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落とされ人  作者: カーブミラー


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235/254

【235.会見】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 とにかくカプセル前にテントを張った。

 それと同時に、城への連絡も行なわれた。

 こちらの判断に任せる、という答えが返ってきた。

 できれば城に招待したい、という陛下の御言葉と一緒に。

 テントには、会議用のテーブルとイスが並べられた。

 テーブルを囲むようにして、座る。

 彼らは、ヘルメットを脱いで、別に用意したテーブルに置いた。

 そのツノは、確かに個性があった。

 長さもそうだが、枝分かれの仕方も、違う。

 基本的に外側には枝分かれがない。

 内側だけだ。

 まぁ、外側にあったら、邪魔にしかならないだろう。

 テーブルに透明な水差しが置かれた。

 その水差しには、透明な液体が入っている。

 水だろう、と誰でも思うはずだが、それをどう説明するかが、問題だ。

 テーブルの上に置かれたホワイトボードに、川の流れを描き、その川からコップで水を汲み、濾過器を通し、炎のついたコンロの鍋へと矢印で示す。

 これは、“川の水を濾過したうえで煮沸消毒した”ということを示している。

 兵士のひとりが持ってきた一枚の紙を受け取り、それをもとにホワイトボードに新たな絵を描く。

 水の入ったコップ。

 その下の方に、線を書き入れ、そこから矢印を描き、その先に円グラフを描く。

 円グラフの内容を簡単な絵で示した。

 コップの水にも。

「本当に伝わるんですか?」と心配そうな指揮官。

「これは、たいていの科学者なら、特に化学者ならすぐにわかるものなんだ」

 彼らを見る。

 彼らは、オレが描いた絵を見て、納得したようすだ。

 兵士に指示して、水差しからコップに水を注ぎ入れさせ、テーブルに着いた全員の前に置かせた。

 まずは、オレが飲んでみせた。

 安全を伝えるために。

 それを見てから、シェロアがグラスを持ち上げ、口元に持っていった。

 触手がグラスに触れ、グラスの上をヒラヒラと漂う。

 指揮官が耳元でささやいた。

「何をしているんでしょうか?」

「ああしたヒゲのある魚がいたな。そのヒゲには、神経が集まっていて、ニオイや味がわかるんだとか。もしかしたら同じ機能があるのかもしれない」

「なるほど」

 触手が、水に触れた。

 充分な時間をかける。

 ほかの宇宙人が、シェロアのようすを窺っている。

 シェロアは、触手をグラスから出して、口を開け、グラスの中身をゆっくりと流し入れた。

 ゴクリとノドが鳴った。

 グラスがテーブルに置かれ、鼻息が漏れた。

 シェロアは、ほかの面々に顔を向け、ひとうまいと呟いた。

 それを受けて、いっせいに水を飲む宇宙人たち。

 オレが描いたのは、コップの中の水に含まれる成分を、分子の絵で表現したものだ。

 水分子は、水素と酸素の結合を記す。

 結合の角度も水を示している。

 104・5度

 文字はわからなくても、その構造ならわかる。

 宇宙文明共通の知識なのだから。

 この会見では、テレパシーを使わない。

 そのことに関しては、すでにシェロアとも話し合っていた。

 テレパシーを使えば、おたがいの理解も早い。

 だが、オレの能力は秘密なのだから、使うわけにはいかない。

 それにシェロアたちが今後、別の異星種族と出会う可能性もある。

 そうしたら今回の会見のやり方が役に立つ、そう言って、シェロアを納得させた。

 おたがいに水を飲んで、気分を落ち着かせてから、現状を説明することにした。

 といっても言葉が通じない。

 そこでコンピューター画面やホワイトボードを使って、伝えることになる。

 彼らの輸送船が〈スータン〉への降下中にどうなったかを説明。

 そこからカプセルふたつが離れ、一方はここに、もう一方は別のところに着陸した。

 もう一方のカプセルに耳をつけて、内部の音をチェックしたが、ずっと無音の状態だ、と伝える。

 彼らの触手が、力なく垂れ下がった。

 仲間の死を知って、気落ちしたのだ、とわかる。

 それは演技だった。

 彼らにはすでに、オレの念で、そうしたことを教えてあるのだから。


 彼らとのコミュニケーションを何時間も続けた。

 そのあいだに、おたがいの情報を蓄積していく。

 空が暗くなってきたところで、会見を終えることにした。

 彼らはカプセルに戻り、念のためにハッチを閉じた。

 こちらはこちらで、城への報告を行なってから、夕食にした。

「ビーコンを出している、と言ってましたが」と指揮官。「そんな電波は観測されていませんでした」

「我々が知っている通信方法とは、違うんだろう」

「つまり、電波ではない?」

「うん。そう考えれば、宇宙船との連絡も取れないのも合点がいく」

「まぁ、そうですが。そうなると彼らはどうやって宇宙船と?」

「少なくても何かしらの手を打ってくるはずだ」

「それはつまり、通信手段を用意してくれるとか?」

「かもしれないな。食料かもしれない。少なくてもカプセルの位置はわかっているんだ。軌道上からカプセルのようすもわかる。今日の会見も見ているなら、彼らが生存していることもわかったはずだ。となれば、次の手を打ってくる」

「なるほど」

「どんな手が打たれるのか、わからんがね」


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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