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落とされ人  作者: カーブミラー


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95/120

【095.以心伝心の術】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 仕事中に次の書物を引き出そうとした際、人の気配を感じて、仮想空間の部屋に入った。

 そこには、スエツグが立っていた。

「なんだ、君か」

「すみません、先生」

 彼もオレのことを“先生”と呼ぶようになっていた。

「次の書物を取ろうとしたら来てしまいました」

「私も次の書物をと思ってね。しかし、おたがいが書物を取ろうとしただけで、ここに来てしまうとも考えられないが」

「はい。今の時間は、ちょうど以心伝心の術がつながっている時間です。それが関係しているのかもしれません」

「なるほど。前回もそうだったね」

「はい。すぐに出ますね」

「うん……いや、待ってくれ」

「はい?」

 オレは、少し考えてから訊いた。

「今、向こうとつながっているんだよね?」

「はい。こちらから呼びかければ、すぐに反応はありますが」

「師父と話をすることは可能かな?」

「ミタニ師父とですか?」

「いや。私の話を聞いてくださる師父なら、誰でもかまわないんだが」

「わかりました。訊いてみます。デボン」

「何かしら、スエツグ」女性の声だ。

「ハイタニ師父に伝えてくれませんか? 今、モーガン先生と一緒なんですが、先生が師父と話がしたいそうなんです。どうでしょう?」

「伝えるけど。今、師父たちは集まって話し合っている最中だから。また、後日になると思うわ」

「そう。何かあったのかな?」

「さぁ。とにかくそういうことだから。悪いけど」

「わかりました」

「ありがとう、デボン」と礼を言った。

「えっ? その声って、モーガン先生ですか?」

「そうです。初めましてだね」

 仮想空間に女性が現れた。

 剃髪しているが、まだ若い。

 白人種で、薄い青の瞳。

「初めまして。デボン・フィッシャーです」と〈マニ教〉教徒の一礼をしてくれた。

「初めまして。パオロ・モーガンです」

 彼女は、部屋の中を見回した。

「この書庫は?」

「先生の書庫ですよ、デボン。すごい書物の量でしょう?」

「ええ。でもどうしてふたり一緒にいるの? 先生ももしかして、〈マニ教〉の教徒?」

「いやいや」と首を振って答える。「偶然にこうなることを知ってね。それで師父と話ができないかと思ったんだ」

「そうでしたか。さきほどもスエツグに言いましたが、今は無理です」

「うん、聞いてたよ。別に今すぐでなくてもかまわないんだ。急ぎの話ではないからね。そう伝えてもらえればありがたい」

「わかりました。必ず伝えます」

「頼みます」

「スエツグ、ほかに何かある?」

「いいえ」

「では、先生。また」

「うん。ご苦労様」

 彼女は一礼すると部屋から消えた。

 まばたきをしていたら、どこに行ったか、と探していただろう。

 そのくらいの瞬間だった。

 ふたりで、マブタを閉じ、また開く。

 現実世界に戻っていた。

「いやはや、おもしろいね」

 そばにいたマリーンが首を傾げる。

 スエツグは、別の部屋で、テオと一緒にいる。

「どうかしましたか?」とマリーン。

「なんでもない。さて、仕事を続けますか」

「はい」

 マリーンは、わけがわからないながらも次の仕事の準備をしはじめた。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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