【098.放置】
続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。
機嫌は、あまりよくならずに日々を過ごした。
当然、仕事も滞っている。
「どうしたの?」と室長が訊いてくる。
集中できないことを報告していたのだ。
「ある国からの接触がありまして」
「また、拉致されそうなの?」
「いえいえ、それはないでしょう。協力するつもりがない、と答えておきましたから。ただ、彼らの考え方が気に食わなくて。それで憤慨しているのです」
「ああ、そういうこと。それにしては、長引いてるわね」
「ええ。少しでも早く集中したいのですが」オレは首を振った。
「まぁ、何かで気晴らしするしかないわね」
「ええ」
だが、プールで泳いでも、走っても、買い物をしても、気分は悪いままだった。
スエツグに言って、大師父たちにつないでもらって、怒鳴り散らそうとも考えた。
それはそれでスエツグには可哀想な話だ。
オレと大師父との板ばさみになってしまうのだから。
3人との会談からもうすぐ1週間が経とうとしていた。
「先生」とスエツグがドアから声をかけてきたのは、オレが寝室に入って少ししてからだった。
「なんだね?」
「たった今、デボンからの連絡が来ました。大師父たちが面会したいそうです」
「今からかね?」オレは不機嫌にそう言った。
「いえ」とスエツグはオレの質問に怯えて、答えた。「先生に合わせるとのことでした」
「そうかね」
「やはり、大師父たちと何かあったのですね」
「意見がかみ合わなかっただけだよ。君に問題があるわけじゃない」
「それでも先生が機嫌を損ねるようなことを、大師父たちが言ったのでしょう?」
「まぁね。だが、彼らの立場からしたらわからない話ではなかった。それでも私には納得できないことだったんだ」
彼は、うなずいた。
「わたしがこう言ってはいけないのかもしれませんが、放っておきましょう」
「ん?」
「面会は、先生の自由です。私はただ、先生の機嫌が直るまで待つしかない、と向こうには伝えますから」
それを伝えられた3人の顔が思い浮かんだ。
思わず含み笑いしてしまった。
それから腹の底から大笑いした。
「ありがとう、スエツグくん。君のおかげでいくぶん、気分がよくなったよ」
「よかった」と彼も笑顔になった。
「先方には、少し待つように言ってくれ。必ず時間を作る、と」
「いいんですか?」
「ああ。彼らも意見がまとまったのだろうからね。それに無理矢理なことをされても、かなわないしな」
「無茶なことはしないと思いますが。とにかく、そう伝えます」
「うん、頼むよ」
「はい。では、お休みなさい、先生」
「お休み」
彼が出ていくと、オレは気分がいいままに眠りにつけた。
ここのところ、寝つきが悪かったのだ。
スエツグのおかげだな。
読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)




