【072.パイロット】
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翌日、彼らとともに朝食を食べ、新たな物資を降ろす。
彼らは、仮説宿泊所内で、詳細説明を受ける。
どうやらアンケートも受けているらしい。
人数が多いので、あとまわしにされたのだろう。
マリーンたち女性は、そちらを手伝っている。
テオは、港にまわっている。
フェイスが震動した。
出ると室長からだった。
「そっちはどう?」
室長は、港に行っていたはずだ。
「落ち着いています。今、詳細な説明を受けているところです」
「そう。こちらは、ようやく船が到着したところよ」
「そうでしたか」
「これから忙しくなるだろうからと思って、電話したの」
「そうですね。何かあったらお知らせします」
「そうして。またね」
切れた。
物資の積み降ろしが主な仕事。
そのあいだに充分な休憩が入る。
オレは体力維持の運動を毎日欠かさずにいるので大丈夫だが、ほかのスタッフは少々疲れ気味だ。
事務室ではほとんど力仕事はない。
物資の積み降ろしは、彼らにとっては、ちょっと酷な仕事だろう。
「先生は、すごいですね」とスタッフのひとり。
「あはは。普段からの体力作りのおかげだよ。しかし、それにしても、君らは弱いな」
「もともとですよ」とため息をつきながら言う。
「それにしてもだよ。多少は、ジムに行って鍛えた方がいい」
「そうですね。そうします」
彼らを交代交代休ませる。
オレは、ときどき休むだけだ。
兵士がドリンクを用意してくれるので、それを飲んだりして。
ジェット機のエンジン音が近づいてきた。
見上げると、ジェット機が3機。
早朝に発進していった機体だ。
あのどれかにクリスが乗っているのかもしれない。
そう思うと手を振りたくなった。
だが、手には物資の箱があって、そうすることができなかった。
エンジン音がしなくなってしばらくすると、パイロット3人がこちらへと歩いてきた。
パイロットスーツに身を固め、右手には装備を入れたバッグを提げ、左脇にはヘルメットを抱えている。
背丈は、中心のひとりが小柄で、両脇のふたりはその15cmは高い。
中心の人物がオレに笑顔を向けた。
「パオロ、来てたの?」
「やぁ、クリス。〈落とされ人〉の確認かい?」
「ええ」
両脇のパイロットを紹介された。
両方とも男だ。
そして、オレが紹介される。
「あんたが、中尉の意中の人か」「〈エルゼンタール〉の王を殺したんだって?」
両方の質問にうなずいて答えた。
2番目に質問した男性が、“本当に?”とオレの身体に触りはじめた。
力は彼の方が倍近くあるだろう。
「こんな身体で?」
「おそらく、そんな油断が彼の命を奪ったんだろうね」
「うわぁ、謙遜してる。あんた、人を騙すのに慣れてるな」
これには驚いた。
バレるときはバレる。
「こら、ケビン、失礼でしょ」とクリス。
「中尉、騙されちゃいけませんよ。コイツ、人を騙すのなんか、屁とも思ってないっすよ」
「ごめんなさいね、パオロ。ケビンは、初対面でも食ってかかる癖があって」
「いいんだよ、クリス。ケビン、君の言うとおりだとして、クリスを騙してどうするつもりだ、と思うんだね?」
「さぁね。でも騙してないと証明できるのかい?」
「証明か。難しいな」オレは苦笑。
「だろうな」彼は片方の口角を上げて、ニヤついた。
「ケビン、もうやめなさい。行くわよ」と厳しいまなざしをケビンに向けるクリス。それからオレに向かって、笑顔で「またね、パオロ。お仕事、がんばって」と言って、ふたりの男に自分のヘルメットとバッグをぶつけて、身体の向きを変えた。
「またね、パオロ。お仕事、がんばって」とケビンでない方の男――トラビス――がクリスの声色を真似て、クリスをからかう。
クリスは、からかいの言葉を無視して、立ち去った。
「先生も大変ですね」とスタッフのひとり。
「惚れた手前、なんと言われても仕方ないがね」
仕事に戻った。
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