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落とされ人  作者: カーブミラー


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98/124

【098.放置】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 機嫌は、あまりよくならずに日々を過ごした。

 当然、仕事も滞っている。

「どうしたの?」と室長が訊いてくる。

 集中できないことを報告していたのだ。

「ある国からの接触がありまして」

「また、拉致されそうなの?」

「いえいえ、それはないでしょう。協力するつもりがない、と答えておきましたから。ただ、彼らの考え方が気に食わなくて。それで憤慨しているのです」

「ああ、そういうこと。それにしては、長引いてるわね」

「ええ。少しでも早く集中したいのですが」オレは首を振った。

「まぁ、何かで気晴らしするしかないわね」

「ええ」

 だが、プールで泳いでも、走っても、買い物をしても、気分は悪いままだった。

 スエツグに言って、大師父たちにつないでもらって、怒鳴り散らそうとも考えた。

 それはそれでスエツグには可哀想な話だ。

 オレと大師父との板ばさみになってしまうのだから。


 3人との会談からもうすぐ1週間が経とうとしていた。

「先生」とスエツグがドアから声をかけてきたのは、オレが寝室に入って少ししてからだった。

「なんだね?」

「たった今、デボンからの連絡が来ました。大師父たちが面会したいそうです」

「今からかね?」オレは不機嫌にそう言った。

「いえ」とスエツグはオレの質問に怯えて、答えた。「先生に合わせるとのことでした」

「そうかね」

「やはり、大師父たちと何かあったのですね」

「意見がかみ合わなかっただけだよ。君に問題があるわけじゃない」

「それでも先生が機嫌を損ねるようなことを、大師父たちが言ったのでしょう?」

「まぁね。だが、彼らの立場からしたらわからない話ではなかった。それでも私には納得できないことだったんだ」

 彼は、うなずいた。

「わたしがこう言ってはいけないのかもしれませんが、放っておきましょう」

「ん?」

「面会は、先生の自由です。私はただ、先生の機嫌が直るまで待つしかない、と向こうには伝えますから」

 それを伝えられた3人の顔が思い浮かんだ。

 思わず含み笑いしてしまった。

 それから腹の底から大笑いした。

「ありがとう、スエツグくん。君のおかげでいくぶん、気分がよくなったよ」

「よかった」と彼も笑顔になった。

「先方には、少し待つように言ってくれ。必ず時間を作る、と」

「いいんですか?」

「ああ。彼らも意見がまとまったのだろうからね。それに無理矢理なことをされても、かなわないしな」

「無茶なことはしないと思いますが。とにかく、そう伝えます」

「うん、頼むよ」

「はい。では、お休みなさい、先生」

「お休み」

 彼が出ていくと、オレは気分がいいままに眠りにつけた。

 ここのところ、寝つきが悪かったのだ。

 スエツグのおかげだな。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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