【235.会見】
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とにかくカプセル前にテントを張った。
それと同時に、城への連絡も行なわれた。
こちらの判断に任せる、という答えが返ってきた。
できれば城に招待したい、という陛下の御言葉と一緒に。
テントには、会議用のテーブルとイスが並べられた。
テーブルを囲むようにして、座る。
彼らは、ヘルメットを脱いで、別に用意したテーブルに置いた。
そのツノは、確かに個性があった。
長さもそうだが、枝分かれの仕方も、違う。
基本的に外側には枝分かれがない。
内側だけだ。
まぁ、外側にあったら、邪魔にしかならないだろう。
テーブルに透明な水差しが置かれた。
その水差しには、透明な液体が入っている。
水だろう、と誰でも思うはずだが、それをどう説明するかが、問題だ。
テーブルの上に置かれたホワイトボードに、川の流れを描き、その川からコップで水を汲み、濾過器を通し、炎のついたコンロの鍋へと矢印で示す。
これは、“川の水を濾過したうえで煮沸消毒した”ということを示している。
兵士のひとりが持ってきた一枚の紙を受け取り、それをもとにホワイトボードに新たな絵を描く。
水の入ったコップ。
その下の方に、線を書き入れ、そこから矢印を描き、その先に円グラフを描く。
円グラフの内容を簡単な絵で示した。
コップの水にも。
「本当に伝わるんですか?」と心配そうな指揮官。
「これは、たいていの科学者なら、特に化学者ならすぐにわかるものなんだ」
彼らを見る。
彼らは、オレが描いた絵を見て、納得したようすだ。
兵士に指示して、水差しからコップに水を注ぎ入れさせ、テーブルに着いた全員の前に置かせた。
まずは、オレが飲んでみせた。
安全を伝えるために。
それを見てから、シェロアがグラスを持ち上げ、口元に持っていった。
触手がグラスに触れ、グラスの上をヒラヒラと漂う。
指揮官が耳元でささやいた。
「何をしているんでしょうか?」
「ああしたヒゲのある魚がいたな。そのヒゲには、神経が集まっていて、ニオイや味がわかるんだとか。もしかしたら同じ機能があるのかもしれない」
「なるほど」
触手が、水に触れた。
充分な時間をかける。
ほかの宇宙人が、シェロアのようすを窺っている。
シェロアは、触手をグラスから出して、口を開け、グラスの中身をゆっくりと流し入れた。
ゴクリとノドが鳴った。
グラスがテーブルに置かれ、鼻息が漏れた。
シェロアは、ほかの面々に顔を向け、ひと言と呟いた。
それを受けて、いっせいに水を飲む宇宙人たち。
オレが描いたのは、コップの中の水に含まれる成分を、分子の絵で表現したものだ。
水分子は、水素と酸素の結合を記す。
結合の角度も水を示している。
104・5度
文字はわからなくても、その構造ならわかる。
宇宙文明共通の知識なのだから。
この会見では、テレパシーを使わない。
そのことに関しては、すでにシェロアとも話し合っていた。
テレパシーを使えば、おたがいの理解も早い。
だが、オレの能力は秘密なのだから、使うわけにはいかない。
それにシェロアたちが今後、別の異星種族と出会う可能性もある。
そうしたら今回の会見のやり方が役に立つ、そう言って、シェロアを納得させた。
おたがいに水を飲んで、気分を落ち着かせてから、現状を説明することにした。
といっても言葉が通じない。
そこでコンピューター画面やホワイトボードを使って、伝えることになる。
彼らの輸送船が〈スータン〉への降下中にどうなったかを説明。
そこからカプセルふたつが離れ、一方はここに、もう一方は別のところに着陸した。
もう一方のカプセルに耳をつけて、内部の音をチェックしたが、ずっと無音の状態だ、と伝える。
彼らの触手が、力なく垂れ下がった。
仲間の死を知って、気落ちしたのだ、とわかる。
それは演技だった。
彼らにはすでに、オレの念で、そうしたことを教えてあるのだから。
彼らとのコミュニケーションを何時間も続けた。
そのあいだに、おたがいの情報を蓄積していく。
空が暗くなってきたところで、会見を終えることにした。
彼らはカプセルに戻り、念のためにハッチを閉じた。
こちらはこちらで、城への報告を行なってから、夕食にした。
「ビーコンを出している、と言ってましたが」と指揮官。「そんな電波は観測されていませんでした」
「我々が知っている通信方法とは、違うんだろう」
「つまり、電波ではない?」
「うん。そう考えれば、宇宙船との連絡も取れないのも合点がいく」
「まぁ、そうですが。そうなると彼らはどうやって宇宙船と?」
「少なくても何かしらの手を打ってくるはずだ」
「それはつまり、通信手段を用意してくれるとか?」
「かもしれないな。食料かもしれない。少なくてもカプセルの位置はわかっているんだ。軌道上からカプセルのようすもわかる。今日の会見も見ているなら、彼らが生存していることもわかったはずだ。となれば、次の手を打ってくる」
「なるほど」
「どんな手が打たれるのか、わからんがね」
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