【065.客人】
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陛下に呼び出された。
前に呼び出され、陛下とふたりで食事したあの庭園に、だ。
今度も彼女とふたりかと思っていたが、そうではなかった。
その場には、陛下とひとりの男性。
その男性は、40代後半から50代前半で、髪を短めに切り、オールバックにしていた。
服装は、定番服だ。
その男が、オレに近づいてきた。
握手を求めようと右手を伸ばしてくる、笑顔で。
そのまなざしは、親しい友人を見るような目だ。
オレは見知っているような気がしたが、その男が誰なのか、わからなかった。
「あはは、その顔ではオレが誰なのか、わからないようだな」
その声も聞き覚えがあるが、やはりわからない。
その男の顔には、歴戦の傷跡があった。
すぐに記憶が浮かび上がった。
「サリオスか!」
うなずく男。
その手を取って、握手した。
「わからなかった。城内の誰かかと思ってた」
「そうだろうな」
「パオロ」と陛下。「話は座ってからにしよう」
「そうですね」
我々が座ると、料理が運ばれてきて、テーブルの上がいっぱいになった。
形式ばらない食事だ。
「なぜ、ここに?」と尋ねる。
「報告がてら、というところだな」
「報告?」
「〈エルゼンタール〉は」と陛下。「〈スベルト〉の領地となった」
「えっ?」
「その方が」とサリオス。「いいと判断した。オレは、王から領主という立場になったんだ」
「領主」
「つまり、領民を統べる人間だ。オレは、もともと王になるつもりはなかった。王の側近という位置がちょうどいい立場だった。だが、あの事件でおまえに王にされてしまった」
「その力はあったと思うが」
「上がいた方がオレとしてはいいんだよ。そこでみなと話し合った。もちろん、オレの地位のことではなく、〈スベルト〉との関係についてだ」
それぞれが料理に手を出しながら、会話は進む。
「両国の提携ではなくか?」
「〈エルゼンタール〉は、〈スベルト〉のような大きな国ではない。国とは言ってるが、村が集まってできてるようなもんだ。文化レベルも低いままだし。そこで〈スベルト〉に併合してもらおうと考えたわけだ」
「なるほど。〈スベルト〉の領土として活動していこうというわけだな」
「そうだ。それでも誰かが代表を務めねばならん。選ばれたのが、オレだったというわけだ」
「そうだったか。いや、おめでとう」
「とりあえずはな。〈スベルト〉の支援のおかげで、〈エルゼンタール〉は狩猟採集から抜け出ることができた」と陛下に頭を垂れるサリオス。
「〈スベルト〉としても領土が広がるのは喜ばしいことだ。国にとっても国民にとってもな」
「知識も増えますな」
「もちろんだ」
サリオスは、別れ際に「いつかまた訪れてくれ。歓迎するからな」と言った。
オレも「必ず行くよ」と約束した。
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