【101.文献】
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すみません。更新忘れていました(^_^;
〈マニ教国〉に跳ぶ日々が続いたおかげで、オレは日中にボンヤリしていることが多かった。
もちろん、仕事に集中もできないから、進捗は芳しくない。
「夜中に何をしているの?」と室長に問われた。
仕事を中断して、コーヒーを飲んでいたときだった。
「あはは。申し訳ない。ちょっと考えごとで眠れなくなりましてね」
「考えごと?」
「ええ。お話するほどのことでもありませんよ。それに自分自身のためでしてね」
「まさか、ほかの国の誘いに――」
室長の言葉をさえぎった。
「ご安心を。そのつもりはありませんから。今から移ったとしても、またはじめから知識の取り出しをしなくてはならないとしたら、それは苦痛ですから」
「そう? ならいいんだけど」
「もうじき、考えがまとまります。そうすれば、進捗も元通りになるでしょう」
〈マニ教国〉の文献をすべて記憶したのは、はじめてから12日目だった。
「終わりましたね」と最後のひと山を書棚に戻しながら、アランが言った。
「ああ。あとは、これを読んでいくだけだ」
「さすがに読む速度は、早くはないんでしょう?」
「そうだね。だが、速読法を使うから、ふつうに読むよりも早いはずだよ」
「速読法ですか。いろいろとご存知なんですね」
彼は、水を出してくれた。
この書庫内では、水以外の飲み物は厳禁だった。
文献を汚さないためだ。
「ありがとう」
水を飲んで、ひと息つく。
ふぅ。
「もうこちらに来ることはないんですか?」
「この書庫にはもう用はあるまい。それでも〈マニ教国〉にはときどき来ることだろう」
「そうですか。さみしくなりますね」
「君たちにはお世話になったね」
「お役に立てればそれで。私たちもひまつぶしができましたし」
「あはは」
彼らの仕事は、いくつかある。
人の出入りの制限。
文献の補修。
古くなった文献の写本。
その他諸々。
本来なら暇はない。
それでもそう言ってくれたのは、ありがたかった。
昼間の仕事をふたたび、集中するようになり、室長もホッとしたようだ。
オレは、寝る前の時間に、〈マニ教国〉の文献を読み進めた。
秘儀には、さまざまなものがあった。
中には、先天的な力だったり、事故で得られた力だったりする。
だが、それらを除けば、ふつうの人でもある程度まで能力拡張が可能だとわかった。
習得するには、意識を集中して、充分なイメージを作り上げればいい。
自分にその力が宿っている、と信じることも必要だ。
もちろん、人によって、能力に差が出てしまうのは仕方がない。
そして、使える力が突出していれば、そこに神経を集中して、訓練していく。
〈マニ教国〉では、そうした彼らに働いてもらうことになる。
ひと月後、オレは、テムジン大師父に念を送った。
(モーガンさん、どうかされましたか?)
(どうやら私自身の能力開発を行なうよりは、そちらの術者のかたに手伝ってもらうようにした方がいいようですね)
(なぜでしょう?)
(能力開発している時間がおしい、というだけです。それに術のことを知っているだけで充分でしょう)
(わかりました。御用があるときにおっしゃってください。すぐに対応いたしますので)
(ありがとうございます。しばらくは、何もするつもりはありませんが)
(そうですか)
(では、これで)
念の送信をやめた。
以心伝心の術があるだけで、充分だ。
あとはその都度、依頼すればいい。
術によっては、疲労困憊するものもあるのだから。
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