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落とされ人  作者: カーブミラー


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【071.仮設】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 翌日、1時間早めに事務室に入る。

 すでに城内のみんなも出勤してきていた。

 あとから城外に住む人間が、ちらほらと出勤してくる。

「みんな、ご苦労様」と室長。「まだ何も言われていないんだけど、これから確認を入れるから、それまでは待機してて。必要ならケータリングを頼んでもいいから」

 まだ朝食を食べていない人間も多かったので、ケータリングを頼んだ。

 オレとテオはすでに食べていたが、ドリンクを頼む。


 午前中は、ふつうに仕事をすることになった。

 だが、みな、集中ができない。

 ゆうべの詳細情報が届いていないためだ。

 室長は何度も確認の電話を入れたり、メールで確認を取ったりしていたのだが。


 昼食から帰ってくると、室長がみんなを集めた。

「報告が届いたわ」

 みんな黙って、その先を待っている。

「ポッドの数は、298。現在、軍の施設に収容するのは、213人。あとはほかの国ね」

 多いな、ええ、という静かな声。

「収容された人から聞いた話だと500人以上が上に来たらしいわ」

「500人!」と誰もが驚く。

「つまり」とひとりの女性。「5分の2が、上で殺されたと?」

「今のところは、そういうことらしいわ。それでも300近い人が落とされた。そして、〈スベルト〉とその提携国、それにどこにも属していない孤島などで、回収された人々が200人以上いる。我々は、仕事を中断し、その人たちのための行動をすることにします」


 オレのグループは、軍の施設に物資を届けることになった。

 施設に到着し、搬送用のトラックから物資を降ろす。

 時間に余裕ができたので、休憩のあいだに〈落とされ人〉のようすを見ることにした。

 今回の〈落とされ人〉は、本来の宿泊所ではなく、臨時設営された仮説宿泊所に集められていた。

 中を覗くと、ベッドはなく、全員が寝袋を床に敷いて、その上でおしゃべりをしていた。

 そこにいたのは、全員ではない。

 150人程度だろう。

 ほかの〈落とされ人〉は、遠方で回収され、船や車での移動の最中だ。

 そこにいた人々は、ゆうべ到着したのだと教えられた。

 みな同じ服装。

 全身黒だ。

 長袖のシャツとズボン、ソックスとトレッキングブーツ。

 バックパックはない。

 どうやら事前に回収されたらしい。

 すでに昼食を済ませたあとで、昼寝をしている者もいた。

 食事は糧食が配られていて、ゴミは中央の箱に集められていた。

 ケンカをしたようすもない。

 これだけいれば、不平不満はあるはずなのだが。

 それを兵士に尋ねてみた。

「こうして銃を持っているんで、上の続きと思っているらしいですね」

「上の? ステーションのか」

「ええ。まだここの説明もほとんどしていないので、それもあるんでしょう」

「なるほど」

「しかし、多過ぎますよ、今回は」

「そうだね。何が起こったのか、知っているかね?」

「いいえ。現在、数人の事情聴取が行なわれている最中でして。詳細はまだ」

「そうか」

 トラックに新しい荷を積み込む。

 王都に運ぶ本来の荷だ。

 さらにあとから来たトラックの荷を降ろす。

 それを何度も繰り返す。


 夕方。

 続々と〈落とされ人〉が到着。

 今回は、大陸上でのポイントへの着陸が多い。

 彼らのバックパックは、事前に回収されているようだ。

 サバイバルナイフという物騒なものが入っているのだから当然だ。

 毒薬も入っていたな。

 まぁ、水と食料が入っていて重いから、持たずに済むのは、彼らにとってはありがたいだろう。

 仮説宿泊所内での寝床を割り当てると、彼らは周囲に何があるのかと見回す。

 何があるわけでもない。

 同じ〈落とされ人〉がいるだけだ。

 一部には、知り合いがいたらしく、顔を見合わせ、笑顔で手を振ったりしている。

 そうした笑顔になるのは、先に到着していた人間だが。

 あとから到着した人間は、それに対して、うなずくくらいしかできない。

 このあと、どうなるのかが、わからないからだ。

 そうした人々に対しての簡単な説明が行なわれるたびに、安堵の吐息が漏れる。

 それでも不安は完全には消えない。

 大陸のポイントに到着した人々が揃ったところで、夕食が配られた。

 糧食ではなく、作りたての炊き出しだ。

 グループごとに並び、食事を受け取る。

 獄中の食事に比べれば、豪華といってもいい内容だ。

 もちろん、デザートもある。

 手の込んだものではないが。

 我々も最後の列に並んで受け取り、仮説宿泊所の空いたところで、彼らと夕食をとった。

 寝袋を借りて、その場で宿泊する。

 それを見て、人々は、“なぜなんだ?”という顔。

 オレは、立ち上がって、彼らに話しかけた。

「不思議ですか?」

 人々がうなずく。

「そうでしょうね。我々が何者か、まだきちんと説明していませんから。私は、パオロ、パオロ・モーガンと言います。この〈スベルト王国〉で働いています。ここにいる彼らもそうです。言っておきますが、我々も兵士たちもあなたがた同様に落とされた囚人です」

 それを聞いて、人々が動揺した。

「この惑星上の人間のほとんどがそうです。落とされていないのは、ここで生まれた人間だけです。我々は、ここでは囚人ではありません。ここで罪を犯せば、また囚人となりますがね。ですから我々は対等の立場なのです」

 ひとりの男性が立ち上がった。

「でも兵士は銃を持って見張っていますよ?」

「それは、暴れて欲しくないからです。ケンカとかね。上のように殺すための銃ではありません。訊けば、殺傷能力はないそうです。ただし、それなりの打撲になりますから目に当たれば、失明してしまうでしょうし、ほかの場所でもアザにはなります」

 そうだったのか、という小さな声があちこちでする。

「バックパックの中身を確認されたかたもおいでだと思いますが、あの中にはサバイバルナイフが入っていました。量産品ですが、とても鋭利で殺傷能力があります。バックパックを回収したのは、そのナイフを使って欲しくなかったからです。それと自殺用の毒薬も」

 “オレ、取り上げられた”と男性のひとり。

「でしょうね。ここでは、まったく必要ありません。なぜなら都会なのですから」

「都会って? ビルでもあるんですか?」と女性。

「あります。ごらんになれば、驚かれることでしょう。ほかの植民地の都市とは違いますが、多くの人間が働いて生活しているのです。私も最初は驚きました」

 そうやって、質疑応答を繰り返し、落ち着いたところで、就寝した。


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