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落とされ人  作者: カーブミラー


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70/120

【070.流れ星】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 秋の夜風で晩夏の熱を冷ましていた。

 テオと一緒に部屋の前の庭園で、腰を降ろして、ワインを飲んでいた。

 ワインといってもブドウを搾って発酵させたものではない。

 ブドウのような色や甘味を持った果実があり、それを絞ったジュースに、アルコールを混ぜたものだ。

 どちらかと言えば、リキュールだろう。

 ほかにもアルコール飲料はある。

 ビールもそのひとつだ。

 ビールは、芋のようなものの絞り汁に、アルコールと炭酸を混ぜて、それらしくしたもの。

 味は、悪くない。

 好みではないが。

 庭園の芝生は、心地よく、明かりは小さなランタンだけ。

 頭上に広がるのは、満天の星。

「見慣れた星座がないのは、さみしいですね」

「そうだね」

 故郷の星系から遠く離れていては、星の位置が全然違ってくるのだから、仕方がない。

 それに落とされる前にここが〈レダン星系〉と言われたが、その〈レダン星系〉がどこにあるのかも知らないのだから、故郷のある星がどれなのかもわからない。

 オレには、関係ないが。

 故郷など、ないも同じだからだ。

 気付けば、施設にいた。

 そこから逃げた。

 その土地からも逃げた。

 仕事で転々とし、惑星から出ていく。

 帰りたいとも思わないし、思い出したくもない。

 流れ星がひとつ流れた。

 光っているうちに願いごとを3回唱えられれば願いが叶う、と誰かが言っていたっけ。

 だが、実際にそんなことは無理だ。

 ほんの一瞬なのだから。

 それに願いごとといったら、ミリーのことしか思い浮かばない。

 ミリーにそばにいてもらいたい、と。

 しばらくして、また流れ星が流れた。

「あれって、ポッドですね」とテオ。

「えっ?」

「光る色が……ほら、まただ」

 そう言われて、次の流れ星を見ると、確かに輝く色が違っていた。

 最初の流れ星は、白っぽかった。

 だが、それ以降のは、オレンジがかっているのがわかる。

「確かに。ポッドか。また落とされているんだな」

「ええ」

 ふたりは、ポッドが落ちるさまを見つめた。

 自分たちもああやって落とされたんだ、と思いながら。

 いつのまにか、数を数えていた。

 だいぶ経ったが、まだ終わらない。

「多くないかね?」

「多いですよね。もう100を越しましたよ」

「軍は大忙しになりそうだね」

「おそらく」

 その後も次から次へと落ちていく。

 200を越した。

「おいおい、どうなってるんだ?」

「何かあったんですかね?」

 背中からの明かりで、自分の前に影ができた。

 部屋のドアが開いたのだ。

 振り返るとテディーが半身を出していた。

「ルーカス様からお電話です」

 ルーカス様、それは室長のことだ。

 フェイスは、寝室に置きっぱなし。

 それで電話してきたのだろう。

「室長から? なんだろう?」

 部屋に入って、受話器をテディーから受け取った。

「はい、パオロですが」

「私よ。ちょっと異常事態みたい」

「もしかして、ポッドのことですか?」

「見ていたの? そうよ。あまりにも数が多すぎるわ。もしかしたらみんなに働いてもらうかもしれないの」

「いいですよ。これからですか?」

「いいえ。明日。早めに出てもらいたいの。1時間ほど」

「わかりました。テオも、ですか?」

「ええ。伝えてもらえる?」

「わかりました」

 室長は、ほかにも連絡を入れるから、と電話を切った。

 まだポッドを数えているテオに室長の言葉を伝える。

「まだ続いています。もうすぐ300ですよ」

「本当に異常だね。いつもは、多くても100前後なのに」

 さすがに300は越えなかったが、300と言っていい数のポッドが落とされた。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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