【239.謁見】
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謁見の間。
中には、まだ誰もいなかった。
玉座の後ろから、評議会のメンバーが現れた。
それぞれが玉座の左右に陣取る。
最後に陛下が現れて、玉座に座った。
「よくぞ、戻った、パオロ」と陛下。
「はい、陛下。御覧のとおり、客人たちを御連れいたしました」
「うむ。言葉は、どうだ?」
「片言ではございますが、それなりに話すことができます」
「そうか。話すうえで、避けた方がいい話題はあるか?」
「今のところは、これといって。彼らから聞けていない部分はあるものでして」
「うむ。では、紹介してもらえるか」
「かしこまりました」
シェロアたちひとりひとりを紹介すると、陛下はひとりひとりに会釈した。
シェロアたちも陛下に合わせて、頭を下げた。
全員の紹介を終えると、しばしの間が空く。
評議会の面々は、動揺しないように、自分を抑えているようだ。
陛下がシェロアに向かって、口を開く。
「あなたがたの仲間が死んだこと、悲しいです」
シェロアがその言葉を理解するのに少しかかる。
それから鼻を開いた。
「ありがとう。私たち、悲しい。でも、心配、いらない。フェレ、次、行く」
陛下が首を傾げて、オレを見た。
オレは笑みを浮かべ、シェロアに声をかけた。
「シェロア、フェレ、見せて」
シェロアが、首元のバッグを開ける。
すぐに小さな頭が出てきた。
鼻をヒクヒクさせて、まわりを見る。
それからバッグから出てきた。
「あれがフェレです、陛下」
陛下だけでなく、評議会の面々も、目をパチクリさせている。
「ずいぶんと……可愛いな」
「はい。言っておきますが、ペットではありません。共生動物です。彼らの衛生管理をしているようですね」
「衛生管理? その小動物が?」
「はい。古くなったウロコを食べるとか、ツノや歯をきれいにしたりするのです」
「歯まで? ああ、大型の魚の口の中に、小型の魚が入っていって、掃除しているのを見たことがある」
「それと同じですね。このフェレに死者が魂を預け、次の人に受け継がせるのだとか。フェレが死んだとき、初めてその魂が先祖の待つ国に行くのだそうです」
「では、彼らにとっては大事な動物なのだな」
「はい」
「全員がフェレを飼っているのか?」
「はい。ひとりにつき、最低で2匹。多い者になると10匹以上になるとか」
「なぜ、そんなに違いがある?」
「彼らの個体によって、体格が異なるからです。フェレの数が必要な者は、それだけ大きな身体をしているのです」
「なるほど。それほどに違うというわけか」
「はい」
「シェロア」と陛下が声をかけると、シェロアが触手をピンと伸ばして、ホオにくっつけた。ソラ人で言うところの“背筋をピンッと伸ばした”状態だ。「母船と連絡がついたそうだな」と人差し指で上を示された。
ピンとなっていた触手が波打った。
緊張が少し解けたのだろう。
「はい。通信機、送って、くれた」
陛下がうなずく。「それで、今後のことは、どう言ってきている?」
「陛下」とオレ。「それは私から」
「うむ」
「彼らは、こちらの、つまり上の、ですね、動向を見るつもりのようで、そのあいだは、地上で、我々との交流を継続する予定だそうです。そうすれば、使節団が到着してもすぐに対応できるだろう、と」
「なるほど。その上からだが、残念ながら、その使節団が来ることすら伝えてきていない」
「なんと。ですが――」
オレはそこで口ごもった。
アルからは、使節団が向かってきていることを聞かされてはいる。
だが、地上からの観測では、まだ確認できていないのだろう。
ならば、来ている、などとは言えない。
「こちらの状況は?」
「伝えている。だが、向こうからはこれといった指示もない」
「このままでは彼らは――」
「わかっている。封鎖が解けねば、彼らの迎えも降りられない。となれば、彼らはずっとこの〈スータン〉に留まることになる」
「困りましたね」
「うむ」
「モーガン卿」と男性の声。そちらを見る。評議会議長だ。「彼らは、なぜこの〈スータン〉にやってきたのでしょうか?」
「彼らは、昔の我々と同じ疑問を持っていたのです」
「疑問?」
「正確には、ソラ人が抱いてきた疑問ですがね」
「その疑問とは?」
「この宇宙に我々のような知的存在は、ほかにいないのではないか、孤独なのではないか、と」
「なるほど。今では、連合が組まれていますが、それまでは我々以外には知的存在は発見できなかった」
「そうです。彼らも同じ思いだったのです。だから探索に出た。この〈レダン星系〉が選ばれたのがどうしてなのかは、まだ聞けていません。ですが、別の知的存在を探していたことは確かです」
「探索に出たのは、彼らだけなのでしょうか?」
シェロアに向きなおって、訊いた。
「母船、ほかにも、ある?」
「ある」そう言って、右手を持ち上げ、手のひらを見せ、親指と人差し指を伸ばし、中指と薬指を折った。
議長に振り返り「2隻あるそうです」と答えた。
「計3隻……彼らの星には、どのくらいの船があるんでしょう? 3隻というのは少なすぎるようですが。探索目的以外の船もあるのでは」
「なるほど」とシェロアに向きなおり、「宇宙船、母船3隻のほかにもある? 違う目的で」
「ある。たくさん。でも、遠く、いけない。設備、ない」
「設備とは?」
「船の中、生きる、設備。空気、水、食べ物、いろいろ」
「そういうことか」議長に振り返り、「どうやら長期の航宙は、生命維持のための設備が必要なようですね」
「なるほど。それでも近くならそうした設備がなくても行ける、と」
「まぁ、短期間用の生命維持装置はあるんでしょうが。長期間ともなると」
「探索先に水や食料がある、とわかっているわけでもないでしょうからね」
「ええ」
「議長」と陛下が口を開いた。「質問は、そこまでにしよう。別室で、客人にくつろいでもらってはどうか」
「そうですね、陛下」
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