【066.テロ】
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城が揺れた。
遠くで爆発音。
天井からホコリが舞い落ちる。
「なんだ?」
テオがすでにコンピューターで調べはじめていた。
「テロのようです」
「テロ?」
「ええ。城の門のところでの爆発です。どうやら自爆テロのようですね。巻き込まれた人が多数。門兵のひとりが死亡したと」
「なんと。なぜ自殺テロなど」
それ以上の情報が出てこないのだろう、テオは画面から目を離した。
「きっと謁見の場で、自爆するつもりだったんでしょう。陛下を殺すことはできなくても、ケガをさせたり、心理的な恐怖を与えられると考えているんですよ」
「国民に自殺テロをさせるような――」
テオはオレの言葉をさえぎった。
「国民じゃありませんよ。ほかの国の人間です。どうにかして国境を越えてきたんでしょう。爆発物は国内で作ったのかもしれませんけどね」
「国内で作った?」
「製造方法はネットで取得できるでしょう。材料もそれほど苦労なく手に入ると思いますよ。技術公開してますからね」
「ああ、そういうことか。だが、そんな危険なものを公開していてもいいのだろうか?」
「製造・利用は自己責任です。もちろん、中には非公開の技術もあります。主に軍が持ってますけどね」
「どんな道具でも、使う人間次第というわけか」
「ええ」
「ここには」とマリーン。彼女は怖がっていた。「来ませんよね」
「検問はいくつかある」とテオが答える。「謁見には、全身のチェックが行なわれてるから」
「でも身体の中に隠してたら」
「大丈夫。ほら、レフティーの透過装置があっただろう。あれを使って調べてるから、どんな武器も持ち込めないさ」
あとになって、室長が全員に報告した。
死亡したのは、門兵と自殺した人間だけ。
負傷したのは、まわりにいた謁見希望者やほかの門兵。
爆破の影響で、門が壊れ、ガレキとなった。
補修のため、その門はしばらく通行止めにされた。
我々は、普段はその門を利用しないから関係ないが、注意するように、と室長。
その日の夕方。
ちょうど、仕事を終えようとしていたときだ。
遠くの方で、雷鳴のような音が聞こえた。
「雷?」とひとりが顔を上げた。
「雲は出てないな」と窓から空のようすを眺める男性。
しばらくすると「また自爆テロだ」と誰かの声。
彼は、フェイスを見ていた。
テオがネットで調べる。
「街なかで自爆テロだそうです」
「街なかで? それで?」
「死傷者数はまだ。爆発があったのはビジネス街の駅構内です。この時間だと帰宅で利用者が増加したところのはずですね」
「なんという……では、死傷者数も相当」
「ええ。ああ、画像がアップされました。うわぁ、駅がつぶれてます」
テオのコンピューターの前に行って、その画像を見た。
テオの言うとおりだ。
駅舎は、そこに停車中の電車を支柱にして、屋根が落ちていた。
その上にあった商業施設も崩れている。
「これでは、逃げようがないな」
「行ってきます」とテオが立ち上がった。
「どこへ?」
「ここに。埋まってる人を助けなきゃ」
「ダメよ!」の声が、事務室に響いた。室長だった。「ほかのみんなも城内に留まるように」
「ですが」とテオが反論する。「あそこには――」
「わかってるわ。でも警察と軍に任せなさい」室長はそう言って、みんなを見た。「いい? 城門が破壊された。駅が破壊された。ということは、まだまだテロの可能性があるわ。助けに行ったところをドカーン、ということもありえる。テロがどう出るかはわからない。そんなところへ行かせるわけにはいきません。わかった? 自宅が城の外にある人は、城内で泊まれるように手配します。いいわね?」
室長のキビキビした言葉に、誰も文句が出なかった。
確かに室長の言うとおりだ。
テロの狙いは、次から次へと移っていく。
城門はその手始めだったのだ。
多くの者が事務室に留まって、ようすを見た。
状況は、芳しくなかった。
警察や消防が駆けつけ、あとから軍の兵士たちが駆けつけた。
巻き込まれなかった人々が、その活動を手助けしている。
死傷者が次々と運び出される。
生き埋めになった人々がほとんどだ。
ひと段落着いたところで、室長から解散するように言われ、自室に引き上げた。
マリーンは、怖がっている同僚とともにオレの部屋に来た。
テオの部屋がふたりの女性に提供され、テオはソファーで寝た。
その後、自爆テロも爆破もなく、日常に戻っていった。
ただ、城下の警備が強化され、見回る警官や兵士の数が倍近くに増えていた。
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