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落とされ人  作者: カーブミラー


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239/258

【239.謁見】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 謁見の間。

 中には、まだ誰もいなかった。

 玉座の後ろから、評議会のメンバーが現れた。

 それぞれが玉座の左右に陣取る。

 最後に陛下が現れて、玉座に座った。

「よくぞ、戻った、パオロ」と陛下。

「はい、陛下。御覧のとおり、客人たちを御連れいたしました」

「うむ。言葉は、どうだ?」

「片言ではございますが、それなりに話すことができます」

「そうか。話すうえで、避けた方がいい話題はあるか?」

「今のところは、これといって。彼らから聞けていない部分はあるものでして」

「うむ。では、紹介してもらえるか」

「かしこまりました」

 シェロアたちひとりひとりを紹介すると、陛下はひとりひとりに会釈した。

 シェロアたちも陛下に合わせて、頭を下げた。

 全員の紹介を終えると、しばしの間が空く。

 評議会の面々は、動揺しないように、自分を抑えているようだ。

 陛下がシェロアに向かって、口を開く。

「あなたがたの仲間が死んだこと、悲しいです」

 シェロアがその言葉を理解するのに少しかかる。

 それから鼻を開いた。

「ありがとう。私たち、悲しい。でも、心配、いらない。フェレ、次、行く」

 陛下が首を傾げて、オレを見た。

 オレは笑みを浮かべ、シェロアに声をかけた。

「シェロア、フェレ、見せて」

 シェロアが、首元のバッグを開ける。

 すぐに小さな頭が出てきた。

 鼻をヒクヒクさせて、まわりを見る。

 それからバッグから出てきた。

「あれがフェレです、陛下」

 陛下だけでなく、評議会の面々も、目をパチクリさせている。

「ずいぶんと……可愛いな」

「はい。言っておきますが、ペットではありません。共生動物です。彼らの衛生管理をしているようですね」

「衛生管理? その小動物が?」

「はい。古くなったウロコを食べるとか、ツノや歯をきれいにしたりするのです」

「歯まで? ああ、大型の魚の口の中に、小型の魚が入っていって、掃除しているのを見たことがある」

「それと同じですね。このフェレに死者が魂を預け、次の人に受け継がせるのだとか。フェレが死んだとき、初めてその魂が先祖の待つ国に行くのだそうです」

「では、彼らにとっては大事な動物なのだな」

「はい」

「全員がフェレを飼っているのか?」

「はい。ひとりにつき、最低で2匹。多い者になると10匹以上になるとか」

「なぜ、そんなに違いがある?」

「彼らの個体によって、体格が異なるからです。フェレの数が必要な者は、それだけ大きな身体をしているのです」

「なるほど。それほどに違うというわけか」

「はい」

「シェロア」と陛下が声をかけると、シェロアが触手をピンと伸ばして、ホオにくっつけた。ソラ人で言うところの“背筋をピンッと伸ばした”状態だ。「母船と連絡がついたそうだな」と人差し指で上を示された。

 ピンとなっていた触手が波打った。

 緊張が少し解けたのだろう。

「はい。通信機、送って、くれた」

 陛下がうなずく。「それで、今後のことは、どう言ってきている?」

「陛下」とオレ。「それは私から」

「うむ」

「彼らは、こちらの、つまり上の、ですね、動向を見るつもりのようで、そのあいだは、地上で、我々との交流を継続する予定だそうです。そうすれば、使節団が到着してもすぐに対応できるだろう、と」

「なるほど。その上からだが、残念ながら、その使節団が来ることすら伝えてきていない」

「なんと。ですが――」

 オレはそこで口ごもった。

 アルからは、使節団が向かってきていることを聞かされてはいる。

 だが、地上からの観測では、まだ確認できていないのだろう。

 ならば、来ている、などとは言えない。

「こちらの状況は?」

「伝えている。だが、向こうからはこれといった指示もない」

「このままでは彼らは――」

「わかっている。封鎖が解けねば、彼らの迎えも降りられない。となれば、彼らはずっとこの〈スータン〉に留まることになる」

「困りましたね」

「うむ」

「モーガン卿」と男性の声。そちらを見る。評議会議長だ。「彼らは、なぜこの〈スータン〉にやってきたのでしょうか?」

「彼らは、昔の我々と同じ疑問を持っていたのです」

「疑問?」

「正確には、ソラ人が抱いてきた疑問ですがね」

「その疑問とは?」

「この宇宙に我々のような知的存在は、ほかにいないのではないか、孤独なのではないか、と」

「なるほど。今では、連合が組まれていますが、それまでは我々以外には知的存在は発見できなかった」

「そうです。彼らも同じ思いだったのです。だから探索に出た。この〈レダン星系〉が選ばれたのがどうしてなのかは、まだ聞けていません。ですが、別の知的存在を探していたことは確かです」

「探索に出たのは、彼らだけなのでしょうか?」

 シェロアに向きなおって、訊いた。

「母船、ほかにも、ある?」

「ある」そう言って、右手を持ち上げ、手のひらを見せ、親指と人差し指を伸ばし、中指と薬指を折った。

 議長に振り返り「2隻あるそうです」と答えた。

「計3隻……彼らの星には、どのくらいの船があるんでしょう? 3隻というのは少なすぎるようですが。探索目的以外の船もあるのでは」

「なるほど」とシェロアに向きなおり、「宇宙船、母船3隻のほかにもある? 違う目的で」

「ある。たくさん。でも、遠く、いけない。設備、ない」

「設備とは?」

「船の中、生きる、設備。空気、水、食べ物、いろいろ」

「そういうことか」議長に振り返り、「どうやら長期の航宙は、生命維持のための設備が必要なようですね」

「なるほど。それでも近くならそうした設備がなくても行ける、と」

「まぁ、短期間用の生命維持装置はあるんでしょうが。長期間ともなると」

「探索先に水や食料がある、とわかっているわけでもないでしょうからね」

「ええ」

「議長」と陛下が口を開いた。「質問は、そこまでにしよう。別室で、客人にくつろいでもらってはどうか」

「そうですね、陛下」


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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