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落とされ人  作者: カーブミラー


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89/133

【089.拉致・4】

 潜水艦は途中まで船を曳航し、軍艦に役割を譲ると、海中に没した。

 オレは船内で、捕まえられた3人とともにいた。

 潜水艦の兵士ふたりも一緒だ。

 船内には、爆発物もなければ、銃火器もナイフもなかった。

 武器になりそうなのは、カトラリーくらいなものだ。

 曳航の役割が軍艦になる際に、オレたちは軍艦に乗り移った。

 艦長と挨拶を交わす。

「彼らは、〈ラクロア〉の王とその家臣です。営倉に閉じ込めない方がいいでしょう」

「すでに部屋をご用意しております。多少、せまいかもしれませんが」

 その部屋は、確かにせまかったが、一時的な拘束を考えれば、充分な広さだ。

 3人がその部屋に入る。

 オレは、案内されて、別の部屋に入った。

「陛下が映話をお望みです」

「わかりました」

 部屋のデスクにあるコンピューターを起動し、陛下への映話申請を行なった。

 しばらく待つと、女王陛下が映し出された。

「パオロ、無事か?」

「はい、陛下。私のために軍を動かしてくださり、ありがとうございました」

「当然だ。パオロは、〈スベルト〉の宝だからな」

「そう言っていただけて、ありがたいです」

「ところでおまえを拉致したのが、〈ラクロア〉の王というのは本当か?」

「はい。以前に拝見した写真と同一人物でした」

「そうか」

 陛下は、考え込んだ。

「国王を捕まえたことは、公表されるので?」

 彼女が首を振る。

「いいや。そんなことをしてもどちらの国も動揺するだけだ。戦争のきっかけにもなりかねない」

「でしょうね」

「とにかくこちらで協議してみる。そのあいだの接待を任せてもいいか?」

「かしこまりました」


 港に着くと、1台のバスに乗り込んだ。

 そのバスで城に向かう。

「こんな車での移動をさせられるとはな」と王。ため息をついている。

「ご辛抱を。〈ラクロア〉の王が〈スベルト〉に来ている、と諸国に知られてはまずいでしょう?」

「諸国か」

 王はそれっきり、城に着くまで無言で窓の外を眺めていた。


 城に到着すると、室長が待機していた。

 テオとマリーンも一緒だ。

「無事でよかったわ、パオロ」

「心配をおかけいたしました、室長」

「部屋が用意されてるわ。ひとまず、そちらへ行きましょう」


 その部屋からは、城下が一望できた。

 王は、その景色を何も言わずに眺めている。

 サミュエルと客室乗務員の女性は、テーブルについている。

 室長とオレもテーブルについていた。

 何も言わずに。

 そこへノックの音。

 室長がドアを開ける。

 入ってきたのは、女王陛下だった。

 オレはふたりを立ち上がらせた。

 陛下が、こちらにうなずく。

 それから窓に立つ王を見た。

「ラクロア王、ようこそ御越しくださいました」

 王が、視線を陛下に向けた。

 怪訝な表情。

「あなたは?」

「〈スベルト王国〉女王、ノーラと申します」

「女王?」と片眉を上げた。「ずいぶんとお若いが」

「もうすぐ13になります」

「13歳……失礼だが、その御歳で国を統治していらっしゃるのか?」

 クスリと笑う陛下。

「失礼。統治は、評議会が行なっております。私は、この国の象徴的存在でしかありません」

「ああ、なるほど」

 王は、陛下に向きなおった。

 それから一礼した。

「〈ラクロア〉の王、セバスチャン・ラクロアです。御見知りおきを」

「どうぞ、お楽に。当地に滞在中は、国賓として御迎えいたします」

「ありがとうございます。本来なら投獄されても文句はありませんのに」

「そうですわね。ですが、一国の王をそのように扱うのも問題がありますので。今回の件では、できれば、平和的な解決を望んでおります」

 王は、ただうなずいた。


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