【245.通信方法】
続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。
その夜は、全員での立食形式での食事会となった。
もちろん、ウービー人は、輸送船で持ち込まれた食材を使った料理だ。
調理は、彼らのひとりが担当した。
ウービー人は、雑食性だった。
鋭い歯があるから、肉食ではないか、とも思ったのだが。
それら料理の見た目は、とてもおいしそうだ。
彼らは、水に錠剤を入れたものを飲んでいた。
水は、ピンク色に染まり、微細な泡が出ている。
シェロアに訊くと、単なるジュースだという。
お酒もあるが、こうした場所で酔うことをためらわれたのだとか。
彼らの食事のサンプルは、すでにアルに送ってある。
どうやら一部を除いて、〈スータン〉産の動植物は飲食可能らしい。
料理の載った皿の前に、プレートが置かれていた。
そのひとつを見ると、それぞれの種族名が書かれ、丸とバツで示されている。
どうやら連合使節団が、すでに食材をチェックしておいたらしい。
チェックは、専用の装置がある。
もともとは、ペダフ人とアツナ人がそれぞれの食材をチェックするために作られた。
その後、ソラ人が改良を加えて、一度のチェックで飲食可能かどうかがわかるようになっていた。
それを使えば、ウービー人の飲食可能なものがチェックできたかもしれない。
だが、今まで〈スータン〉には、その装置がなかった。
我々にもあれば、もっと早く飲食可能食物を知ることができただろうに。
「パオロ」と陛下。
「はい、陛下」
「こうして、外からの客人を迎えるのは、本当にうれしいな」
「はい」
「今後も来てくれるだろうか?」
「さぁ。その都度、封鎖プログラムを解除するのが大変だとは思いますが」
「そうか」
陛下の目は、その場の人々に向けられたままだ。
ペダフ人のヘイゼル代表が近づいてきた。
「パオロ、通訳を頼めるか?」
「喜んで」
「陛下」と会釈するヘイゼル代表。
陛下も会釈を返した。
「あなたがたのご尽力に感謝しております」とヘイゼル代表。
「いえ。ステーションからの回収要請がなくても、同じことをしていたでしょう。彼らもまた〈落とされ人〉なのですから。私たちと同じです」
「なるほど。ですが、あなたは、罪を犯して、落とされたわけではないでしょう? この惑星の御生まれと聞いておりますが」
「同じです。ここから出ていくことができないのですから」
「ふむ。まぁ、それはさておき、素晴らしい国ですね」
「ありがとうございます。これも今は亡き先王と国民の努力の賜物です」
「ほかにも国があるとか」
「はい。北大陸にいくつか。南大陸にもございます」
「交流の方は?」
「できるだけ。敵対する国もございますが、それは一部でしかありません」
「今回のことは、他国には?」
「今のところ、こちらからは何も。ただし、無線が傍受できる国では知られているかと」
「なるほど」
「いずれは兵士たちからウワサ話として、街に広まるかもしれません。箝口令は敷いていませんから。それでも黙っていてくれているようです」
「素晴らしい。一般大衆が彼ら見たさに、集まってこないとも限りませんからね」
「情報を小出しにしてやれば、それほどの騒ぎにはなりません」
「なぜ、そうだと?」
「“渡り竜”という空を飛ぶ動物がいます。北から渡ってくるのですが、この城を目指してくる家族がいます。その姿をネットで国民に送っているのです。街なかでは、確かにちょっとした騒ぎにはなりますが、城に入り込んでまで、見ようとする者はいませんでした」
「動物と異星人では、その度合いは大きく違うかと思いますが」
「確かにそうですね。ですが、歓迎はしてくれるでしょう。彼らの姿を怖がる人はいるかもしれませんが、フェレが印象を和らげてくれるはずです」
「フェレ?」とオレを見るヘイゼル代表。
「フェレとは」とオレが説明する。「ウービー人の共生動物です。可愛いですよ」
「共生動物?」
「彼らの首元にフードをたたんだような部分がありますよね」
そう言われて、ヘイゼル代表は彼らを見る。
「ああ、ありますね」
「あの中にフェレが入っています。フェレは、ウービー人の衛生管理をしてくれているのです」
「衛生管理を?」
「そうです。ツノやウロコ、歯などを清潔に保っているのです。軽症であれば、フェレが舐めて治してくれます」
「ほぉ」
「会合で、話し合っている最中でもフェレを出しているくらいでしてね。その愛くるしさに、しばしば話が進まなくなるほどです」
「それは、見てみたいですね」
「後日、見せてもらえますよ」
ヘイゼル代表は、うなずいた。
「楽しみにしましょう」
シェロアたちのところには、人だかりができていた。
ソラ人が通訳をしている。
本当は、連合共通語であるペダフ語で、ウービー人との意思疎通を図るべきだったのだが、オレのペダフ語は科学分野に疎く、また記憶している資料もソラ語がほとんどだった。
そのため、まずはソラ語で彼らとの意思疎通を果たし、その後、ペダフ語へと移行すればいい、と判断したのだ。
だから今は通訳が必要だった。
人だかりの中から、男性が叫んだ。「重力波だ!」
「パオロ」と陛下。「なんだ?」
「さぁ。“重力波”と聞こえましたが」
叫んだ男性は、興奮している。
「彼は天文学者です。どうしたんだろう?」とヘイゼル代表が首を傾げ、彼らのもとに行く。
我々も一緒に移動した。
「ピーター」とヘイゼル代表がその男に尋ねる。「どうしたね? そんなに興奮して」
「ああ、ヘイゼル代表。彼らの通信方法がわかりました」
「何? どうして天文学者である君がわかるんだ?」
「わかりますよ」と興奮したままの声でツバを飛ばす。「だって、天文学では当たり前のことなんですから」
「どういうことだ?」
「我々が天文を観測する手段は、いろいろとあります。可視光、赤外線、紫外線、X線、電波などなどです」
「そうだね」
「その中には、重力波も含まれています」
オレは、ふたりの会話を陛下に通訳しながらも、どんな話になるのかがわからずにいた。
「それで?」
「我々は、重力波を観測するだけで、それを通信に使おうとは考えてこなかった。でも彼らは通信に使ったんですよ」
「どうして、そうだとわかったのかね?」
「私は、彼らの話を聞いていて、それが“波”であること、光や電波のようには遮蔽できないことを知りました。そんなものは、私の知る限り、重力波しかありません」
「わかった。重力波で通信しているとしよう。彼らは、なぜそれを選択したんだ?」
「わかりません。電波技術を彼らが持っていないとは、考えられません。電波技術は比較的簡単な仕組みですから。少なくても近距離通信には使っていたはずです」
“重力波”か。
オレの知識の中には、天文学での観測に使われる、というくらいのものしかない。
あとは、辞書の中の説明だけだ。
それを陛下に御説明する。
「説明を聞いても、なんのことだかわからんな」
「はい」
ウービー人への質問が続いた。
その結果わかったのは、“ほかの宇宙人は通信方法として、重力波を使っているはずだ”と彼らが考えていたことだった。
電波やレーザー光などでは、途中に惑星があったら遮蔽されてしまう。
だが、重力波であれば、たとえ、惑星があっても遮蔽されずにすむ、と。
理論上、重力波が存在することがわかり、彼らは重力波検出に力を注いだ。
また、検出テストのために重力波発信技術にも力を注ぎ、技術が出来上がっていった。
確立された技術は、一般利用もされる。
そして、異星人との接触に、並々ならぬ熱意とともに、彼らは重力波通信を採用した。
そのことをアルに話す。
(重力波ですか。それは盲点でした。それにここには検出技術がありませんから、どっちにしろ、わからなかったでしょう)
(SXEの技術で、通信は可能なのかね?)
(重力波通信は無理ですね。観測するためにしか発達してきませんでしたから。送信技術がもともとないんですよ)
(なるほど。つまり、彼ら独自のものだ、ということになるね)
(はい。理由から考えると彼らの方が正しいでしょうね。ただ、重力波といっても、その速度は光の速度です。彼らの本星との通信は無理でしょう)
(とするとほかにも通信手段が?)
(可能性としてはありますが)
(あまりない、と?)
(なんとも。というか、我々と接触しているのですから、そのことを本星に報告するのでは?)
(ああ、なるほど。だが、それらしいことにはなっていない、と)
(はい)
(わかった)
シェロアたちへの質疑応答が続けられていた。
ソラ人の通訳が大変そうにしている。
自分でも質問をしたいだろうに。
読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)




