【243.新たな輸送船】
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軌道上に使節団の船が到着した。
ステーションとのドッキングも、すぐに終わるだろう。
司令官からの呼び出しがあった。
(なんでしょう?)
(地上に船を降ろしたい。可能だろうか?)
(降ろすことは可能ですが、まだ封鎖プログラムが解除されていませんから、上昇はできませんよ?)
(解除される予定なのだろう?)
(はい)
(ならば、降ろしても問題はないな)
(確かに。それでどのような目的で?)
(地上の彼らのための支援物資と、帰還のための船だ。追加の人員も降ろしたい)
(追加の人員? 何名を?)
(6名。ネネカたちと補助要員だ。それから別に労働者を3体)
(労働者?)
(ああ)とイメージを送ってくる司令官。
それは、爆発した輸送船から放り出され、オレが調査船に回収した黒褐色のヒューマノイドだった。
司令官から送られてきたのは、イメージだけではなく、蔑みの念もともなっていた。
どうしてだろう?
(わかりました)
新たな輸送船が、母船から滑り出てきた。
撃墜された輸送船と同型だ。
これを見て、使節団一行がうろたえる。
彼らは、ちょうど、ステーションから城との通信を行なっている最中だった。
そのようすをオレはチェックしていた。
別に彼らのうろたえる姿を楽しんでいたわけではない。
いや、少しは楽しんでいるのかもしれない。
ヘイゼル代表は、ようすを見よう、とその場の人間に平静を求めた。
(ヘイゼル代表)と呼びかけたのは、彼が自室に入ってからのことだった。
(パオロ、宇宙船から輸送船がそっちに降りていく)
(わかっています。事前にあちらから聞かされていました)
(なぜ、教えてくれなかった?)
(使節団がどうして彼らの動向を知っているのか、ステーション側は知りませんから)
(ああ、そういうことか)
(はい。ちなみに輸送船の目的は、支援物資と人員補充のため、それと地上の彼らが母船に戻るためのものです)
(戻る?)
(あなたがたとの会見を終えれば、彼らが母船に帰還するのは、当然だと思いますが)
(そういう意味か。わかった)
(では、これで)と念話を終えた。
星空の中、輸送船が螺旋を描きながら降りてきた。
反重力システムではない。
船体を変形させて、翼を出し、滑空しているのだ。
逆噴射していたことなどから考えると、連合加盟以前のソラ人レベルの技術だ。
着陸予定地点は、〈スベルト〉軍の基地。
これは事前に協議し、こちらからの要望として、シェロアが司令官に連絡していた。
シェロアたち6人は、カプセルから、車で基地に移動。
今後は、そこを中心に行動することになる。
輸送船が、三つの着陸脚を出す。
タイヤがある。
滑走路を走って、停止するのだろう。
滑走路上のすべての航空機や整備車などは、すでに移動が済んでいる。
滑走路には、誘導灯が点けられ、着陸を補助している。
輸送船は、機首をあげ、滑走路へと進入してきた。
ゆっくりと高度が下がっていき、やがて後輪が接地し、機首も下がって前輪も接地。
そのまま、滑走路を行きながら、逆噴射をはじめた。
翼も上下に張り出して、空気抵抗を増している。
輸送船は、スピードを落としながら、滑走路の端まで行くと、停止した。
それから前輪を左へと切ると、滑走路を戻りはじめる。
滑走路誘導スタッフが滑走路に走り出て、赤く光るハンドライトで、輸送船を誘導しはじめた。
輸送船は、その指示に従って、移動していく。
滑走路から外れ、エプロンへと進み、そこで停止指示が出され、停止した。
驚いたことに輸送船は下降しはじめた。
着陸脚が引っ込んでいっている。
そのまま、船体底部が、接地した。
階段のあるステップ車が準備されていたのだが、どうやら必要ないらしい。
船体前方左側のハッチが地面へと降りてくる。
ハッチ内側には階段があった。
食料と通信機を運んできたカプセルと同じだ。
ひとりのウービー人が出てきた。
メタルブルーの宇宙服を着ている。
ヘルメットはしていない。
そのウービー人があたりを見回し、我々を見つけた。
後ろに声をかけ、階段を降りてくる。
その後ろからも、次々とウービー人が降りてくる。
全部で6人が、地上に降りた。
最初のメタルブルーが、船内に声をかける。
すると、3人の労働者が、荷物を抱えて降りてきた。
彼らが着ているのは、メタリックではなく、黒褐色の宇宙服だった。
労働者階級だということか。
我々が、彼らに近づく。
ウービー人同士が、おたがいに再会を喜び合い、それからシェロアが6人を紹介してくれた。
もちろん、その中には、ネネカたち3人が含まれていたが、おたがいに初めて会う演技をした。
3人の首元のバッグが大きくなっているのに気付いた。
あとで訊くことにしよう。
会議室に入る。
新たな6人は、背中を丸めなければ、ドアを入れなかった。
そこには、陛下が待っていた。
彼女は、室内から着陸の模様を見ていたのだ。
危険はないとはいえ、念のため、我々と一緒には出迎えずにいた。
新たな6人が紹介され、それぞれの席に落ち着く。
3人の労働者は、荷物を持ったまま、彼らの後ろに立っている。
メタルブルーは、彼ら労働者のことを“ブーブ”と呼んでいた。
全員の前に、水の入ったグラスが置かれた。
陛下が立ち上がり、挨拶をする。
ウービー人に伝わりやすいようにと、ゆっくりとした口調を心掛けている。
「みなさんの到着を歓迎します。使節団からも、明日降りてくる、と連絡がありました。それまでは、用意した部屋でくつろいでください」
シェロアが立ち上がる。
「ありがとう、陛下。感謝、します」
全員が立ち上がり、グラスを持ち、水を飲んだ。
それからあとは、彼らだけを残し、ソラ人は会議室を出た。
「パオロ」
「はい、陛下」
「おまえもここに残って、彼らの便宜を図ってくれ」
「わかりました」
「使節団には、すでにわかっている情報を送っておいた。送信方法で若干もめたがな」
「そうでしょう。送信方法は、この国独自で決めたものですからね」
同じ電波通信でも音声をそのまま送る方法と、現在の〈スベルト王国〉で主流になっているデジタルで送る方法とがある。
そのデジタルで送るにしても、地上と上とはやり方が違うのだ。
やり方が違えば、受信できても内容がわからない。
「うむ」(パオロ)
念話に切り替えたのがわかる。
(はい、陛下)
(使節団とは連絡を取ったのか? テレパシーで)
(はい。事前に多少の話を)
(ウービー人との衝突はなさそうか?)
(おそらく)
(わかった)
陛下は、そのまま、城へと帰っていかれた。
陛下を見送ったあと、「先生」と声をかけられ、振り返るとそこには、テオがいた。
「やぁ」
「今度は宇宙人ですか」とニコヤカだ。
「うん。それで頼んだものは?」
「すでに用意してあります」
「では、すぐにやってしまおう」
「はい、先生」
別室に入り、イスに座ると、テオがすぐにオレの頭にセッティングする。
今までオレの記憶から、情報を取り出してきた装置につながれる。
ウービー人とのやり取りで、オレの頭の中には、新たな情報が蓄積されていた。
それを取り出すのだ。
ネネカの部屋を訪れた。
とはいってもパイロット3人の相部屋だが。
(どうした? パオロ)とネネカ。
(調子はどうだね?)と自分の頭を指す。
彼のツノのことを話題にしているのだ。
彼から笑みの念。
(もう慣れた。おかげで誰にも気付かれずに、母船に戻ることができた)
(それはよかった。ところで、君たちのバッグが大きくなっている気がするんだが)
彼が、ほかのふたりと見交わす。
それからオレを見た。
バッグを開ける。
小さな頭が出てきて、鼻をヒクヒクさせ、まわりのようすを窺ってから出てきた。
フェレだ。
リスによく似ている。
そのフェレが、2匹出てきた。
そのあとから2匹が顔を出し、戸惑いながらまわりを確認して、それから出てきた。
(おや、増えたのかね?)
(死んだ3人のフェレを受け継いだ)
(死んだ3人の?)
ほかのふたりもバッグを開けた。
それぞれのバッグから4匹ずつ、現れた。
(ああ)と納得した。
(彼らは我々の生命と魂を救った。彼らの生命は失われたが、魂は残った。我々がフェレを受け継ぐのは当然だ。だから申請した。申請は受理された)
(そうだったか)
(それに)とほかのふたりを見た。微笑んだのだろう、ふたりも似たような顔をした。(我ら3人も、そろそろフェレを申請しようとしていた。身体が大きくなって、2匹では大変になってきていたからだ)
(なるほど。フェレを受け継ぐことは、君たちにとっては、光栄なことなのだろうね)
(そうだ。その分、責任も負わねばならないが)
(わかるよ。ほかに必要なことはあるかね?)
(いいや)
(そうか。何かあれば、言ってくれ)
(わかった)
部屋を出た。
フェレを受け継ぐ者がいれば、彼らは安心なのだろうな。
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