体的にも配分されて、見やすくもなる。

 そこで紙を筒状にして、燭台にかぶせることにした。

 アランからノリをもらって、筒にした紙の端を止める。

 それから燭台にかぶせた。

 紙は燭台の脚部に引っ掛かって、ずれたりしない。

「これでいいだろう」

 仕事を再開する。

 どんどんとページをめくっていく。

「何をお探しなんですか?」

「探しているんじゃないんだよ。瞬間的に記憶しているんだ」

「記憶? そんな一瞬で?」

「ああ」

 アランは、それ以上の口を訊かず、オレのやることを見ていた。

 ひと山を終えると書棚に戻し、次の山を取り出す。

「もしかして、そうやって、すべての文献を?」

「そのつもりだよ」

「わかりました。あなたは、座っていてください。私が、文献をお取りいたします」

「そうかね。そうしてもらえるとありがたい。頼みます」

 そうして、アランとの共同作業がはじまった。

 いられる時間は少ない。

 そこで一日の量を書棚ひとつを目安にした。

 それが終わると、息を吐き出して、全身から力を抜いた。

「お疲れ様でした」

「うん。君のおかげでずいぶんと早く終わることができたよ」

「記憶するためにずっと来られるので?」

「そうなるね」

「時間は同じくらいに?」

「うん」

「わかりました。ここは、交代制なので、私がいないこともあります。ほかの者にも手伝うように、言っておきましょう」

「助かるよ」

 テムジン大師父に念を送り、彼女が来るのを待って、書庫を出た。

「いかがでしたか?」

「アランが手伝ってくれました。助かります」

「そうでしたか」

「一日に書棚ひとつを目安に作業を進めます」

「わかりました。御入用のものなどは?」

 オレは首を振った。

「記憶するだけですから、何も」

 最初の部屋に行き、彼女の見ている前から自室に戻された。

 意識を集中していたので、かなり疲れた。

 ほとんどそのままベッドに潜り、夢を見る間も惜しんで、眠った。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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