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落とされ人  作者: カーブミラー


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84/121

【084.併合】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 翌朝、次の洞窟に向かい、テオとマリーンに必要なことを頼んで、オレはデイブの運転で城に戻った。

 室長とふたりきりになり、見てきたことを報告し、相談した。

「そうしたことをしている国はあるとは思っていたけど。それを秘密裏にやっていたなんて」と驚く室長。

「そのまま、という考えもあったようなのですが、“いずれは見つかってしまうだろう”と。それで私に相談してきたのです」

「そうね。あとから見つかるよりも事前に相談してくれて助かるわ」

「私個人では、いい考えも浮かびませんし、できることも少ないですからね」

「それで帰ってきた、というわけね」

「ええ。電話やメールでもよかったのですが、内容が内容なので」

「そうね。王室評議会に相談しましょう」


 女王陛下を中心とするメンバーは、変わらずにその場で会議をしていた。

 そこに入っていく室長のあとをついていく。

「なんだね?」と評議会のひとり。

「〈エルゼンタール〉で重要な案件が出てまいりました」と室長。

「重要な? 後ろにいるのは、パオロくんだね。確か、〈エルゼンタール〉に調査旅行に行っているはずだが」

「彼から報告を受けました。重要な案件なので、電話やメールでの連絡は危険だと判断したのです」

「どういうことかな? その重要な案件とは」

「パオロ、あなたから説明して」

「はい」


 オレからの説明で、王室評議会の面々も驚きを隠せない。

 だが、女王は喜んだ。

「彼らと我らとの技術や知識が交流できるのだろう? 喜ばしいことではないか」

「しかし」と評議会のひとり。「併合するにはおたがいの差異を吸収しなければなりません」

「すればいい。王室が支援すれば、難しいことではなかろう」

「では、王室文化院での併合でよろしいので?」

「そうなるな」

「室長、そういうことだ。頼むよ」「必要なら軍を動かしてもいいからな」

「かしこまりました」

 ふたりして、会議室から出る。

 途端に室長が大きなため息を吐いた。

「我々が調整を?」と室長に問う。

「ええ」

「ですが、軍を動かすなんて。そこまで?」

「いざとなったらよ。それに物資の搬送をするなら、彼らの方がいいわ」

「なるほど」


 縄梯子を降りる。

 地上では、土ぼこりが舞っていた。

 しかし、静かだ。

 軍のヘリコプターは、静音モードで、エンジンやローター部分の音がかなり抑えられている。

 洞窟の人間には気付かれないはずだ。

 オレのあとからは、室長が降りてくる。

 最初に降りたデイブが地上で待っていた。

 オレと室長が降りたのを確認すると、デイブが腕を広げて、ヘリコプターのパイロットに合図する。

 するとヘリコプターは、姿勢を変え、星空の中に消えていった。

 我々のまわりには、回収されていないポッドが10個以上、残されている。

 しばらくその場で待機していると、林の中に松明の赤い光が現れた。

 それがこちらに近づいてくる。

 3人の人影が見えた。

 前を歩く男性ふたりを見て、ギョッとした。

 毛皮で作った腰巻をして、松明とナイフを持っている。

 だが、何よりも驚いたのは、その顔に恐ろしい仮面をかぶっていたことだった。

 動物のようにも見えるし、悪魔のようにも見える。

 その男ふたりの後ろに小柄な姿。

 洞窟にいた老婆だった。

「こんばんわ」と声をかけた。

「なんだ、おまえさんかい。おかしいとは思ったんだ。着陸船が到着した音がなかったもんだから」

「ヘリコプターで来ました。静音装置で来ましたから監視装置以外には気付かれなかったでしょう」

「ああ。で、そちらは?」

 室長を紹介する。

「そちらの案件は、王室が支援します」と室長。

「そうかい。ありがたいね」

「詳しい話は中でしませんか?」とうながすオレ。

「そうだね。おいで」

 林の中に突き出た大きな岩の前に立つ老婆。

 人間の背丈より高い。

 その岩肌に手のひらを押し付ける老婆。

 岩を模したドアが開く。

 小さな明かりが点いていた。

 明るい照明をつけないのは、誰かに見られないよう、用心しているのだろう。

 全員で入る。

 仮面の男のひとりがドアを閉めた。

 明るくなる。

 松明の火が消された。

 男ふたりは仮面を外す。

 フゥッと息を漏らす。

「ふたりはこっちの人間でね。こんな格好をしてるが、科学者だよ」

「よろしく」

 地下世界を案内される室長。

 オレと同じように驚いている。

 ようやく腰を降ろした部屋で、彼女は大きく息を吐いた。

「パオロの話で、まさかとは思っていましたが、ここまでとは」

「まぁ、話だけで信じろ、という方が無理というものだろうねぇ」と笑う老婆。

「それで」と口を開くオレ。「王室が正式に支援してくれることになりました。そこで室長に現状を知ってもらい、必要な手立てを考えます」

 老婆がうなずく。

「できれば、大きな変化は避けたいね」

「では」と室長。「少しずつなら大丈夫ですわね」

「そうしてもらえると助かる」


 話し合いを終えると、外に出て、デイブがヘリコプターを呼び戻した。

 縄梯子につかまる前に、老婆に別れを告げた。

「いつでも来な。歓迎するよ」

「そうします。ではまた」

 縄梯子を登って、ヘリコプターに収容され、その場から離れた。

 城に戻ると、すぐさまデイブの運転する車で、テオたちのもとに走った。

 戻ると同時に車の中で眠った。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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