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オレとアルが、思念波通信装置を持って、第一の現場のテントにテレポートで戻る。
そこからカプセルに向けて、思念波を発信した。
(シェロア?)
(はい、パオロ)
(もうひとつのカプセルから3人を出しました。3人とも気絶しているようです。ひとりは、頭にケガを負っています。止血はしましたが、我々ではどうすべきかわかりません。指示をお願いしたいのですが)
(ここに医師がいます。代わりますね)
(医師のスベトと申します)という念からは、齢を重ねた知識人の印象を受ける。
(パオロです。患者の頭部のイメージをお見せします)
止血前の状態を送った。
(なんと!)とスベトは驚き(お可哀想に)と抑えた念を送ってきた。
“お可哀想に”というのが、どういう意味なのかはわからなかった。
だが、治療の指示を受けたくて、念を送った。
(すでに止血してあります。指示をお願いします)
ハッとした医師は、それらしい態度に戻り、(呼吸は安定していますか?)
(安定しています)
(透視できますか?)
(送ります)
すでに透視画像を見ていたので、それを送る。
(ふむ……ツノの根元の頭蓋にヒビが入っていますね。どうやらどこかに大きくぶつけ、ツノが折れ、ヒビが入ったのでしょう。脳震盪で気絶しているだけかもしれません。寝かせて、安静にしてください。目覚めたら、動かないように、と)
(わかりました。ところで、どう寝かせれば? ツノが邪魔になる気がしますが)
(ただ横に――)そこまで言って、スベトは種族の違いに思い当たり、(あなたがたはどのように寝ているのですか?)
(背中を下にした状態ですが)
(なるほど。質問の意味がわかりました。我々は、背中を上にして眠ります)
そのイメージが送られてきた。
腹這いだった。
(ああ、なるほど。わかりました。そのようにいたしましょう)
(本当は、直接、診察したいのだが)
(こちらもお願いしたいところです。ですが、少しお時間をください)
(わかりました。シェロアに代わりますか?)
(いいえ。またあとで連絡いたします)
(では)
念話を切り、ゾフィーに向けて、対処方法の念を送る。
テントを出て、指揮官に近づいた。
「ようすは?」
「変わりありません。カプセルの表面温度は、だいぶ下がったようですが」
「我々の目的は、回収だが、あれを運べそうかね?」
彼は首を振った。
「難しいでしょう。決して小さくはありませんから」
「そうだね。では、城にその旨を報告してくれ。我々は包囲したまま、ようすを見る、とも」
「わかりました」
ふたたび、テントに入る。
声を出さずに、アルに念を送る。
提案をするために。
(アル、医師だけでも調査船に送ってもかまわんかね?)
シェロアからの視野から、カプセル内のようすは見えていた。
これなら特定の人物を送るのは、装置を介さずともできる。
(なるほど)賛成の念とともに若干の間。それから(ゾフィーに伝えました)
(では、装置を)
(はい)
装置が通話状態になったのを感じた。
(シェロア)
(はい、パオロ)
(スベトを患者のもとに送ろうと思います)
(それはここから出て――)
その念を制して、こちらの念を送る。
(いいえ。そこから患者のもとに直接送り込みます)
意味がわからない、という思いが伝わってくる。
(スベトを見てもらえますか?)
シェロアがわからないながらも、スベトを見た。
スベトは、乾いた砂の色をしていた。
ツノは、それほど大きくはないが、枝分かれがいくつもあり、立派だ。
(スベト、あなたを患者のもとへ送ります。準備をしてください)
いそいそと自分のバッグを持つスベト。
(いいぞ)
(驚かぬように)
(驚く?)
有無を言わせずに、オレは、スベトを調査船に送った。
目の前からスベトが消えたので、そのまわりで複数の驚きの念が発せられる。
シェロアもマブタをパチクリさせている。
そこへゾフィーの念が届いた。
(医師が到着したわ。でも気が動転してるわね)
(患者を見せてやるといい。医師ならそれだけで落ち着くはずだ)
(わかったわ)
ふたたび、シェロアに念を向ける。
(無事にスベトを患者のもとへ送りました)シェロアはいまだに動揺している。(シェロア?)
(えっ? ああ、はい)
(母船に報告しようと思います。そちらの現状を教えてもらえますか?)
(はい)
シェロアの話では、そこにはシェロアを含めて、5名がおり、全員がケガを負ってはいるが、すでに手当てを受け、命に別状はない、とのこと。
全員の名前が伝えられた。
(パイロットたちは3人でしたね)とシェロア。(それぞれの姿を見せてもらえますか?)
それに応えて、3人の姿のイメージを送る。
3人の名前も教えてくれた。
(ほかは、輸送船とともに?)と残念そうな念を送るシェロア。
(3人はこちらで回収できましたが)
(3人? 生きて――)
(いいえ。3人とも回収したときには、すでに……)
(その3人の姿を)
イメージを送った。
(ああ、その3人)とシェロアはそっけない。気にしなくてもいい、という態度だ。(なら残りは3人ですね)
その3人の名前も教えてくれた。
(回収した3人はいいのですか?)
(あれは、労働者です)
(労働者?)
(そのために造られた存在です)
(造られた? 人為的に操作して?)
(女王が産み出した者たちです。あなたがたにそうした存在はいないのですか?)
その念には、そんなことは信じられない、という思いが含まれていた。
まぁ、ロボットはいるが。
(それなりの存在はいますが)
シェロアはそれを聞いて、安心したようだ。
それから気を引き締めた。
(今後、我々はどうなりますか?)
(上次第、といったところでしょうか。今はまだ、様子見の段階です)
(そうですか)
(報告についてですが)
(はい)
(報告すべき特定の人物はいますか?)
(司令官がいいでしょう)
(では、司令官の顔を思い浮かべてください。そうすれば、直接報告できます)
シェロアからイメージを受け取った。
金色の肌と複雑に枝分かれしたツノを持っている。
(ホウウェイという者です)
(わかりました)
さっそく、ホウウェイ司令官に念を送った。
(ホウウェイ司令官)
司令官が声を上げる。
その声は低く響く。
「***********」(誰だ? いや、パオロだな)
(はい。言葉に出される必要はありません。この念はあなただけに送っています)
(ふむ。それで?)
ふたつのカプセルの状況を報告した。
(なるほど。3名の死は残念だが、それだけですんでよかった、とも言えるな)
ホウウェイ司令官も最初の3体については、気にしていない。
いったいどういうことなのだろうか?
3体がロボットのような存在だとしても、もう少し気持ちを寄せてもいいだろうに。
(そちらの船が)と司令官。(こちらに向かっているのを知っているな)
(はい。まだ正式には知らせをもらってはいませんが。使節団と思われます)
(うむ。こちらとしては、争うつもりはない。だが、完全には安心もできない)
(わかります)
(だが、通信手段が違うとなれば、どうすれば、意思疎通を図れる? そちらのみながパオロのように話しかけてくるわけでもあるまい)
(はい。同じ通信手段があったとしても、おたがいの基盤が違うので、簡単ではないとも思われます。ですが、少なくとも私のような者がおります。それを手始めにすれば、よろしいかと)
(つまり、君が通訳してくれる、というわけだな)
(はい。あるいは、同じ力を持った者が)
(ほかにもいるのか)
(それなりに。今後、どうしていくべきかをこちらでも考えてみます)
(頼む。こちらから連絡したい場合は、どうすればいい?)
(少々、お待ちを)
アルに念を向ける。
(アル、向こうから連絡したいときにはどうしたらいいだろうか?)
(母船が、見える範囲にいて、時間帯が夜であれば、光の合図で可能ですが)
(時間が限定されてしまうな)
(ええ)
(思念波送受信機の設計を送って……ダメか)
(ええ。例の水晶がないと)
考えた。
水晶があっても設計図から装置を作り出すのは、難しいだろう。
部品自体がないのだ。
それらを作り上げるための知識が必要になる。
ふと、思いついた。
(なんだ、簡単にすむじゃないか。装置を送り込めばいいんだ)
(なるほど。そうなると今の装置では、不都合がありますね)
(不都合?)
(だって、向けた先の不特定多数の人間に聞こえるわけですから)
(ああ、そうか)
(ですが、パオロだけに聞こえればいいわけでしょ?)
(ああ)
(ならば、指向性の小さな装置で事足ります。陛下に御渡しした装置ですから)
(ん?)すぐに思い浮かばなかった。
(ペンダントですよ)
(ああ、あれか。すぐに用意できるかね?)
(すでにゾフィーが製造にかかっています)
(OK。そう伝えよう)
小型の装置は、ポケットに忍ばせることができるコイン型にした。
直径2cm大だ。
それを司令官に送った。
司令官が持ち上げた右の手のひらに送ったのだが、司令官の視界に見えたそれは、とても小さすぎる代物だった。
そこで初めて、司令官がどれほど巨大な身体をしているのかを思い知った。
「指の幅分しかない」
「装置が、ですか?」
「そうだ」
「大きな身体ですね。個体によって、かなり差があるのかも」
「そうだね。とにかくこれで私を呼び出せる」
(パオロ)と司令官の念。テストのつもりだろう。
(はい、司令官)
(うむ、つながったな。君は、物を移動させることができる。そうだな?)
(はい)
(頼みがある。死んだ3人の小動物を送ってもらいたい)
(ああ、バッグに入っている小動物のことですか)
そのバッグのイメージを送る。
(そう、それだ)
(わかりました。すぐに送りましょう)
三つのバッグをすぐさま送った。
ゾフィーによって、患者たちの透視が行なわれたが、その結果、“労働者”と呼ばれる個体と彼らは外見は似ているが、まったく別の生物であることがわかった。
パイロットたちは、口が大きく開き、またそのアゴには恐ろしいほどの牙と尖った細かい歯の列がある。
また、“労働者”には、指先にツメもなかったが、パイロットたちには先端が尖ったツメがある。
その先端を1cmほどの大きさの真珠色したボールが覆っていた。
自分自身を傷つけないための工夫だろうか?
脳も明らかに大きい。
鼻孔には声帯膜らしきものがある。
それで声を出すのだろう。
消化器官もそれなりに複雑だった。
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