【074.移動】
続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。
翌日。
朝食を食べ終わると、宿泊先が決まったことが伝えられ、その日のうちに移動することになった。
全員が何も持たずにバスに乗り込む。
我々も分乗して同行する。
移動には、6台のバス。
213人が移動するのだから、それだけの台数が必要になる。
行き先は、王都ではなかった。
「王都が一気に受け入れるのは、無理ですよ」と笑うドライバー。
「確かに」
向かったのは、オレの知らない土地だった。
国境を越えたのだ。
提携国のひとつ、〈ペテルギア〉。
オレの記憶によれば、国としては小さいが、森林に囲まれ、木工製品を生み出して、輸出している。
到着してみると、石と木で立てられた共同住宅が、3棟建っていた。
新しくはないが、どれも2階建てで、生活しやすそうだ。
土地の人々が、歓迎してくれた。
代表者が、中を案内してくれる。
中は広く、仕切りのない空間でしかなかった。
「ここは多目的ホールなんです」と代表者。「ですからこのように仕切らずに使うこともできますが、今回はパーティションを使って、部屋を作っていきます」
そうした仕切りを壁際から運んできて、ひと部屋作って見せてくれる。
「なるほど。これでプライベート空間を確保できますな」
「はい。独身者やカップルもおいででしょうからね。ご自分たちで相談していただければよろしいかと」
リーダーたちが、相談して、グループ分けしていく。
「ベッドは、すぐにはご用意できませんが、マットレスや毛布はすでに準備してあります」
キッチンやトイレは、共同になる。
仕方あるまい。
土地の人々が、昼食を用意してくれた。
野菜や肉が惜しげなく並べられている。
人々は、最初、怪訝な顔をしていたが、それらを口にした途端、笑顔になった。
ある程度、食事が進むと、誰かが「王都へは、定期便があるんですか?」と訊いた。
「〈スベルト〉ですね。残念ながら定期便はありません」と代表者。「ですが、製品を頻繁に運んでいますので、その車に便乗すればよいかと。多人数の場合は、車を借りればいいでしょう」
「ここにも都市があるんですか?」別の男性。
「この国には、〈スベルト〉のような都市はありません。小さな町が数ヵ所にあるので、ある程度の用事は済むと思います」
「仕事は?」また別の男性。
「この国では、木材加工が主な仕事になります。山の管理から家具などの製造にいたるまでね。ほかの国でも仕事を見つけることができるでしょう。〈スベルト王国〉は知識や技術を必要としていますから、そちらに進むことも考えられます。我々としては、いついてもらった方がいいのですが、強制はしません。あなたがたの考えを尊重いたします」
ほかにも質問が出て、代表者が答えた。
昼食のあと、パーティションの設置を手伝う。
夕方。
新たなバスが到着した。
海から到着した残りの85人だった。
室長たちのグループも一緒だ。
我々は慌てた。
彼らの分の部屋を確保してなかったのだ。
リーダーたちが相談する。
まずは、全員が集まった。
目的は、知り合い探しだ。
どうせなら一緒にいた方がいい、と考えて。
そのあとで、部屋割りを考え、パーティションを組みなおす。
その作業は、彼ら自身に任せることにした。
室長たちと情報交換する。
85人も、やはりデモで捕まった人々だった。
「搾取が酷かったようね。彼らの生活もあまりよくなかったようよ」
「同じですね」
夕食も土地の人々が用意してくれた。
その日、我々のグループは、いくつかに分かれ、民家に泊めてもらった。
翌日、彼らと朝食をともにする。
それで彼らと、さよならをした。
あとの世話は、土地の人々に任せればいい。
我々は、いつもの生活に戻るのだ。
翌日から開始された仕事。
そこへ陛下が訪ねてきた。
ねぎらいの言葉をかけに来たのだ。
室長からの報告を聞く陛下。
「そうか。難儀だな」
「はい」
「だが、落とされてしまったのでは、どうしようもできまい」
「そのとおりです。この惑星で生きるしかありません」
「そうだな。とにかく、こちらでも手を尽くそう」
「はい」
陛下は、そう言うと事務室をあとにした。
まだほかにも行くところがあるのだろう。
「陛下も御心痛ね」
「仕方ありません。善処するしか」
「そうよね」
我々は、仕事に戻った。
読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)




