【076.いい子】
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それから1週間。
ターニャからの知識の取り出し作業は順調に進む。
彼女には、城内の部屋が割り当てられた。
とはいってもオレの部屋ほどの広さはなく、またルームメイトもいた。
アネットが言っていた監視者だろう。
ターニャは、詐欺師の片鱗を少しも見せていなかった。
ただ、たんたんと日々の仕事を続けている。
オレと同じように改心したのだろうか?
それとも状況を見ているだけだろうか?
なんとも言えない。
オレの方は、マリーンが手伝ってくれている。
テオほどではないが、おおいに助かっている。
ときおり、マリーンを夕食に招待する。
だが、もうお客様としてではなく、一緒の夕食を楽しむために、調理を手伝ってもらっている。
寮まで送るのは、オレの役目だった。
仕事のパートナーなのだから当然だ。
マリーンは、いつもうれしそうに、恥ずかしそうにして、歩く。
“オレに娘がいたらマリーンのようになっていただろうか?”といつも思う。
ちょうどそのくらいの年齢差だ。
とはいえ、オレの稼業で、子どもを持つことはできなかった。
ニセの家族を作って、相手を騙すことはあったが、ほんのいっときだ。
子どももそれをわかっていた。
マリーンは、いい子だ。
こんな、もと詐欺師でも敬ってくれる。
「先生」
「ん?」
「私、先生のお役に立ってますか?」
オレは笑顔のまま、答えた。
「もちろんだとも。テオほどではないにしろ、君は役立ってくれている。君の成長が楽しみだ」
「がんばります」
「ほどほどにな。張り詰めたロープは切れやすい。適度にゆるめておいておくれ」
「はい」
寮に送り届けたあとは、ひとりで歩く。
廊下には、明かりが点々と足元を照らし、続いている。
城内は静まり返っているが、虫の音がほどよい雑音を提供してくれている。
この惑星の虫は、例に漏れず、ほかの惑星の虫と似ている。
まるで同じDNAを祖先に持っているかのようだ。
その点は、比較するためのデータがない。
生物は、環境によって、進化や退化をしていく。
同じような環境であれば、似たような身体を持つようになるという。
オレにとっては、どうでもいいことだ。
今は、このほどよい音色に身を任せて、部屋に戻るとしよう。
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