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落とされ人  作者: カーブミラー


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243/259

【243.新たな輸送船】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 軌道上に使節団の船が到着した。

 ステーションとのドッキングも、すぐに終わるだろう。


 司令官からの呼び出しがあった。

(なんでしょう?)

(地上に船を降ろしたい。可能だろうか?)

(降ろすことは可能ですが、まだ封鎖プログラムが解除されていませんから、上昇はできませんよ?)

(解除される予定なのだろう?)

(はい)

(ならば、降ろしても問題はないな)

(確かに。それでどのような目的で?)

(地上の彼らのための支援物資と、帰還のための船だ。追加の人員も降ろしたい)

(追加の人員? 何名を?)

(6名。ネネカたちと補助要員だ。それから別に労働者を3体)

(労働者?)

(ああ)とイメージを送ってくる司令官。

 それは、爆発した輸送船から放り出され、オレが調査船に回収した黒褐色のヒューマノイドだった。

 司令官から送られてきたのは、イメージだけではなく、蔑みの念もともなっていた。

 どうしてだろう?

(わかりました)


 新たな輸送船が、母船から滑り出てきた。

 撃墜された輸送船と同型だ。

 これを見て、使節団一行がうろたえる。

 彼らは、ちょうど、ステーションから城との通信を行なっている最中だった。

 そのようすをオレはチェックしていた。

 別に彼らのうろたえる姿を楽しんでいたわけではない。

 いや、少しは楽しんでいるのかもしれない。

 ヘイゼル代表は、ようすを見よう、とその場の人間に平静を求めた。

(ヘイゼル代表)と呼びかけたのは、彼が自室に入ってからのことだった。

(パオロ、宇宙船から輸送船がそっちに降りていく)

(わかっています。事前にあちらから聞かされていました)

(なぜ、教えてくれなかった?)

(使節団がどうして彼らの動向を知っているのか、ステーション側は知りませんから)

(ああ、そういうことか)

(はい。ちなみに輸送船の目的は、支援物資と人員補充のため、それと地上の彼らが母船に戻るためのものです)

(戻る?)

(あなたがたとの会見を終えれば、彼らが母船に帰還するのは、当然だと思いますが)

(そういう意味か。わかった)

(では、これで)と念話を終えた。


 星空の中、輸送船が螺旋を描きながら降りてきた。

 反重力システムではない。

 船体を変形させて、翼を出し、滑空しているのだ。

 逆噴射していたことなどから考えると、連合加盟以前のソラ人レベルの技術だ。

 着陸予定地点は、〈スベルト〉軍の基地。

 これは事前に協議し、こちらからの要望として、シェロアが司令官に連絡していた。

 シェロアたち6人は、カプセルから、車で基地に移動。

 今後は、そこを中心に行動することになる。

 輸送船が、三つの着陸脚を出す。

 タイヤがある。

 滑走路を走って、停止するのだろう。

 滑走路上のすべての航空機や整備車などは、すでに移動が済んでいる。

 滑走路には、誘導灯が点けられ、着陸を補助している。

 輸送船は、機首をあげ、滑走路へと進入してきた。

 ゆっくりと高度が下がっていき、やがて後輪が接地し、機首も下がって前輪も接地。

 そのまま、滑走路を行きながら、逆噴射をはじめた。

 翼も上下に張り出して、空気抵抗を増している。

 輸送船は、スピードを落としながら、滑走路の端まで行くと、停止した。

 それから前輪を左へと切ると、滑走路を戻りはじめる。

 滑走路誘導スタッフが滑走路に走り出て、赤く光るハンドライトで、輸送船を誘導しはじめた。

 輸送船は、その指示に従って、移動していく。

 滑走路から外れ、エプロンへと進み、そこで停止指示が出され、停止した。

 驚いたことに輸送船は下降しはじめた。

 着陸脚が引っ込んでいっている。

 そのまま、船体底部が、接地した。

 階段のあるステップ車が準備されていたのだが、どうやら必要ないらしい。

 船体前方左側のハッチが地面へと降りてくる。

 ハッチ内側には階段があった。

 食料と通信機を運んできたカプセルと同じだ。

 ひとりのウービー人が出てきた。

 メタルブルーの宇宙服を着ている。

 ヘルメットはしていない。

 そのウービー人があたりを見回し、我々を見つけた。

 後ろに声をかけ、階段を降りてくる。

 その後ろからも、次々とウービー人が降りてくる。

 全部で6人が、地上に降りた。

 最初のメタルブルーが、船内に声をかける。

 すると、3人の労働者が、荷物を抱えて降りてきた。

 彼らが着ているのは、メタリックではなく、黒褐色の宇宙服だった。

 労働者階級だということか。

 我々が、彼らに近づく。

 ウービー人同士が、おたがいに再会を喜び合い、それからシェロアが6人を紹介してくれた。

 もちろん、その中には、ネネカたち3人が含まれていたが、おたがいに初めて会う演技をした。

 3人の首元のバッグが大きくなっているのに気付いた。

 あとで訊くことにしよう。


 会議室に入る。

 新たな6人は、背中を丸めなければ、ドアを入れなかった。

 そこには、陛下が待っていた。

 彼女は、室内から着陸の模様を見ていたのだ。

 危険はないとはいえ、念のため、我々と一緒には出迎えずにいた。

 新たな6人が紹介され、それぞれの席に落ち着く。

 3人の労働者は、荷物を持ったまま、彼らの後ろに立っている。

 メタルブルーは、彼ら労働者のことを“ブーブ”と呼んでいた。

 全員の前に、水の入ったグラスが置かれた。

 陛下が立ち上がり、挨拶をする。

 ウービー人に伝わりやすいようにと、ゆっくりとした口調を心掛けている。

「みなさんの到着を歓迎します。使節団からも、明日降りてくる、と連絡がありました。それまでは、用意した部屋でくつろいでください」

 シェロアが立ち上がる。

「ありがとう、陛下。感謝、します」

 全員が立ち上がり、グラスを持ち、水を飲んだ。

 それからあとは、彼らだけを残し、ソラ人は会議室を出た。

「パオロ」

「はい、陛下」

「おまえもここに残って、彼らの便宜を図ってくれ」

「わかりました」

「使節団には、すでにわかっている情報を送っておいた。送信方法で若干もめたがな」

「そうでしょう。送信方法は、この国独自で決めたものですからね」

 同じ電波通信でも音声をそのまま送る方法と、現在の〈スベルト王国〉で主流になっているデジタルで送る方法とがある。

 そのデジタルで送るにしても、地上と上とはやり方が違うのだ。

 やり方が違えば、受信できても内容がわからない。

「うむ」(パオロ)

 念話に切り替えたのがわかる。

(はい、陛下)

(使節団とは連絡を取ったのか? テレパシーで)

(はい。事前に多少の話を)

(ウービー人との衝突はなさそうか?)

(おそらく)

(わかった)

 陛下は、そのまま、城へと帰っていかれた。

 陛下を見送ったあと、「先生」と声をかけられ、振り返るとそこには、テオがいた。

「やぁ」

「今度は宇宙人ですか」とニコヤカだ。

「うん。それで頼んだものは?」

「すでに用意してあります」

「では、すぐにやってしまおう」

「はい、先生」

 別室に入り、イスに座ると、テオがすぐにオレの頭にセッティングする。

 今までオレの記憶から、情報を取り出してきた装置につながれる。

 ウービー人とのやり取りで、オレの頭の中には、新たな情報が蓄積されていた。

 それを取り出すのだ。


 ネネカの部屋を訪れた。

 とはいってもパイロット3人の相部屋だが。

(どうした? パオロ)とネネカ。

(調子はどうだね?)と自分の頭を指す。

 彼のツノのことを話題にしているのだ。

 彼から笑みの念。

(もう慣れた。おかげで誰にも気付かれずに、母船に戻ることができた)

(それはよかった。ところで、君たちのバッグが大きくなっている気がするんだが)

 彼が、ほかのふたりと見交わす。

 それからオレを見た。

 バッグを開ける。

 小さな頭が出てきて、鼻をヒクヒクさせ、まわりのようすを窺ってから出てきた。

 フェレだ。

 リスによく似ている。

 そのフェレが、2匹出てきた。

 そのあとから2匹が顔を出し、戸惑いながらまわりを確認して、それから出てきた。

(おや、増えたのかね?)

(死んだ3人のフェレを受け継いだ)

(死んだ3人の?)

 ほかのふたりもバッグを開けた。

 それぞれのバッグから4匹ずつ、現れた。

(ああ)と納得した。

(彼らは我々の生命と魂を救った。彼らの生命は失われたが、魂は残った。我々がフェレを受け継ぐのは当然だ。だから申請した。申請は受理された)

(そうだったか)

(それに)とほかのふたりを見た。微笑んだのだろう、ふたりも似たような顔をした。(我ら3人も、そろそろフェレを申請しようとしていた。身体が大きくなって、2匹では大変になってきていたからだ)

(なるほど。フェレを受け継ぐことは、君たちにとっては、光栄なことなのだろうね)

(そうだ。その分、責任も負わねばならないが)

(わかるよ。ほかに必要なことはあるかね?)

(いいや)

(そうか。何かあれば、言ってくれ)

(わかった)

 部屋を出た。

 フェレを受け継ぐ者がいれば、彼らは安心なのだろうな。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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