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落とされ人  作者: カーブミラー


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229/249

【229.コイン】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 オレとアルが、思念波通信装置を持って、第一の現場のテントにテレポートで戻る。

 そこからカプセルに向けて、思念波を発信した。

(シェロア?)

(はい、パオロ)

(もうひとつのカプセルから3人を出しました。3人とも気絶しているようです。ひとりは、頭にケガを負っています。止血はしましたが、我々ではどうすべきかわかりません。指示をお願いしたいのですが)

(ここに医師がいます。代わりますね)

(医師のスベトと申します)という念からは、齢を重ねた知識人の印象を受ける。

(パオロです。患者の頭部のイメージをお見せします)

 止血前の状態を送った。

(なんと!)とスベトは驚き(お可哀想に)と抑えた念を送ってきた。

 “お可哀想に”というのが、どういう意味なのかはわからなかった。

 だが、治療の指示を受けたくて、念を送った。

(すでに止血してあります。指示をお願いします)

 ハッとした医師は、それらしい態度に戻り、(呼吸は安定していますか?)

(安定しています)

(透視できますか?)

(送ります)

 すでに透視画像を見ていたので、それを送る。

(ふむ……ツノの根元の頭蓋にヒビが入っていますね。どうやらどこかに大きくぶつけ、ツノが折れ、ヒビが入ったのでしょう。脳震盪で気絶しているだけかもしれません。寝かせて、安静にしてください。目覚めたら、動かないように、と)

(わかりました。ところで、どう寝かせれば? ツノが邪魔になる気がしますが)

(ただ横に――)そこまで言って、スベトは種族の違いに思い当たり、(あなたがたはどのように寝ているのですか?)

(背中を下にした状態ですが)

(なるほど。質問の意味がわかりました。我々は、背中を上にして眠ります)

 そのイメージが送られてきた。

 腹這いだった。

(ああ、なるほど。わかりました。そのようにいたしましょう)

(本当は、直接、診察したいのだが)

(こちらもお願いしたいところです。ですが、少しお時間をください)

(わかりました。シェロアに代わりますか?)

(いいえ。またあとで連絡いたします)

(では)

 念話を切り、ゾフィーに向けて、対処方法の念を送る。


 テントを出て、指揮官に近づいた。

「ようすは?」

「変わりありません。カプセルの表面温度は、だいぶ下がったようですが」

「我々の目的は、回収だが、あれを運べそうかね?」

 彼は首を振った。

「難しいでしょう。決して小さくはありませんから」

「そうだね。では、城にその旨を報告してくれ。我々は包囲したまま、ようすを見る、とも」

「わかりました」

 ふたたび、テントに入る。

 声を出さずに、アルに念を送る。

 提案をするために。

(アル、医師だけでも調査船に送ってもかまわんかね?)

 シェロアからの視野から、カプセル内のようすは見えていた。

 これなら特定の人物を送るのは、装置を介さずともできる。

(なるほど)賛成の念とともに若干の間。それから(ゾフィーに伝えました)

(では、装置を)

(はい)

 装置が通話状態になったのを感じた。

(シェロア)

(はい、パオロ)

(スベトを患者のもとに送ろうと思います)

(それはここから出て――)

 その念を制して、こちらの念を送る。

(いいえ。そこから患者のもとに直接送り込みます)

 意味がわからない、という思いが伝わってくる。

(スベトを見てもらえますか?)

 シェロアがわからないながらも、スベトを見た。

 スベトは、乾いた砂の色をしていた。

 ツノは、それほど大きくはないが、枝分かれがいくつもあり、立派だ。

(スベト、あなたを患者のもとへ送ります。準備をしてください)

 いそいそと自分のバッグを持つスベト。

(いいぞ)

(驚かぬように)

(驚く?)

 有無を言わせずに、オレは、スベトを調査船に送った。

 目の前からスベトが消えたので、そのまわりで複数の驚きの念が発せられる。

 シェロアもマブタをパチクリさせている。

 そこへゾフィーの念が届いた。

(医師が到着したわ。でも気が動転してるわね)

(患者を見せてやるといい。医師ならそれだけで落ち着くはずだ)

(わかったわ)

 ふたたび、シェロアに念を向ける。

(無事にスベトを患者のもとへ送りました)シェロアはいまだに動揺している。(シェロア?)

(えっ? ああ、はい)

(母船に報告しようと思います。そちらの現状を教えてもらえますか?)

(はい)

 シェロアの話では、そこにはシェロアを含めて、5名がおり、全員がケガを負ってはいるが、すでに手当てを受け、命に別状はない、とのこと。

 全員の名前が伝えられた。

(パイロットたちは3人でしたね)とシェロア。(それぞれの姿を見せてもらえますか?)

 それに応えて、3人の姿のイメージを送る。

 3人の名前も教えてくれた。

(ほかは、輸送船とともに?)と残念そうな念を送るシェロア。

(3人はこちらで回収できましたが)

(3人? 生きて――)

(いいえ。3人とも回収したときには、すでに……)

(その3人の姿を)

 イメージを送った。

(ああ、その3人)とシェロアはそっけない。気にしなくてもいい、という態度だ。(なら残りは3人ですね)

 その3人の名前も教えてくれた。

(回収した3人はいいのですか?)

(あれは、労働者です)

(労働者?)

(そのために造られた存在です)

(造られた? 人為的に操作して?)

(女王が産み出した者たちです。あなたがたにそうした存在はいないのですか?)

 その念には、そんなことは信じられない、という思いが含まれていた。

 まぁ、ロボットはいるが。

(それなりの存在はいますが)

 シェロアはそれを聞いて、安心したようだ。

 それから気を引き締めた。

(今後、我々はどうなりますか?)

(上次第、といったところでしょうか。今はまだ、様子見の段階です)

(そうですか)

(報告についてですが)

(はい)

(報告すべき特定の人物はいますか?)

(司令官がいいでしょう)

(では、司令官の顔を思い浮かべてください。そうすれば、直接報告できます)

 シェロアからイメージを受け取った。

 金色の肌と複雑に枝分かれしたツノを持っている。

(ホウウェイという者です)

(わかりました)


 さっそく、ホウウェイ司令官に念を送った。

(ホウウェイ司令官)

 司令官が声を上げる。

 その声は低く響く。

「***********」(誰だ? いや、パオロだな)

(はい。言葉に出される必要はありません。この念はあなただけに送っています)

(ふむ。それで?)

 ふたつのカプセルの状況を報告した。

(なるほど。3名の死は残念だが、それだけですんでよかった、とも言えるな)

 ホウウェイ司令官も最初の3体については、気にしていない。

 いったいどういうことなのだろうか?

 3体がロボットのような存在だとしても、もう少し気持ちを寄せてもいいだろうに。

(そちらの船が)と司令官。(こちらに向かっているのを知っているな)

(はい。まだ正式には知らせをもらってはいませんが。使節団と思われます)

(うむ。こちらとしては、争うつもりはない。だが、完全には安心もできない)

(わかります)

(だが、通信手段が違うとなれば、どうすれば、意思疎通を図れる? そちらのみながパオロのように話しかけてくるわけでもあるまい)

(はい。同じ通信手段があったとしても、おたがいの基盤が違うので、簡単ではないとも思われます。ですが、少なくとも私のような者がおります。それを手始めにすれば、よろしいかと)

(つまり、君が通訳してくれる、というわけだな)

(はい。あるいは、同じ力を持った者が)

(ほかにもいるのか)

(それなりに。今後、どうしていくべきかをこちらでも考えてみます)

(頼む。こちらから連絡したい場合は、どうすればいい?)

(少々、お待ちを)

 アルに念を向ける。

(アル、向こうから連絡したいときにはどうしたらいいだろうか?)

(母船が、見える範囲にいて、時間帯が夜であれば、光の合図で可能ですが)

(時間が限定されてしまうな)

(ええ)

(思念波送受信機の設計を送って……ダメか)

(ええ。例の水晶がないと)

 考えた。

 水晶があっても設計図から装置を作り出すのは、難しいだろう。

 部品自体がないのだ。

 それらを作り上げるための知識が必要になる。

 ふと、思いついた。

(なんだ、簡単にすむじゃないか。装置を送り込めばいいんだ)

(なるほど。そうなると今の装置では、不都合がありますね)

(不都合?)

(だって、向けた先の不特定多数の人間に聞こえるわけですから)

(ああ、そうか)

(ですが、パオロだけに聞こえればいいわけでしょ?)

(ああ)

(ならば、指向性の小さな装置で事足ります。陛下に御渡しした装置ですから)

(ん?)すぐに思い浮かばなかった。

(ペンダントですよ)

(ああ、あれか。すぐに用意できるかね?)

(すでにゾフィーが製造にかかっています)

(OK。そう伝えよう)


 小型の装置は、ポケットに忍ばせることができるコイン型にした。

 直径2cm大だ。

 それを司令官に送った。

 司令官が持ち上げた右の手のひらに送ったのだが、司令官の視界に見えたそれは、とても小さすぎる代物だった。

 そこで初めて、司令官がどれほど巨大な身体をしているのかを思い知った。

「指の幅分しかない」

「装置が、ですか?」

「そうだ」

「大きな身体ですね。個体によって、かなり差があるのかも」

「そうだね。とにかくこれで私を呼び出せる」

(パオロ)と司令官の念。テストのつもりだろう。

(はい、司令官)

(うむ、つながったな。君は、物を移動させることができる。そうだな?)

(はい)

(頼みがある。死んだ3人の小動物を送ってもらいたい)

(ああ、バッグに入っている小動物のことですか)

 そのバッグのイメージを送る。

(そう、それだ)

(わかりました。すぐに送りましょう)

 三つのバッグをすぐさま送った。


 ゾフィーによって、患者たちの透視が行なわれたが、その結果、“労働者”と呼ばれる個体と彼らは外見は似ているが、まったく別の生物であることがわかった。

 パイロットたちは、口が大きく開き、またそのアゴには恐ろしいほどの牙と尖った細かい歯の列がある。

 また、“労働者”には、指先にツメもなかったが、パイロットたちには先端が尖ったツメがある。

 その先端を1cmほどの大きさの真珠色したボールが覆っていた。

 自分自身を傷つけないための工夫だろうか?

 脳も明らかに大きい。

 鼻孔には声帯膜らしきものがある。

 それで声を出すのだろう。

 消化器官もそれなりに複雑だった。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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