【070.流れ星】
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秋の夜風で晩夏の熱を冷ましていた。
テオと一緒に部屋の前の庭園で、腰を降ろして、ワインを飲んでいた。
ワインといってもブドウを搾って発酵させたものではない。
ブドウのような色や甘味を持った果実があり、それを絞ったジュースに、アルコールを混ぜたものだ。
どちらかと言えば、リキュールだろう。
ほかにもアルコール飲料はある。
ビールもそのひとつだ。
ビールは、芋のようなものの絞り汁に、アルコールと炭酸を混ぜて、それらしくしたもの。
味は、悪くない。
好みではないが。
庭園の芝生は、心地よく、明かりは小さなランタンだけ。
頭上に広がるのは、満天の星。
「見慣れた星座がないのは、さみしいですね」
「そうだね」
故郷の星系から遠く離れていては、星の位置が全然違ってくるのだから、仕方がない。
それに落とされる前にここが〈レダン星系〉と言われたが、その〈レダン星系〉がどこにあるのかも知らないのだから、故郷のある星がどれなのかもわからない。
オレには、関係ないが。
故郷など、ないも同じだからだ。
気付けば、施設にいた。
そこから逃げた。
その土地からも逃げた。
仕事で転々とし、惑星から出ていく。
帰りたいとも思わないし、思い出したくもない。
流れ星がひとつ流れた。
光っているうちに願いごとを3回唱えられれば願いが叶う、と誰かが言っていたっけ。
だが、実際にそんなことは無理だ。
ほんの一瞬なのだから。
それに願いごとといったら、ミリーのことしか思い浮かばない。
ミリーにそばにいてもらいたい、と。
しばらくして、また流れ星が流れた。
「あれって、ポッドですね」とテオ。
「えっ?」
「光る色が……ほら、まただ」
そう言われて、次の流れ星を見ると、確かに輝く色が違っていた。
最初の流れ星は、白っぽかった。
だが、それ以降のは、オレンジがかっているのがわかる。
「確かに。ポッドか。また落とされているんだな」
「ええ」
ふたりは、ポッドが落ちるさまを見つめた。
自分たちもああやって落とされたんだ、と思いながら。
いつのまにか、数を数えていた。
だいぶ経ったが、まだ終わらない。
「多くないかね?」
「多いですよね。もう100を越しましたよ」
「軍は大忙しになりそうだね」
「おそらく」
その後も次から次へと落ちていく。
200を越した。
「おいおい、どうなってるんだ?」
「何かあったんですかね?」
背中からの明かりで、自分の前に影ができた。
部屋のドアが開いたのだ。
振り返るとテディーが半身を出していた。
「ルーカス様からお電話です」
ルーカス様、それは室長のことだ。
フェイスは、寝室に置きっぱなし。
それで電話してきたのだろう。
「室長から? なんだろう?」
部屋に入って、受話器をテディーから受け取った。
「はい、パオロですが」
「私よ。ちょっと異常事態みたい」
「もしかして、ポッドのことですか?」
「見ていたの? そうよ。あまりにも数が多すぎるわ。もしかしたらみんなに働いてもらうかもしれないの」
「いいですよ。これからですか?」
「いいえ。明日。早めに出てもらいたいの。1時間ほど」
「わかりました。テオも、ですか?」
「ええ。伝えてもらえる?」
「わかりました」
室長は、ほかにも連絡を入れるから、と電話を切った。
まだポッドを数えているテオに室長の言葉を伝える。
「まだ続いています。もうすぐ300ですよ」
「本当に異常だね。いつもは、多くても100前後なのに」
さすがに300は越えなかったが、300と言っていい数のポッドが落とされた。
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