【233.孤独】
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(パオロ)
それは、司令官の念だった。
(はい、司令官)
(また、頼みたいことがある)
(なんでしょう?)
(そちらのみなを、こちらに送ってはもらえまいか)
(その件については、こちらも考えてみました)
(それで?)
(送り返すことは簡単にできます。ですが、カプセルがカラのままでは、迎撃された際に全員が死亡した、ということになり、今後の使節団との話し合いに支障が出るかもしれません)
(ふむ。それはそれで困るな。言葉が通じないだけでも困るのに)
(はい。もちろん、使節団とは接触せずにいるのであれば、すぐにでもお帰しいたしますが)
(わかった。こちらとしては、平和的接触を望んでいる。こうして宇宙に出たのは、我々が宇宙で孤独なのではないか、という疑問を払拭したいがためなのだ)
(ソラ人も連合を組む以前は、そういう疑問を持っていました)
(連合?)
(はい。ほかの4種族と連合を組んでおります。ペダフ人、アツナ人、エカス人、ウォルド人と)
(そんなに?)
(はい。エカス人は、たったひとりだけですが)
(たったひとり?)
(戦争がもとで、ひとり取り残されてしまったとか)
(可哀想に)
(ええ)
(訊き忘れていたが、君たちがソラ人であるならば、ここはソラ星なのか?)
(いいえ。最初の念でお伝えしたとおり、ここはソラ人の犯罪者の中で、終身刑を言い渡された者が送り込まれる監獄惑星です)
(ということは、ソラ星はこの星系のどこに――)
(いいえ。ソラ星という惑星はありません。ソラ人はあちこちに入植しているのです)
(あちこち? そんなにいくつも?)
(はい)
(つまり、総人口もそれだけいると)
(はい)
司令官の驚きと笑いの念が響く。
(ほかの種族は?)
(入植した星ですか? ソラ人ほどではありません。それでもおたがいの星への渡航も行なわれていますので、交流は盛んです)
(素晴らしい!)と心の中からの喜び。
交流の模様を思い描いている、そのイメージが見える。
司令官のその空想を壊したくなくて、オレはしばらく黙っていた。
ややあって、司令官がこちらに念を向けた。
(失礼した)
(いえ。それで地上のみなさんをどうすべきか、何かお考えはありますか?)
考え込む司令官。
だが、これといって、浮かばないようだった。
(では)とオレが提案をした。(彼らを使節団としては?)
(使節団?)
(はい。少なくてもあなたがたは、平和目的で降りてこられた。そう解釈していますが)
(そのとおりだ。この星系に入ったときに、人工物をこの惑星に発見した)
(ステーションですね)とイメージを送る。
(そう、これだ。これを見て、我々は、この惑星に高度な文明があると考えた。そこで通信を試みた。だが、なんの反応もなかったのだ。それで惑星軌道まで近づき、惑星全体を観察した。軌道上には、さっきのステーションもあれば、人工衛星もあった)
人工衛星……封鎖ブイのことか。
司令官は続けた。
(地上にも都市が見受けられた。その都市に向けても通信を試みた。だが――)
(反応はなかった)
(うむ。そこで地上のようすを確認するために彼らを派遣したのだ。君たちとの接触を含めてな)
(ならば、使節団と考えてもよろしいでしょう)
(確かに。だとしたらどうなるね?)
(彼らが落ちた場所は、〈スベルト王国〉という国です。カプセルを取り囲んでいる軍隊は、その〈スベルト王国〉なのですが)
(軍らしいというのは、ここからでもわかった)
(〈スベルト〉軍は、ステーションからの要請でカプセルを包囲しているのです。本当は、カプセルを回収するように、と要請を受けたのですが、カプセルは大きく、とても運べません。そこでカプセルを包囲して、ほかの住民が手を出せないようにしているのです)
(なるほど。それで?)
(現在は、包囲命令以外には出ていませんので、内部のようすを見るほかは、手出しすることはありません。こちらもどう対処していいか考えあぐねている、というところですね)
(ひとつ質問してもいいかね?)
(なんでしょう?)
(君の言い方だと、君は関係者のひとり、そう考えられるのだが)
(はい。包囲網の一方に、つまりシェロアたちのカプセルの方に駐留しています。ちなみに私は軍人ではなく、〈スベルト王国〉の王室で働く者でして、知恵者として参加しています。それからこうした念話や物送りの能力は秘密にしていますし、ネネカを治療している施設も秘密にしています)
(誰にも? なぜ?)
(〈スベルト王国〉を統べる女王陛下には、打ち明けています。ですが、ほかの者たちには、秘密にしています。これは、こうした能力が昔から眉唾物と思われてきているからです)
(眉唾物? 信じられていない、と?)
(はい。科学的に証明できていないのです。この能力が知られれば、おもしろがられ、やがては迫害を受ける結果になります。ですから秘密にしているのです)
(なるほど)
(それから施設についてですが、惑星外部の者たちがこの惑星の状況を知りたいがために建設しました。何せ、この惑星は封鎖されていて、入ることはできても、出ることはできませんから。どうしても情報が出てこないのです)
(その外部の者たちとは?)
(我々ソラ人をサポートしてくれる存在、と言っておきましょう。彼らなくして、ソラ人はここまでの発展はできなかったはずです)
そう、SXEのロボットは、我々ソラ人をさまざまな形でサポートしてきた。
彼らのおかげで、我々ソラ人は重労働から解放されたに違いない。
いったい、いつの時代から彼らは存在するのか、それすらもわからないが。
(その存在は)と司令官。(表には出てこないのか?)
(ここでは。ほかの世界では、ソラ人とともに共存しています)
(なぜ、ここでは――)そこまで言って、司令官は思い当たった。(監獄だから、か)
(そうです。ここに落とされるのは、終身刑を受けたソラ人の罪人だけ。落とす以上のことを監視者はしてくれません。ここで文明が栄えているのは、ひとえにここの人々の賜物なのです。自分たちの力で生きていかねばならないのです)
(なんと過酷な)
(ええ。当初は、まさしく、自然の弱肉強食の世界でした。それがここまでになったのです)
司令官は、そのようすを想像して、何も言えなくなった。
何を言っていいのか、わからないようすだ。
そこでオレは司令官の意識を別の方向へと向けることにした。
(司令官、話を戻しますが)
(ん?)と司令官が夢想から抜け出た。
(使節団のことです。ネネカたちが入っていたカプセルは物音がしないため、空っぽの状態だと思われています。シェロアたちのカプセルからはそれなりの音が出ているので、人がいることがわかっています。そこでシェロアたちを使節団として、〈スベルト〉と接触させてはいかがでしょう? 連合からの使節団が到着するまでには、おたがいのことも理解できるでしょうし、必要な情報も得られるでしょう)
(そうだな)
(問題は)
(問題は?)
(最初の接触をどうすべきか、ですね)
(うむ。どちらも人型の生物である、という点だけで、文化も科学も違うのだから、そこに壁があるのは否めないな)
(はい。あなたたちはどうかはわかりませんが……)
(ん?)
(失礼なことを言って申し訳ないのですが)
(言ってみてくれ)
(あなたがたの容姿は、その……特に頭部は……我々の空想上の生物によく似ておりまして)
(ほぉ)と関心を示す司令官。(どんな生物だね?)
(こちらです)とイメージを送った。
(おお)と驚く司令官。それから笑いの念。(これはこれは。我々の先祖となった動物の姿によく似ている)
送ったイメージは、龍の絵だった。
蛇のような身体に、4本の脚。
その頭部には、ツノが2本生えている。
ギョロッとした目が、人間的だ。
背景は、黒い雲。
稲妻も走っている。
その中を、龍は立つような姿で、描かれていた。
(この動物は、天変地異を起こすとされて、人々に恐れられてきました)
(天変地異を? どうやって?)
(さぁ。何しろ、空想上の動物ですから)
(ああ、そうだった)
(とするならば、ソラ人の一部は、あなたがたの容姿を見て、恐れを抱くかもしれません)
(なるほど。恐怖したソラ人は、彼らを襲うだろうか?)
(携帯型の兵器を向けるかもしれませんね。ですが、それを撃つことはしないでしょう。それにこちらの指揮官が兵士をいさめるはずです。少なくても私がそうさせます)
(わかった。最初の出会いは、どちらも戦々恐々としたものになりそうだ)
(はい。次にどうやって意思疎通を行なうかです)
(君が――)と言いかけ、すぐに改めた。(そうだった、君の能力は秘密なんだったな)
(はい。ですからまわりの者たちに知られないよう、能力は使わずに意思疎通を図ります)
(うむ。で、どうやって?)
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